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LIVE REPORT

MEGA VEGAS 2017

2017.04.01 @神戸ワールド記念ホール

Writer 村岡 俊介(DJ ムラオカ)

去年8月に大阪舞洲サマーソニック大阪特設会場にて初開催されたFear, and Loathing in Las Vegas主催イベント"MEGA VEGAS"。彼ら自身がシンパシーを感じリスペクトする厳選されたアーティストだけをゲストに迎え、ライヴハウスの対バンのような1ステージ制で開催――乱立する夏フェスの中でひと味違うイベントであったことは記憶に新しい。2回目となる今回は2014年3月、ラスベガスが初ワンマン・ライヴを行った会場、神戸ワールド記念ホールでの開催だ。記念すべきタイミングでの神戸開催は彼らの地元愛を感じさせる。またPassCode、ヤバイTシャツ屋さん、サンボマスター、MONOEYES、WANIMAと新旧問わずロック・バンドからアイドルに至るまで初回開催に負けず劣らずのジャンルにとらわれない豪華なゲストを迎えている。さてフード・エリアで特盛のメガハラミ丼でも買って口いっぱい頬張りながら"MEGA VEGAS"をレポートしていこうと思う。



PassCode


まずトップバッターは激ロックでもお馴染みの最もエレクトロコアなアイドル、PassCodeだ。SE後、まず初めに披露されたのはメジャー・デビュー・シングルのカップリング「TRACE」。今田夢菜のスクリームから始まるこの曲を選んだことは、アイドルと高をくくっていた会場を黙らすには最適なセレクトだろう。会場の雰囲気を一変させ、そのままメジャー・デビュー・シングルであり最大のキラー・チューン「MISS UNLIMITED」を畳み込む。彼女たちのパフォーマンスをバンド編成で観るのは新木場STUDIO COASTのワンマン以来だが、やはりオケでのパフォーマンスとは迫力に雲泥の差がある。バック・バンドのタイトな演奏と4人のヴォーカル・コンビネーションはより精度を増しているようだ。アイドル界の中でも一際クオリティの高い楽曲で攻め立てる彼女たちはアイドルとメタル、ラウドロックの垣根を取り払ってくれる稀有な存在だと言えるだろう。



ヤバイTシャツ屋さん


2番手は10-FEETのマネジメントでもあるBADASSに所属し、昨年UNIVERSAL SIGMAからメジャー・デビューを果たしたヤバイTシャツ屋さん。リハーサル中からユーモアたっぷりのMCで会場を沸かせ盛り上げる。リハ後一度ステージをあとにし、SEでメンバー再登場。こやまたくや(Gt/Vo)の"始まるよー!!"の一声でスタート。初っ端から彼らの代表曲「Tank-top of the world」をぶち込んでいく。スカのリズムに会場中が踊りダイヴする。35分という持ち時間からか最初からテンション上げまくりでスタスタ・メロコアの「無線LANばり便利」、メジャー1stシングル収録の「ヤバみ」へ。MCでは"恒例のヤツやりまーす!"と言い、"メガべガー??"観客に"スー!!"と言わせたり、始まったばかりなのに、あと"1曲です! ウソや、エイプリルフールやで!"などひとしきり観客を楽しませる。「あつまれ!パーティーピーポー」では会場中から"しゃっ!しゃっ!しゃ!しゃっ!しゃっ!"、"えっびっばーっでぃっ!"の大合唱が巻き起こる。こやまの創造するメロコア~インディー・ロック、ポップまでジャンルに縛られない縦横無尽なサウンドは会場の反応を見る限りヤバT以外のファンにも自然と受け入れられていた。ボーダレスなイベント"MEGA VEGAS"との相性は最高だったのではないだろうか。



サンボマスター


正直、今までしっかりと向き合って聴いたことがなく、ライヴも今回初見のサンボマスター。激ロックをご覧の読者の大半も、ギターを弾きながら激熱なメッセージを叫ぶメガネのおじさんというイメージなのではないだろうか(乱暴ですみません)。ライヴは「ミラクルをキミとおこしたいんです」で始まったが、そのメガネのおじさんこと山口 隆(Vo/Gt)だが、演奏、楽曲、語り、そしてルックス、どれを取っても想定以上に熱い。もはや火傷寸前レベルである。"ギガベガス! かかってこいよ!"、"ギガベガス、メガベガス、どっちを選ぶんだよ? みんなでギガベガスにしよーぜ!"と叫び続ける。わずか6曲というセットリストのなか、最後に演奏されたのはオリコン・チャート7位を叩き出した彼ら最大のヒット曲「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」だ。歌詞でも歌詞以外のアドリブでも愛と平和、生きることを軸に熱く語り歌い叫ぶ山口の言葉はさとり世代とも言われる10代、20代前半のキッズにどう受け取られたのだろう。全身全霊でぶつけた彼の"想い"は会場にいるみんなの心にそれぞれ形は違えど何かしら届いたのではないだろうか。



