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INTERVIEW

Fear, and Loathing in Las Vegas

2022.10.13UPDATE

2022年10月号掲載

Fear, and Loathing in Las Vegas

Fear, and Loathing in Las Vegasが、ニュー・アルバム『Cocoon for the Golden Future』を完成させた! 約3年ぶりのフル・アルバムとなる本作は、じっくりと時間をかけたぶん、ラスベガス(Fear, and Loathing in Las Vega)節を研ぎ澄ましながらも、新たなリファレンスをもとに制作した楽曲や、楽器のバリエーションを増やして臨んだ楽曲もあり、自身の可能性をより貪欲に突き詰めた作品となっている。この先を見据えた作品になっているという今作について、Minamiとマネージャーに語ってもらった。

メンバー:Minami(Vo/Key)
マネージャー
インタビュアー:村岡 俊介(DJ ムラオカ)


もともとフレーズのネタや歌のメロディのネタを作るメンバーがふたりいたのが俺ひとりになっただけで、根本的なやり方自体はずっと変わってないですね


-7枚目のフル・アルバム『Cocoon for the Golden Future』がいよいよリリースとなりますね。今の気持ちを教えてください。

Minami:前作の『HYPERTOUGHNESS』(2019年リリースの6thアルバム)から3年近く経つんですけど、その間にコロナ禍があって大きく状況が変わって。もともとは定期的にアルバムを出して、リリース・ツアーをして......というのが続いていたので、それが3年もできないということは初めてだったんですよ。次にいつアルバムを出してツアーできるのかなっていう状況が続いてたので、とりあえずリリースすることができるのが嬉しいです。やっとできるっていう感じです。

-リリースを重ねると、いい意味でも悪い意味でも慣れが出てくると思うんですけど、今回そういう意味では7枚目にして新たな感動があるというか。

Minami:そうですね。結構期間があって、時間をかけて作れたという面もあるので、いろいろ新しい要素も入れられましたし、それでいてラスベガスらしい部分もあって、内容が詰まったアルバムになったんじゃないかと思います。もちろん毎回アルバムを全力で作るということには変わりないんですけど、"次にいつ出せるのかな"っていう不安があったぶん感慨深いところはあります。

-リリースの間隔が空いた理由は、やはりコロナ禍が主な原因ですか? レーベル移籍やメンバー編成の変化なども併せた複合的な理由もあるのでしょうか。

マネージャー:一番の理由は、コロナ禍でツアーが組めなかったからですね。アルバムをリリースしたあとにツアーができないという状況では難しいな、と。

-アルバム・タイトルの"Cocoon for the Golden Future"ですが、直訳すると"黄金の未来への繭"ですね。どういった意味を持っているのでしょうか?

Minami:タイトルを考えるにあたって、"環境が変わっていくなかでの適応/順応"とか"次の段階への準備"、といったことをテーマにしようということになって。そこからタイトルを考えていった感じですね。そのなかで、進化前の感じと環境に応じて変わるという部分で"繭(Cocoon)"はぴったりなんじゃないかなと。

-タイトルはアルバムのコンセプトともひもづいているということですね。

Minami:そうですね。

マネージャー:このあとのアルバムのタイトルもなんとなくイメージがあって。そのイメージに持っていくための準備というか、次の段階に持っていくための準備みたいな意味もあります。

-では、今作からその次の作品への流れまで考えたうえでのタイトルになっているということですね。

マネージャー:そうですね。今作はそういうところまで考えられる時間があったので。

-たしかに。毎年リリースしているような状態だと、目の前の作品を作ることに集中するだけになってしまうかもしれませんが、今回はその先のことまで考える時間と余裕があったということですね。個人的には"Cocoon"というと、80年代のアメリカのSFヒット映画を思いだしてしまうのですが......そこらへんは関係ないですね(笑)?

