LIVE REPORT
Zephyren presents A.V.E.S.T project vol.13
2019.03.02 @TSUTAYA O-EAST / TSUTAYA O-WEST / TSUTAYA O-nest / TSUTAYA O-Crest / duo MUSIC EXCHANGE / clubasia / VUENOS
Writer 林 なな
激ロックと馴染みが深く、数多くのミュージシャンやキッズが愛用しているストリート・ブランド、Zephyrenが主催するサーキット・イベント"A.V.E.S.T project vol.13"が、3月2日に開催された。昨年に引き続き、"vol.13"となる今回も渋谷円山町の中心地にあたるTSUTAYA O-EAST、TSUTAYA O-WEST、TSUTAYA O-nest、TSUTAYA O-Crest、duo MUSIC EXCHANGE、clubasia、VUENOSという計7会場を使って大々的に開催。ロックはもちろん、ヒップホップやアイドル、ヴィジュアル系まで、様々なジャンルのアーティスト総勢59組が一堂に会し、熱くカオスな空間を作り上げたイベントの模様を一部お届けする。
どの出演者よりも最初に音を鳴らしたのは、4人組ガールズ・ラウドロック・バンド Quince。細くて華奢な身体から放たれているとは思えないスクリームと重厚なバンド・サウンドを会場に叩きつけていく。オープニング・アクトとしてしっかりフロアを温めてくれた。
続いて登場したPassCodeは、「Tonight」で満員状態のTSUTAYA O-EASTのスタートを切る。大上陽奈子の伸びのいい歌声と今田夢菜が放つ力強いシャウトが交錯し、高嶋 楓はフレキシブルなダンスを繰り広げ、南 菜生は声を上げてフロアを煽りまくっていく。その4人の姿に漢らしさというか、逞しさというか――とにかく、ラウド・サウンドの上で歌って踊る彼女たちは、ただかわいいだけのアイドルではないのだ。攻撃性MAXのステージングで、集まったオーディエンスの心をがっちりと掴んでいく目の前の光景に、フロアの灼熱加減も相まって思わずガッツポーズをしそうになった。
TSUTAYA O-WESTでは、MAKE MY DAYが初っ端からやりたい放題にロックを轟かせていた。この"A.V.E.S.T"開催前日にリリースした「Searching For The Fate」を早速披露し、いっそう躍動しながら瑞々しい音を放っていく。最後にフロアへと降り立ったIsam(Vo)は"ここは俺らには小さすぎるんだよな"と言ってのけると、はにかみながら"来年また会おう"と続けたのであった。
続くAnother StoryではTSUTAYA O-WESTに入場規制がかかり、1階フロアだけでなく、2階席にまで人がパンパンに押し寄せていた。ライヴがスタートするなり、大きく響くオーディエンスのクラップとシンガロング。"自分たちのライヴは自分で作れ"と常に示し、音を奏でる彼らだからこそ、のっけから強烈な空気が完成するのだ。ライヴ終盤に1階に降りてみると、まるで亜熱帯かのような熱気に満ちていた。
昨年TSUTAYA O-Crestのトリを務めた夕闇に誘いし漆黒の天使達は、今年はTSUTAYA O-WESTに登場。"バンド名を変えたい"と嘆く歌を歌ったかと思えば、次に演奏したのは猫に感謝を伝えまくる曲。しかも、そのどれもが重厚でゴリゴリのサウンドなのだから、彼らを初めて観た人は驚いたことだろう。コミック系ラウド・バンドの本気をこれでもかと魅せつけたステージングだった。
TSUTAYA O-nestではAiliph Doepaが、リハーサルの時点ですでに入場規制寸前の状態に仕上げていた。赤いランドセルを背負ったPaprika Papriko(Gt)が現れたかと思えば、ピエロのような化粧をしたRedZibra(Ba)も現れ、最後にはめちゃくちゃ派手なセットアップを着たヴォーカル、Eyegargoyleが出てくる。比較的普通のヴィジュアルでオンステージするメンバーはドラムのDonaldy Ketchupのみ。この時点でどえらいバンドであるのはわかると思うが、何よりすごいのは常に想定外のサウンドが急展開していくところ。ゴリッゴリのサウンドの上に絶妙なリリックが乗っかるギャップに、オーディエンスは爆笑必至。底なしの自由を手にしたまま突っ切っていく彼らに送られるのは、拍手喝采であった。
