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LIVE REPORT

Zephyren × SHIBUYA THE GAME presents In The Family vol.5

2018.07.21 @SHIBUYA THE GAME

Writer 林 なな

イベントのスタートを告げたのは、ゆっくりステージへと歩みを進め現れたGIVEN BY THE FLAMESだ。Willian(Vo)の"暴れる時間だ"という言葉が引き金となり、その瞬間にフロアの中心で激しいモッシュが繰り広げられる。念のため言っておくが、ライヴはまだ始まったばかりだ。なのに、そうは思えないほどの盛り上がりようである。「LAST ENEMY」、「RONOVE」とハードに攻め続けた前半。"誰かのためにじゃなくて、自分のために生きてください。自分が幸せになれば、周りも勝手に幸せになります"。不器用そうなもの言いで、Willianはそう語った。そして静かに"into the forest"の名を口にする。GIVEN BY THE FLAMESの曲は、ただ単に激しくて盛り上がれるだけではない。それはきっと理解ではなく、体感である。現場にしかないものだ。重くズッシリとした低音が耳をひと刺し。そして床が揺れる、揺れる。「Devil's Dozen」で締めくくり、誰もいなくなったステージを見て、とんでもない祝祭が始まったのだと悟った。
姿を見せるなり、"ステージ・ダイブしたい奴はどれだけいんだよ!"と発するt.e.p.p.e.i(Vo)、そして"Are you ready?"と問い掛けるMEG(Vo)。mildrageのライヴは、「SUNRISE」で幕を開けた。すでに、フロアにいるオーディエンスたちのエネルギーの密度は高い。ステージの上なんてはち切れる寸前にまで高まっているのは、彼らの額に光る汗を見れば一目瞭然だ。"俺たちは、あなたたちを何がなんでも笑顔にして帰る"とt.e.p.p.e.i。その言葉のあとに放たれた「Calling」の序盤で、Jun(Gt)のリフに乗せられたシャウトは、いつの間にか祈りのような、そんな類のものに聞こえてきた。そこに加わるのは、MEGに煽られて鳴るオーディエンスの歌。こんな光景を見て、笑顔にならないわけがないでしょう! そのまっすぐさと、引き出しの多さが彼らの真の力なのは、この日に立証済みだ。
3番手はMADALA。バンドの名が刻まれた幕を持って現れた男は、Gaku(Vo)である。アグレッシヴ且つ研ぎ澄まされた技巧を魅せつけたSHUN(Gt)のソロを終えると、Gakuはひと言言い放った。"渋谷をぶっ殺しにきたMADALAです、よろしく!"。自己紹介にしては乱暴に聞こえるが、この言葉は今日のライヴに対する決意そのものだ。そしてフロアへと降り立つと、その瞬間、ステージとフロアの境界が消え去った。「REPRESENT」で、Ryo(Ba)とRyuto(Dr)による勇ましいビートが揺らす地に足をつけ、煽られるよりも前に何本もの手が上がるフロアに心地よさを覚えた。そして、再び長めのSHUNのギター・ソロへ。今度は、どこかもの悲しさを漂わせた音だ。まだ弾き終えていないにもかかわらず、彼が1音1音鳴らすごとに色めき立つフロア。その声に応えてか、もしくは我慢できずにか、"さいこー!"と叫ぶSHUNはとびっきりの笑顔を浮かべていた。「BURN」へと音を繋げると、フロアに出現した円。そこで走り回るオーディエンスたちの眩しいくらいのニコニコ顔といったら! そこにGakuも加わり、円はいっそう大きくなった。そうだ、音楽は自由だからいいのだ。いつだってMADALAはそう思わせてくれる。
この日の折り返し地点に立ったのは、exist†traceだ。赤い光で照らされたステージにまず現れたのは、Mally(Dr)。そして猶人(Ba)、乙魅(Gt)、miko(Gt/Vo)、ジョウ(Vo)が続く。静かな空間の中で、まずはジョウがひとりで歌い上げたのは、「selection」だ。美しいという言葉が一番しっくりくるような、そんな始まりだった。"今日はたっぷりと我々の力をぶつけていこうと思います"、そう言うジョウ。続く「GET BACK」、「be Naked」では、音のアタックは強めに、しかしはっきりとした音であるから、フロアのどこにいても振動は形となって現れる。最初の宣言どおり、バンドの結束力を見せつけていたのは、間違いない。