MONOEYES


the HIATUSの細美武士が2015年に結成したバンド、MONOEYES。オルタナティヴでプログレッシヴなthe HIATUSと比較するとシンプルでストレートなパンク・ロック中心の音楽性はお祭り感の強い"MEGA VEGAS"のラインナップとの相性も良いのではないだろうか。いつもどおりスター・ウォーズのテーマに合わせてメンバーが登場。"俺たち神戸初ライヴだからよろしくな!"と細美氏の第一声。結成2年弱とはいえ神戸初ライヴとは意外だ。短い持ち時間を意識してか正統派メロコア「When I Was A King」、アイリッシュ・パンク・テイストの「Borders & Walls」とスピード・チューンを続けざまに繰り出し、そのままの勢いで1stシングル「My Instant Song」を演奏。コーラス・パートでは大合唱が会場中で沸き起こる。細美氏の紡ぎ出すメロディは世代を超越して受け入れられているようだ。"次に神戸でラスベガスとやるときは150くらいのハコでツーマンをやりたい"と細美氏が発言。これが実現したらチケット争奪戦確実だろう。中盤以降ではラウドな「Run Run」や、Scott Murphy(Ba/Cho)が在籍していたALLISTERの名曲「Somewhere On Fullerton」を細美氏がコーラス、Scottがリード・ヴォーカルを担当し披露した。注目されたいあまりに奇抜なサウンドやパフォーマンスに傾倒するバンドが急増するなか、シンプルなサウンドにキャッチーなメロディという普遍的な魅力で溢れた彼らは、今の時代逆に孤高の存在と言えるのではないだろうか。



WANIMA


そして主催のラスベガスを残し最後のゲスト・バンドとなったのは、さいたまスーパーアリーナ・ワンマンを成功させ、タウンワークやauのCMにも抜擢と、今やロック・シーンに止まらずお茶の間にまで浸透し、超快進撃が止まらないWANIMAだ。そんな脂の乗り切った彼らを、今このタイミングで目撃できる来場者は勝ち組と言えるだろう。定刻より10分ほど遅れて"JUICE UP!! TOUR"から使っているアゲアゲなSEで登場し、"業務連絡業務連絡! 残すところはWANIMAとベガスだけとなりました!"、"日本で一番ベガスが好き! WANIMAです! ラスベガス・プレゼンツ・メガベガス 2017、WANIMA開催しまーす!!"とKENTA(Vo/Ba)の宣誓と共に始まったのは「ともに」。YouTube再生回数1,300万回超えというメガヒットでド頭から会場全体が一体となってぶち上がる。続けざまに"ありがとうを込めて歌った~"という一度聴いたら口ずさめるメロディと歌詞で始まる「THANX」。どちらの曲もキャッチーやポップという言葉では到底表現しきれないメロディの持つ破壊力がとにかく尋常でない。彼らの曲を凡庸なカバー・バンドが演ってもこの楽曲の魅力をもってすれば盛り上がるのは必然だろう。WARNER MUSICから5月17日にリリースが決定している新曲「CHARM」から、SMAPの「夜空ノムコウ」の冒頭をアカペラでハモったと思ったらそのまま「いいから」に突入、途中ラスベガスの「Let Me Hear」のリフを差し込んだ「BIG UP」とWANIMA節全開に茶目っ気たっぷりに盛り上げる。そして最後はちょっぴりエモーショナルな「For you」で幕を閉じた。わずか6曲ではあったが、今のWANIMAの止まらない快進撃をまざまざと見せつけられた大充実のステージだった。



Fear, and Loathing in Las Vegas


そしてトリを飾るのは本日の主役であり"MEGA VEGAS"の主催者、Fear, and Loathing in Las Vegasである。以前ここ神戸ワールド記念ホールでライヴを行った際は、ベガス史上初のワンマン、そして当時彼ら主催では最大規模の8,000人キャパの会場ということで、僕まで緊張感を共有していたことを記憶している。あれから約3年、ひと回りもふた回りも成長した彼らが神戸ワールド記念ホールに戻ってきた。今回は"MEGA VEGAS"というイベント形式のためワンマンのような大掛かりなステージ・セットやザイロバンドのような飛び道具は使用しないだろう。そんなイベントならではの制約があるなか、バンド力そのものがより物を言うライヴになるに違いない。

