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LIVE REPORT

Fear, and Loathing in Las Vegas

2014.03.23 @神戸ワールド記念ホール

Writer ムラオカ

通常ライヴ・レポートは東京、遠くても関東圏で取らせていただくことがほとんどだが、今回、Fear, and Loathing in Las Vegasが地元神戸で記念すべき初のワンマン公演を行うということで、はるばる神戸まで足を延ばすことにした。
開演30分前に会場である神戸ワールド記念ホールに着くと、会場前はカラフルなファッションを身に着けたキッズで溢れ返っている。今夜繰り広げられるスペシャルなライヴを期待してか、皆一様にしてテンションが高い。そして会場の中に入ると、さすが8000人収容。想像以上に巨大だ。ラスベガス主催では2400人収容の新木場STUDIO COASTが過去最大規模の公演だったので、それと比較すると3倍以上のキャパだが、アリーナはすでに後方までほぼ埋まっている。事前にソールドがアナウンスされていたので分かり切っていたこととはいえ、5年前、初開催のGEKIROCK FES大阪公演のトップバッターとして出演してもらった頃から知っているだけに彼らの成長は本当に感慨深い。開演の17時が近づくと、アリーナ、スタンド共にパンパンな状態に。会場のBGMはいつも通りバキバキなサイケデリック・トランスだ。開場時間から約10分遅れてステージ前に貼られた大きな幕に投影されたラスベガスのロゴが躍動し始め、10、9、8......とカウントダウンが開始。観客もスクリーンに映る数字に合わせ大きな声でカウントしていく。カウントダウンを終えるとそこには、3月17日、突如オフィシャル・サイトで発表された新ロゴが大きく映し出され、会場中が大歓声で包まれる。その幕が落ちステージの全貌が現れると、そこには巨大な白いスピーカーが無数に積まれた壮観なステージ・セットが設置されており、どこか幻想的ですらある。そして大歓声の中メンバー6人が登場。Soは登場するなりハイ・トーン・ヴォイスで観客を煽る。Taiki(Gt)がテンション高めにタンクトップを引き裂きアリーナに投げ捨てる(もちろんその後すぐに別のタンクトップを着用)。バンドはすぐさま1曲目の「Acceleration」へ突入。メンバー全員初のワンマンに浮き足立つことなく、堂々とプレイしている様はさすがである。会場に集結したキッズは1曲目から慣れないホールに萎縮することなくいつにも増して激しいアクションでバンドに応え、ブレイクダウン・パートでは早くもウインドミルの輪が各所に同時多発的に発生。続く2曲目は一般層を取り込むきっかけとなった一際キャッチーな「Jump Around」をプレイ。Soが"ジャンプ、ジャンプ!跳べ、跳べ!"と観客を煽るとそれに合わせて8000人が一斉にジャンプ、2階席にいる僕の目の前に素晴らしい光景が広がっている。

そしてSxunが"ついにこの日がやってきました、First One Man Show 2014。みなさん準備はできてますか?"と会場に問いかけると、観客は大歓声で応え、そして"この曲やります!"とSxunが叫び、ギター・リフからコーラス、そしてMinamiのスクリームになだれ込む「Scream Hard as You Can」をプレイ。ステージに無数に積まれた巨大な白く光るスピーカーがプロジェクター代わりとなり、派手な映像がBPMに同期してそこに投射される。途中のフューチャリスティックなEDM(エレクトリック・ダンス・ミュージック)パートは会場のライティングや映像と完璧にリンクして鳥肌が立つほどに刺激的だ。そしてそのまま間髪入れずに「Chase the Light!」へ。会場の各所に仕込まれたレーザー装置が一斉に起動し縦横無尽に会場をレーザー・ビームが駆け巡る。とにかくライティングと映像のクオリティが凄まじく高い。それもロック・コンサートというより、まるでレイヴ・パーティーのように洗練されている演出であるのに驚かされた。
"初めてワンマンをやってみようと考えた時、このバンドが生まれた神戸ワールド記念ホールを選びました"と地元愛を感じさせるMCに続いて、初期の代表曲「Shake Your Body」、カオティック度数の高い「The Answer for Unequal World」へ。そして音楽性の幅を一気に広げることに成功したラスベガス流バラード「How Old You are Never Forget Your Dream」が奏でられる。ここで2階席特典として告知されていた2階席全員が腕にはめているザイロバンドが演奏に同期してピカピカと点滅を始める。COLDPLAYなどすでにコンサートで使ってるアーティストはいるが、邦ラウドロックでは初めての試みではないだろうか。エモーショナルなバラードにマッチした美しい演出でこのザイロは会場に興奮と一体感を生み出していた。まさに記念すべき初ワンマンに相応しい演出であった。

