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INTERVIEW

SLEEP TOKEN DJ/ライター対談

2025.06.19UPDATE

2025年06月号掲載

SLEEP TOKEN DJ/ライター対談

覆面且つ匿名、さらにSNSやメディアにもほとんど出ない謎の多い存在でありながら最新作『Even In Arcadia』で全米、全英をはじめ世界9ヶ国でチャート1位を獲得し、UKの超大型フェス"Download Festival"ではGREEN DAY、KORNと並んでヘッドライナーを飾る等、今や全世界を席巻しているSLEEP TOKEN。彼等について、最前線でシーンを見つめるDJ/ライターの2人が語る緊急対談を行った。

DJ/ライター 澤田 修
ライター 菅谷 透
Interviewer:米沢 彰

-シーンの最前線で活躍するお2人からの"SLEEP TOKEN、ここがすごい!"からまずは語っていただければと思います。

澤田:商業的じゃない音なのに全米、全英のチャートを制覇してしまったことにびっくりしています。

菅谷:いろいろなジャンルを組み合わせていて、それでいて様々な層のリスナーを惹きつけるサウンドになっているところが、すごいと思いますね。

-すごく難しいと思うんですけど、あえてジャンルとして形容するとしたらどう呼ぶのが合うと思いますか。

菅谷:個人的には他のアーティストも含めて一連の積み重ねを考えると、ポストメタルというくくりが一番フィットするのかな......と思っています。特に前作(2023年リリースの3rdアルバム『Take Me Back To Eden』)から今作(『Even In Arcadia』)の流れでもそこが大きいと思いますね。

澤田:ジャンルとして形容するのが難しいところで......。特に全米(1位を)獲った後は、"メタルじゃねぇ"みたいな声もすごくあったじゃないですか。もともと彼等はジャンルにカテゴライズされるのを拒否しているのかなと思っているので、やっぱり"SLEEP TOKEN"というジャンルですかね。BRING ME THE HORIZONとそこはちょっと近いというか。デスコアとか言われていた時代に背を向けているのとはまた違った感じで。 初期の音はメタルの要素が少なかったりするし、メタルが顔を出してきた2作目(2021年リリースの『This Place Will Become Your Tomb』)、3作目もあるし。ジャンル分けが本当に難しいし、ジャンルに分けるとまたなんかぶつかり合いが生まれるというか(笑)。その点が本当にすごいと思いますね。カテゴライズするのは難しい。R&Bじゃねぇかって言う人もいますしね。

菅谷:ポストメタルというのも、既存のジャンルにあえてメタラーが無理矢理当てはめるとしたらって感じはあるかもしれないです(笑)。

澤田:Worshippers(=崇拝者)と言われているファン・ベースが、今までのメタルのファンとは違うなという感じがしています。バンドからなんのステートメントもないので、そこを自由に語っていい部分もSLEEP TOKENの新しさというか、フォーラムとかでも好き勝手みんな言ってるのもすごいなと思いますね。

菅谷:メタル・シーンだけでなくて、ポップ・シーンにも影響力がかなりあるのではないかなと特に今作を聴いて感じて。例えばポップ・シーンでメタルを取り入れるというと、ギターでピロピロみたいな、どうしても古典的な要素になりがちなのが現状だと思うんですけど、違った角度からメタルをポップ・シーンに取り入れる動きが増えてくるんじゃないかなと考えていますね。

-音楽性ももちろんなのですが、ルックスと世界観、そしてその匿名性も異質な存在ですよね。

澤田:直近だとGHOSTがアメリカで成功しています。もともとアメリカってKISSやSLIPKNOTみたいな覆面を受け入れる土壌があるので、SLEEP TOKENは本国イギリスよりアメリカのほうがもしかしたらウケるのかなと思っていたら、今では世界中で大ヒット。アメリカでは否定されないかなと思っていましたけど、ただこんなにウケるとは思わなかったですよね。前作『Take Me Back To Eden』でたしか全米16位を取っていて、それでびっくりしたくらいですから、まさか今回1位獲るとはと思いました。

菅谷:匿名性と関連しますが、バンドが提示したストーリーに対しての考察がファンダム(ファンのコミュニティ)を中心に盛り上がっていて、バンドもそれを上手く利用していますよね。例えば少しずつ情報を提示して、楽曲タイトルがどうなっているとかいうような考察をしていくところが、現代のSNSカルチャーに合っているのかなって思っています。最近だとK-POPはマルチバース的にストーリーを提示したりしていますが、そこにメタルとしてのコンセプチュアルな作品性やアーティスト性もあって、全部ひっくるめてユニークな形で提示しているなと感じますね。

-隠されるから考察が膨らむみたいなところは現代っぽいですよね。

菅谷:ちょうど今作のプロモーション的なところで、アメリカの気象予報士とコラボしたという記事を見かけて。気象予報士の方がファンで、気象予報の中で作品に関するメッセージが盛り込まれていて、ファンが考察していたみたいな記事でした。あとは『Take Me Back To Eden』が広がったのはTikTokの力が大きいのかなと思いますね。

澤田:さっきR&Bって話しましたけど、音に関して、今回の作品はCarl Bownがプロデュースしていて、正式な情報としては出ていないですけど、元PERIPHERYのベース Adam("Nolly" Getgood)がサポート・プロデューサーで入っていて、プログレッシヴ・メタルやDjent系のサウンドががっつりヘヴィなところに活かされているのが幅広さというか。R&B、ポップスもあるけど、ゴリゴリの音も入っているというところがすごいなと思います。落差が凄まじいというか、ヘヴィなところだけ聴いたらめちゃめちゃヘヴィじゃないですか。そういう音の部分もめちゃめちゃ衝撃でしたね。Adamが関わっているというのを知って、あぁなるほどと思いました。