群馬の最強ローカル・バンド、G-FREAK FACTORYがTSUTAYA O-EASTの舞台に立った。怒濤の勢いで曲を畳み掛けた前半に対し、後半はかなり丁寧に音と言葉を伝えようとしていたように思う。ステージの端から端まで歩き、そして時折フロアにも降りて、隅々まで言葉を届ける茂木洋晃(Vo)。オーディエンスは茂木から目を離さず、ジッと言葉を聴く。徐々に大きくなっていく互いへの信頼のもとに生まれたシンガロングと、最後に歌われた"いつもここにいるから ライヴハウスに帰ってこいよ"という呼び掛け。確実に、バンドとオーディエンスの理想的な共鳴を示していた。
イベントも後半に差し掛かった17時40分。TSUTAYA O-EASTでlynch.が「GALLOWS」でステージの口火を切ると、女子は頭を振り回し、男子はリフトやクラウドサーフをしまくる、まさにカオスな世界が広がっていた。しかも、葉月(Vo)が"みんな暴れるのが得意なんでしょ?"なんて煽るものだから、オーディエンスだって覚悟を決めてさらに激しく頭を振り、飛びまくるのだ。その光景を見たメンバーはさらに昂り、気迫に満ちた音を鳴らして応える。混沌とした状況下でジャンルの壁を破って圧巻の盛り上がりを投下していったlynch.は、やはり無敵だった。
その後登場したSurvive Said The Prophetは、のっけから爆裂サウンドを会場内に充満させていく。恐ろしい数のダイバーが押し寄せ、フロア前方では渋滞が起きるほど。緻密に構築されつくした音楽があるからこそ、オーディエンスはそこに身を任せていられるし、その様子を見てメンバーの想いがさらに膨れ上がる。会場のどこを見渡しても終始楽しそうな顔が溢れていて、Yosh(Vo)も思わずニカーッと笑みを見せていた。
一方、オメでたい頭でなによりはTSUTAYA O-WESTで"A.V.E.S.T"の初陣を飾った。"ウェルカム・フルーツを!"と言ってリハーサルで「さくらんぼ」を披露すると、この時点で早くもサークルが発生。本編に突入すると、赤飯(Vo)は"初「A.V.E.S.T」獲ったどー!"と満面の笑みを浮かべ、324(Gt)のサングラスには"あゔぇすと"の文字が浮かぶ。ついさっきまで5人それぞれが技巧を音で魅せつけていたはずが、「推しごとメモリアル」ではメンバー全員が演奏せずに踊りまくり、バンドのノリの良さを型破りな方法で表現していく。彼らは間違いなく、この空間にいた人全員を丸ごと"オメでたい世界"へと道連れにしてくれた。
昨年に引き続きTSUTAYA O-EASTのトリを務めたのは、MY FIRST STORY。暗闇の中、ステージを照らす幻想的な青い明りが赤に変わり、メンバーが姿を現す。「WINNER」で幕を開けると、すでにオーディエンスの興奮はスロットル全開。Hiro(Vo)が"本気の声聞かせてくれ!"と投げ掛ければ、オーディエンスは予想の100倍くらいどデカい声で応戦する。もちろん、ステージに立つ彼らが放つのも本気の音だ。Teru(Gt)、Nob(Ba)、Kid'z(Dr)の鍛錬された繊細なサウンド、そしてHiroの伸びやかな歌。そこには情熱があり、サウンドにも分厚さが生まれていく。初めて出演した2011年からずっとこの"A.V.E.S.T"を愛し、ステージに立ち続けてきた彼らだからこそ、全出演者たちの勢いを繋げ、思い切り爆発させることができるのだと思わされた。
この日出演したアーティストの将来は、アーティスト自身の手で磨くべきものなのかもしれない。でも、そこに誰かが手を貸して一緒に磨いてもいいのだと思う。その"誰か"と出会わせてくれるターミナルがこの"A.V.E.S.T"になったら――会場から渋谷駅へと向かう道で友達とともに大きな声で"楽しかった!"と話すライヴ・キッズを見て、そう思った。
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