感動の余韻を残しながらもSxunによる目の覚めるようなMCが。"ラスベガスからみんなに重大なお知らせがあります。今年の夏に3rdフル・アルバムのリリースが決定しました!"観客が興奮でざわつく中、そこにさらに燃料を投下するように最新シングル「Rave-up Tonight」を叩き込む。この曲のMVにはCGとプロジェクターを用い、建物や物体、空間などに映像を映し出すプロジェクションマッピングが用いられているが、今回の巨大スピーカーのステージ・セットはそのMVからインスパイアされたものだろう。MVのようにMinamiの側転こそなかったが、Soの百烈拳がステージ上で繰り出されキッズも負けじとコブシを繰り出している姿が微笑ましい。「Rave-up Tonight」からシングルの曲順のまま「The Courage to Take Action」へ。8ビット・サウンドのイントロから始まり、雄々しい男性コーラス、ピアノ・サウンド、ブレイクダウンなど目まぐるしく展開が入れ変わる複雑でプログレッシヴな楽曲だが、新加入のKei(Ba)含めほとんど乱れることはない。その後「interlude」を挟んでの「Don't Suffer Alone」ではステージ背面上部にある巨大スクリーンに何台ものカメラで様々な角度からメンバーの演奏シーンが映し出されるが、その映像にエフェクトをかけたりと凝りに凝った演出が素晴らしい。「Don't Suffer Alone」ではアドレナリンが上がってか、Minamiがステージを下りて前方の観客に突っ込んでいく。次に披露されたシャウト・メインの「Step of Terror」ではSoも負けじと観客に突っ込んでいく。すべてが計算尽くされた完璧なパフォーマンスだけでなく、こういった感情に任せたパフォーマンスも実に魅力的だ。続く「Ley-Line」では再び2階客席のザイロバンドが点滅し、ステージ後方の巨大スクリーンとスピーカーに投影される近未来チックな映像も曲の雰囲気と完全に同調し、視覚でもって補完することに一役買っている。そして、しっとりしたピアノの調べから始まる「Short but Seems Long, Time of Our Life」では会場中央に吊るされた巨大なミラーボールに四方から光を当て、会場中に粉雪が舞っているようなファンタスティックな光景が演出され、楽曲の魅力を一層引き立てることに成功している。ここまで14曲プレイしてきているが、1曲1曲にフックの効いた演出が施されており、このワンマン・ショウがメンバーとスタッフによって如何に丁寧に作りこまれていることかがよく分かる。

いよいよライヴも終盤に差し掛かったところで"ステージで6人で音を出すということがメチャクチャ楽しいという気持ちを俺たちは絶対に忘れません!"というバンドの成長過程における1つの区切りを感じさせるMCが会場に響き渡る。その後、「Just Awake」をプレイ。そして2nd EP収録の「Evolution~Entering the New World~」と3rd EP収録の「Twilight」とコアな曲が立て続けに演奏される。
"みんなを最高に楽しませるために用意してきたこのワンステージにすべてをぶつけて帰ります。だから今日もアンコールはやりません、正真正銘のラスト2曲です!"といいクリーン・パートを省いたスクリーム・スタイル・オンリーの最も激しい1曲「Crossover」へ。曲のワルい雰囲気に合わせてライティングも真紅一色で会場を血の色に染め上げる。観客も最後の力を振り絞り、クラウドサーフにウインドミルで対抗。バンド、観客共にボルテージも最高潮に。Soが"みんな付いてきてくれてありがとう!最後出し切ろうぜ!"というMCの後、柔らかいシンセ音が会場に流れ、徐々にアッパーなキックが加わっていく。そう、激アガリのダンス・チューン「Love at First Sight」が放たれると、光る銀のテープが天井から会場中に舞い降りてくる。フロアではライヴ慣れしたキッズの2-STEPから、手を上げひたむきにジャンプするライヴ初体験のような10代前半の子まで、形は違えど会場中一体となって笑顔で踊り狂う。沸点を超えた盛り上がりのままライヴは終了を迎え観客はみんな満足気な顔をしている。そしてステージに目を向ければそこには初のワンマンをやり遂げたメンバーの感極まった表情がとても印象的であった。

鍛え上げられたライヴ・パフォーマンス、彼らを支えるたくさんの熱いキッズ、素晴らしいステージ・セットとライティング......結成から6年、Soが加入してから5年を経て、ラスベガスが目指してきた理想のバンド像にだいぶ近づいてきたのではないだろうか。本人たちにそう伝えても、"いやまだまだですよ"と恐らく口を揃えて言うだろう。初のワンマン、しかも8000人キャパのソールドを達成しても彼らは満足することなく決して歩みを止めはしないだろう。より高みを目指してラスベガスの旅はこれからも続いていく。

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