菅谷:そういうのを混ぜていくセンスがすごいですよね。

澤田:普通じゃ考えられないですよね、こういうミックスというか、音質もすごくいいし。

菅谷:スムーズに繋がっていくところもすごいなと。あとはギミックが取り上げられがちなんですけど、まず演奏が素晴らしいっていうのも大きくて、もちろんVesselのヴォーカルもそうですし、Ⅱのドラミングが歌に寄り添っていくように展開していて、それでいて小技も入れ込んでくるところがすごいなと思いますね。

澤田:シンバルやタムを使いまくっているけど、ヴォーカルを活かしたドラミングだなって、今回の作品を聴いてたしかに思いました。

菅谷:それでいて、Ⅱも1人だけちょっと表に出ているっていうのも面白いですね。

澤田:インタビューも受けたりしていましたね。

-お2人はSLEEP TOKENをいつ頃どうやって知りましたか? そのときの第一印象とか記憶に残っていることとかあればお伺いしたいです。

澤田:私は本業がラジオDJなので、イギリスからプロモーションの音源が届くことがあるんです。2017年にOUTKASTの「Hey Ya」のカバー(2018年リリースのシングル)が送られてきて、それで初めてSLEEP TOKENを知りました。このカバーはピアノの弾き語りなんですよね。その頃は、同じUKのFOUR TETっぽいアーティストなのかなと思っていました。それでたしかEP『One』(2016年リリース)を聴いたんですけど、そこにはあまりメタル感はなくて、EP『Two』(2017年リリース)に入ってる「Nazareth」っていう曲で、"SLEEP TOKEN結構ヘヴィじゃん"と感じました。

菅谷:自分の場合はちょっと遅めで、2021年のアルバム『This Place Will Become Your Tomb』が出たタイミングで名前を見かけるようになったんですけど。本格的にすごいなと思ったのは、2022年にLOATHEの「Is It Really You?」っていう曲をカバーしたとき(2022年リリースのシングル)で。オリジナルの曲はバンド・サウンドでヘヴィなんですけど、これも「Hey Ya」に近い感じでピアノ弾き語りのバラード調になっていて、BON IVERみたいなデジタル・クワイアが入っていたりしてガラッと変わっていて、こういうことをやるグループなのかなと思ったら、前に聴いたバンドだったんだって後から気付いたんです。
カバーをやるときって普通はバンドとして一番得意なスタイルを出すと思うんですけど、そこでピアノ・バラードを選ぶところも、そこに自信を持っているのかな、面白いなと思いましたね。

澤田:同感ですね。Whitney Houston(「I Wanna Dance With Somebody」)とかBillie Eilish(「When The Party's Over」)のカバーもしているんですけど(2020年リリースのアルバム『‎Sundowning (Deluxe)』収録)、やっぱりピアノ中心のカバーなんですよ。それって、SLEEP TOKENにも共通していると思うんです。作り込まれている曲をシンプルにしてもきちんと成立するクオリティの高さ。今回、国内盤のボーナス・トラックにも、「Even In Arcadia」のピアノ・バージョンが入っていますけど、その辺を聴いても曲としてしっかりしている、裸にしても良い曲をあえて選んでいるのかなと彼等のカバーを聴いていると思いますね。

菅谷:それで自分たちを出せるところが、バンドというかアーティストしてのSLEEP TOKENの強さなのかなと思いますね。

-6月13日から行われる"Download Festival"ではGREEN DAY、KORNと並んでヘッドライナーと、もはや世界の頂点に辿り着いたバンドの1つにまでなっていますよね。

澤田:言い方は悪いんですけど、『Take Me Back To Eden』が出た当時は、キャリアのピークの作品かなと思っていたんですよね、イギリスで3位だったので。なんですけど、2023年にSpotifyで一番再生されたメタル・アルバムがSLEEP TOKENだったと聞いて、マジかよって驚いたんです。世界的にそんなところまで来ているんだと思ったのがその頃でした。それまではここまで行くバンドだとは正直考えていなかった部分はありますね。

菅谷:自分も初めて知ったタイミングではここまでになるとは思っていなかったんですけど、『Take Me Back To Eden』で、かなりバンドとして成長して規模が大きくなったなという感触はありましたね。それでも今作でここまでになるとは思わなかったです。でも振り返ってみると、2019年にBABYMETALがイギリスでSLEEP TOKENとAMARANTHEとライヴしていて、BABYMETALの先見性も含めて、そのタイミングで共演していたのかという驚きがありましたね。

澤田: 2023年1月にLORNA SHOREのWill Ramos(Vo)にインタビューしたんですよ。そしたらインタビュー中に一番興奮していたパートは、SLEEP TOKENの話をしているときだったんです。なんとなく"おすすめのバンドはいるか"って聞いてみたら、"Yeah! SLEEP TOKEN!"と即答でした。とにかくSLEEP TOKENにはいちファンとして早くアメリカでライヴをやってほしい、SLEEP TOKENは最高だと興奮気味に語っていて、Will Ramosがそこまで惚れ込んでいるというのはびっくりしましたね。今年LORNA SHOREもアルバム(『I Feel The Everblack Festering Within Me』)を出すじゃないですか。まだ、新曲は1曲しか聴けていないので分からないですけど、万が一クリーン・トーンでも歌い出したら、SLEEP TOKENの影響とかあるのかななんて思いましたね。

-有力なミュージシャンが認めていたというのも、この快進撃の下地としては大きかった感じがしますね。

澤田:Rob Halford(JUDAS PRIEST/Vo)もSLEEP TOKENを推してましたね。Corey Taylor(SLIPKNOT/STONE SOUR/Vo)も彼等を認めています。

-Coreyも押してたんですね。同じ覆面の仲間として(笑)。

澤田:たしかに(笑)。