Minami:それは考えていなかったですね......。自分たちの世代では"コクーン"っていうとポケモンのイメージなんですよね。さなぎを英語で"Chrysalis"というんですけど、単語としては"Cocoon"のほうが、馴染みがあるしわかりやすいかな、と。

-なるほど(笑)。ポケモンまったく通っていなかったのでわかりませんでした。アルバム全体に関して、ネタ作りとかも含めて、環境が変わった状態でアップデートできた部分とかはありますか?

Minami:制作の仕方という部分で言うと、今までと全然変わっていなくて。曲のテーマとか、こんな曲を作ろうというイメージを貰ってから、俺がネタを作ってそれをマネージャーさんと形にしていくという流れです。今までより時間があったのでストックができた点は違いますが、やり方は変わっていないです。なぜかwikiなどでも制作の仕方が変わっていったふうに書かれているのですが、基本的な作曲のやり方はSxunさん(Gt)が抜ける前からも変わっていないですね。

-作品を聴いてもらえたら、一番わかりやすいかもしれないですね。

マネージャー:そうですよね。でも、お客さんがネットの情報だけ見て"あぁ、ラスベガス変わっちゃったんだ"っていう連鎖が起きている印象もありますね。日々練習して頑張っているメンバーに対しては、偏った情報がひとり歩きしているのは残念なことだなと思います。

Minami:もともとフレーズのネタや歌のメロディのネタを作るメンバーがふたりいたのが俺ひとりになっただけで、根本的なやり方自体はずっと変わってないんですよね。

マネージャー:あと手順や機材という部分で、依然と比べて整ってる部分もあると思います。例えば、ダビング・パートはMinamiが弾くのですが、ダビングのフレーズはレコーディング期間中に俺がMinamiのネタをもとに詰めていって、決まったものをMinamiが弾いていくっていう作業なんです。そのあたりの一連の流れも決まってきたというか、落ち着いてきたかなと。

-Minami君はステージでも「Repaint」でギターを披露していますよね。多才ですよね。

Minami:レコーディングでは、先に決まってる基本的なバッキングはTaiki(Gt)さんに弾いてもらっているんですけど、ダビングのフレーズはレコーディング中に細かく作り込んでいくので、できたらすぐに俺が弾くようにしています。あと、今回のレコーディングからギターを何本か新しく買っていて。ダビングのときに新しいギターを使ったり、フレーズによってギターを変えてみたり、そういう意味でもサウンドに幅が広がっていますね。

-面白いですね。楽器を変えることによってマンネリ化を防いでいる面もあると。

マネージャー:そうですね。『HYPERTOUGHNESS』のときは正直気持ち的にまったく余裕がなくて。なので、リリースされてから改めて音源を聴くと、ちょっとギターの音色に偏りがあった気がしていて。そういう部分が気になっていたので、今回はレコーディングが始まる前にギターを増やそうと思っていて。

-アルバム収録曲の中には既発の配信リリース曲もありますが、時期的にはアルバムの楽曲から配信曲をピックアップした感じなのでしょうか、それとも配信曲が先にできていたのでしょうか?

マネージャー:配信の曲を先に作っていった感じです。先に話したギターの機材を増やしたりなどは都度行っていたので、アルバムの中でも音のアプローチは結構変わっています。

-なるほど。では、ここからはアルバムの曲について詳しく訊いていきたいと思います。1曲目の「Get Back the Hope」ですが、ラスベガスとしてはかなり珍しい、テンポ・チェンジのない、しかも約3分というコンパクトな楽曲ですね。

Minami:この曲はもともとアルバム1曲目としてイメージされていて、勢いがあって難しい展開とかはなく走り抜けるような曲です。前のアルバムが終わって次のアルバムを作り始めようかっていう段階で着手していて1年以上前にはできていた曲ですね。