FOADは、挨拶代わりに「CASCADE」という、まるでステージ上の4人が鬼神のように見えてしまうほどに荒々しい曲を入れ込んできた。さらにKSKN(Vo)は、"お前らの喉仏よこせよ"なんて煽るのだから、オーディエンスは最大にまでブチ上がれるのだ。赤と白の光が交錯する空間に放たれた「ATLANTIS」。感情を抑え切れなくなったオーディエンスは、自身の熱気だけでなく、その身をステージにまで詰め寄せてきた。その光景は、鮮烈でさえある。"俺ら「A.V.E.S.T」にも出させてもらって。主催のGEN(Zephyren代表)さんは、いい音楽は「いい」って言ってくれる人"と、この日に出演できることが心の底から嬉しくて仕方がないのだとわかる笑顔で語るKSKN。ラストに投下したのは「Dive To The Ground」である。KSKNの断末魔のような叫び、KENT(Gt)のメロディアスなギター、 MORIYA(Ba)の生み出す隙間のないリズム、HAYAO(Dr)が弾き出す打音、この4つすべてがピタリと重なった瞬間に、感動とか、驚きとか、そういう言葉じゃ片づけられない感情に襲われる。それはもう身震いするほどである。去り際にKSKNの残した"ありがとう、超楽しかったよ"という言葉に、嘘なんてひとつもないはずだ。
残すところあと2組。そこでオン・ステージしたのはTHE GAME SHOPだ。KIMITO(Vo)に"遊ぼうぜ、渋谷!"と言われるがまま、ステージから音が鳴るたびにフロア一面はダンス・ホールと化す。しかし、それはどこまでも自由であった。好きな音を鳴らしていく4人の真似をするように、オーディエンスも好きなように声を上げ、好きなように踊り続ける。ライヴ中盤で披露された「Street Action」にしろ、「Get the Step」にしろ、パーティーは楽しんだ者勝ちであることをみんながわかっているから、この空間に音が高鳴っていくわけだ。彼らの"また遊びましょう"という言葉を約束に、約30分のステージを見届けた。
オーラスを飾るのは、夕闇に誘いし漆黒の天使達。毛先を赤く染めたツインテール姿の小柳(Vo)の腹には"トリだよ"と縦に書かれている。その姿だけでも充分すぎるくらいに面白かったし、集まったオーディエンスたちの心を笑いで一気に鷲掴みにしてしまうのも、彼らにしかできないことであろう。"悩みはバンド名が長すぎること"と言って「I want to change the band name.」でライヴをスタートさせるのなんて、きっと他の誰もしないことだ。続いて「はたらく君に贈る歌」を投下。普通であれば、頭を振るなり暴れていたりしそうなところで、ここにいる人間たちは空っぽの手でハンドルを切る。異様だ、異様すぎる。「Goodbye 卒業」や「治安isいい方がE」など、千葉(Gt)、ともやん(Ba)、にっち(Dr)が、それぞれの燃えるような闘志を剥き出しに音を投じつつも、その上に乗せられる小柳のポップな歌。かなり矛盾しているようだが、その矛盾でさえも、なんだか堪らなくかっこ良く見えるのだ。彼らがやるのは、正真正銘本気の遊び。もちろん、フロアの目も真剣である。イベントの終演を告げた「君に届かない声はイタリアにも届かない、故にミラノ風」まで、すべての目に一点の曇りもなかった。
出演していたバンドとも、隣にいた名も知らないお客さんとも、時間が進んでいくにつれて心や血が交じり合い、家族のようになっていく様が、きっとこの"In The Family"というイベントの面白みであろう。ただ、"「In The Family」って言葉、僕は英語が弱いんでよく分からないんですけど、たぶん「めっちゃ頑張ろう!」って意味だと思う"と小柳が言っていたが、それは絶対に間違いではない。主催であるGEN氏、出演者、そしてオーディエンスが集まってこそ、作り上げられる世界がある。すべてが終わってから動き出す未来だってあるはずだ。

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