本日最後となるアタックが会場に鳴り響いたあと、『PHASE 2』収録のアッパーなEDMナンバー「Are You Ready to Blast Off?」をバックにメンバーがステージに登場すると、今日一番の割れんばかりの大歓声が会場中から沸き起こる。So(Vo)が絶叫に近いハイ・トーン・ヴォイスで観客を煽り、SEから流れを切らすことなく「Rave-up Tonight」へ突入。神戸ワンマン当時は最新シングルであったこの曲が今や定番のキラー・チューンへと成長しており感慨深い。"MEGA VEGASへようこそー! MEGA VEGAS2017、地元神戸で開催となりました! 主催のFear, and Loathing in Las Vegasです!"とSoがMCを入れる。Sxun(Gt)のカッチリしたMCが長い間トレードマークだったラスベガスだが、驚いたことにファーストMCはすべてSoがこなしている。



イージーコア調で途中ラップも飛び出すタテノリ・チューン「Escape from the Loop」や、Soの"踊ろうぜ!"と叫んで始まったキャッチーなアゲアゲ・チューン「Shake Your Body」では、リズムに合わせてTaiki(Gt)がニコニコ楽しそうにダンシング。一体どこで買ったのかと聞きたくなるド派手でアメリカンなレスリング・コスチュームは毎度ファンの期待を裏切らない(笑)。ちなみにTomonori(Dr)もひと回りビッグなボディへとボリュームアップしており、リズム隊のインパクトが倍増しているようだ。テクニカルなギターとベースのコンビネーションとTaikiの雄叫びのような独特のスクリームが冴える「Thunderclap」をプレイした後、SoがMCで、神戸への地元愛や神戸に集まってくれたアーティストやお客さんに感謝の念を述べ、そしてSxun(Gt)が"みんなもっとぶち上げていこうぜ!"と本日初めてMCを入れる。もうSxunのMCは聞けないのかと、ふと頭を過ぎっていたので、なぜかホッとさせられた。 Minamiの怒涛のスクリームと極悪なブレイクダウンが際立つ「Step of Terror」ではSoが、お立ち台でV字開脚のパフォーマンスで観客を楽しませ、Minamiのシャウトがなければ四つ打ちエモ・ロックとしても成り立つ「Flutter of Cherry Blossom」で会場をゆったり躍らせ、YouTube再生回数1,300万強を誇る「Let Me Hear」で再びブチ上げる。起伏の激しいドラマティックなセットリストは彼らならではのものだろう。 ライヴも中盤を越えたころ、神戸のワンマン・ライヴの思い出をSxunがMCで観客に語っていると、SoがSxunを泣き虫おじさん扱いしたりとふざけてからかい会場の笑いを誘う。そんなふたりの和気あいあいとした掛け合いまで披露してくれた。リラックスしてアドリブ・トークまでこなす姿を見て、活動初期より彼らを見ているだけに感慨深い気持ちにさせられた。またその後のMCではワーナーミュージック・ジャパン移籍と約1年9ヶ月ぶりのニュー・シングル『SHINE』を6月にリリースすることを発表すると、会場からは惜しみない大歓声が上がる。一昨年までコンスタントにリリースを続けてきた彼らだけに、去年は映像作品以外リリースがなかったことに僕自身ラスベガス・ロス状態だったので、ファンにとっては狂喜乱舞以外の何物でもないだろう。



ライヴ終盤ではアッパーで覚醒感の強いメガヒット・チューンである「Ley-Line」「Starburst」などに、一際癖が強い「Nail the Shit Down」や「Virtue and Vice」といった楽曲をミックスしており、長丁場のイベントのなか、観客の集中力を切らせないようセットリストが巧みに構築されているのはさすがだ。そして80分全17曲のラストを飾った楽曲は7分超えの超大作「Stay as Who You Are」。UNDERWORLDを髣髴させる美しいシンセが鳴る間奏から一気にボルテージが上がるパートでは、会場全員の手が上がりリフトも無数出現。この壮大でドラマティックな楽曲「Stay as~」が"MEGA VEGAS2017"に最高のエンディングを添えることとなった。

2017年、"MEGA VEGAS2017"を皮切りに、レーベル移籍、そしてシングル・リリースと再び大きく動き始めたラスベガス。ありきたりな言い方だがあえて言わせていただこう。2017年、ラスベガスから一時たりとも目を離せない!

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