-ここまでわかりやすい曲って、今まであまりなかった気がします。

マネージャー:例えば『All That We Have Now』(2012年リリースの2ndアルバム)の1曲目の「Acceleration」など疾走感を持ち続けるイメージの曲もあるにはあるんです。ただ、「Acceleration」は最後に落とすんですよね。今回は落とさずに終わります。テンポ・チェンジがない曲もあるにはあるんですけど、これだけ四つ打ちの感じで続いていく曲はあまりなかったですね。

-ベタな爆発音で終わるエンディングが、80年代のLAメタル・バンドにありそうな、ある意味バカっぽさがあるのも好きですね(笑)。

Minami:(笑)爆発音っていうのは、他の曲でも使ってはいるんですけど、ここまで狙った感じではないです。インパクトも出るし、そういうバカっぽさみたいなのも出るので、気に入っています。

-そういう意味でも、この曲のテーマは"わかりやすさ"なのかなと。

Minami:たしかに。

-ひと足先にMVも拝見させていただきましたが、ミニ四駆が駆け回っていますね? すごく面白いアイディアです。楽曲のスピード感がより伝わってきます。

マネージャー:ラスベガスのMVは、すべて自分がアイディアを出していて、それを撮影チームに投げて詰めていく感じなんですけど、これはミニ四駆に車載カメラをつけて撮れたら曲の持つ疾走感のイメージに合うのかなと思い。

Minami:普段ミニ四駆の大会をやっている会場を見に行かせてもらって。先に、実際どんな感じで映るかっていうのを見せてもらったんですけど、それが結構面白くて。見たことのない世界でした。

-メンバーはみんなミニ四駆って通ってないんですか?

Minami:Tetsuyaはもともと趣味でやっていて、自分でも作ってるみたいですね。撮影のときも自分のミニ四駆を持参してきて(笑)。

マネージャー:Tetsuyaの作ったマシンがちゃんとコースを完走したんですけど、それでミニ四駆のプロの人たちが結構驚いていてました(笑)。

-なるほど。今回のミニ四駆のコース自体は、撮影のために組んだものだったんですか?

マネージャー:そうです。例えばミニ四駆の車載カメラでずっと同じ高さで走っていると、画的には退屈になってしまうので、高さをつけてアップ/ダウンさせたいとか、そういう部分も決めて。1ヶ月くらいかな。準備して作ってもらいました。

Minami:すごかったですね。

-地味に大変そうですね。曲のこのタイミングでこのカーブを走る、みたいな細かいところまで計算されていたんですか?

マネージャー:そのあたりは編集ですね。当初の構想では曲が3分なので3分で1周する、みたいなことをやりたかったんですけど、さすがにそれは難しすぎるということで(笑)。何台かを走りっぱなしにしておいて画の素材を撮って、それを編集する、という形になりました。

-なるほど。何回か走っていくなかで、いい画をピックアップするというか。

Minami:走っているところに近づいていって、シャウトするとか。コースの中に、"バーティカルチェンジャー"っていう橋みたいになっているセットがあるんですけど、それは結構ミニ四駆好きな人でも"おぉ!"ってなるような難所になっていて。結構本格的なコースを作ってもらいましたね。

-この曲はSo(Clean Vo)君のギター・ソロ・プレイも見どころですね。もうラスベガスは全員ギター弾けるんじゃないかと。

マネージャー:はい。Tomonori(Dr)も弾けるんですよ。しかも結構上手いんです(笑)。SoはSoで、もともとそんなにソロを弾くようなギター・ヴォーカルではなかったですけど、ギターに触れていた経験はあったのですんなり進められました。この曲に関してはライヴ中に、Soがギターを持って弾いて、ギターを置いて、というところまでのパフォーマンスも想定して作っています。

-ライヴでちゃんと実現できるような間を作ってあると。

マネージャー:はい。それから今作でMinamiがギターを弾いたりSoもギターを弾きだした、みたいなことをやっておいて、"じゃあこの次のアルバムはいったいどうなるんだろう?"と考えるのも面白いかな、と思います。先ほど言ったように、"次への準備"みたいなものもタイトルに含ませているので。