INTERVIEW
Fear, and Loathing in Las Vegas
2022.10.13UPDATE
2022年10月号掲載
メンバー:Minami(Vo/Key)
マネージャー
インタビュアー:村岡 俊介(DJ ムラオカ)
-この先のことも想像するとさらに面白いですね。「Evolve Forward in Hazard」、「Shape of Trust」、そして「One Shot, One Mind」は前回の取材(※2021年8月号掲載)時にお聞きしていますので、楽曲詳細については割愛しますが、すでにこの3曲はツアー"FaLiLV Shuffle Tour 2022"でもプレイしていますね。ライヴでのお客さんからの反応はいかがですか?
Minami:曲が始まったときに、結構"おぉ!"って反応もらえたりすると、新しい曲も聴いてくれてるんだなというのがわかって嬉しいですね。でも、この3曲は本当はやっぱりお客さんがもみくちゃになったり、暴れまわったりしてほしいタイプの曲で。本来ならもっと"ワーッ!"ってなる曲なので、早くそういう盛り上がり方ができる状況に戻ってほしいのですが、振付などそっちのパフォーマンスで引っ張っていくこともできるので、お客さんからしたらノりやすいんじゃないかと。
-なるほど。疾走感のある激しい曲に関しては制限がなくなったら完全体になるのかもしれないですね。
Minami:そうですね。
-Track.4の「Ain't That So Awesome」ですが、前回のインタビューでマネージャーさんがおっしゃっていた、ギターを弾いていない曲ですよね。実際は1分40秒あたりからバンド・サウンドが入ってきますが、それまではK-POPかLMFAOかというような、ダンス・ミュージックな雰囲気ですね。
Minami:そうですね。結構新しい曲というか、攻めた感じの曲になってるんじゃないかと思います。実際、K-POPとかEDMとか、BLACKPINKみたいなのを参考にしていて。TaikiさんとTetsuya(Ba)がラップしているとか、Soが韓国語で歌っているとか、そういう新しい要素もあるし、ギターがないぶんEDMっぽいキックの音とかシンセの音とか、強い音が出しやすくなっていて。今までは一応バンド・サウンドでやるっていうのが前提としてあったのでなかなかやりにくかった部分なんですけど、そういう当たり前を捨てることでEDMっぽい音とかが出せるようになりました。
-極悪なMinami君のブレイクダウンも入っていて(笑)。
Minami:(笑)
-エレクトロやヒップホップを大胆に取り入れた「Party Boys」(2015年リリースの4thアルバム『Feeling of Unity』収録曲)や「LLLD」(2017年リリースの5thアルバム『New Sunrise』収録曲)を経ての振り切ったサウンドなので、今までの流れがあってできた曲ですよね。ついにここまできたか、と(笑)。
マネージャー:そうですね。唯一無二な感じは狙いたかったですね。
-なんちゃってなパートではなく、ガチでやってるのがまたいいんですよね。ちょっとかじったものを入れて"面白いでしょ?"っていうんじゃなく、その界隈のグループにも負けない仕上がりなのはすごいですね。K-POP感があるだけでなく韓国語の歌詞まで出てきますし。
マネージャー:今まで英語で歌ってきているのでそれに慣れているんですけど、それが韓国語になって、聴く人が"ここちょっと英語じゃなくて韓国語っぽい"って思うのもアリだよなって。実際入れてみて良かったというか、英語とは違う違和感がありつつ、かといって受け入れられない感じでもない気がして。
-耳馴染み的にも特に違和感はないんですよね。英語ではないけど、日本語でもないな? っていう不思議な響きはありますけど。
マネージャー:ラスベガスの歌詞ってもともとそうだと思うんですよ。何言ってるかよくわからない、みたいな(笑)。都合良く解釈すれば音として捉えている人が多いというか。それを上手く使いたかったという感じですね。
-ヴォーカルもひとつの楽器になっているようなイメージですね。洋楽志向のある方は特にそういうふうに聴いてるんじゃないかと。あまり歌詞カードとかは見ないで、メロディと入ってくる語感を楽しむというか。
マネージャー:そうですね。
Minami:もともと英語の曲が多いのとかも、音的にそれがハマるっていう感じで今までやってきていたので。マネージャーさんから韓国語を入れるって聞いたときに最初はびっくりしたんですけど、音がハマるんだったら全然ありだなと。
-So君は、韓国語で歌うことに苦労はしてましたか? それとも意外とスムーズに飲み込めましたか。
マネージャー:まず最初に、Soは友達が多いので韓国人もいるんじゃないかなと思って。実際に"韓国人の友達いる?"って聞いてみたらやっぱりいたので、その友達に協力してもらったんです。その流れで歌っているので、言葉に関しては大丈夫だったかなと。
-そうなんですね。ちょっと話は変わるんですが、ドイツにELECTRIC CALLBOYっていうエレクトロニコア・バンドがいるんですけど、その彼らが"PAROOKAVILLE"というドイツ最大級のEDMフェスに、DJやラッパーと一緒にバンドとして出演したんですよ。そういうのを見ていると、ラスベガスも"Ultra(Ultra Music Festival)"や、国内外のEDMフェスやイベントに出演したら面白いんじゃないかと思ったんです。
マネージャー:そうですね。"Ultra"については1回"Ultra Korea"に出たことがあって。
-そうでしたね。
マネージャー:でも、そのときはDJものとバンドもので扱いが結構別れていて。DJのほうはすごくたくさん人がいるんですけど、バンド・ステージのほうはほとんど人がいなかったんです(笑)。だから、同じような見え方、DJの中に出演するんだったらもっと面白いんじゃないかと思いますね。ラスベガスはそういうところでも通用するものがあるんじゃないかなと思っています。
-それはすごく思いますね。僕は以前はロックDJと並行してサイケデリック・トランスのDJをやってたことがあるんですけど、ラスベガスの音楽はそういう人種が惹かれるサウンドなので(笑)。だから、ラスベガスの音は他のどんなバンドよりもそういう環境でウケるんじゃないかと。
Minami:そうですね。EDM系のフェスとかに出て、自分たちがどうなるのかっていうのは、すごく興味ありますし。俺たちのことをまったく知らないお客さんがいっぱいいるところでやるライヴも、もともとそのほうが燃えるっていうか。"お客さんをとってやるぞ!"みたいにテンションが上がるので。今は自分たちのワンマンみたいなライヴが多いので、そういう新鮮な環境に出てみたいのはありますね。
-日本国内にいると、どうしてもフェスとかのメンツが被ってきて、それはそれでいい面もあるんですけど、新しい場所で観られるラスベガスっていうのも楽しみですよね。
マネージャー:ぜひとも実現させたいですね。
-続いて、6曲目は1st(2010年リリースのアルバム『Dance & Scream』)から毎回欠かさず収録されている「Interlude」ですね。ちなみに、1stアルバムの頃からマネージャーさんは制作に関わっているんでしょうか。
マネージャー:そうですね。先ほど作曲についてお話したような制作の方法は実は1stアルバムの頃から、ほとんど変わっていなくて。俺が一緒に作業するようになったのは、『Take Me Out!! / Twilight』っていう3枚目の自主制作EPからなのですが、『Dance & Scream』を制作するにあたっては数週間神戸に泊まりに行ったりしていました。
-そうなんですね。そして、その1stからずっと「Interlude」というものを入れる流れができていて。
マネージャー:ほんとに単純な場面転換の役割というか、次への繋がりとか。曲間とかBPMとかというところで、繋ぐ役割を果たしているんですよね。
-重要ですよね。今回特に面白かったのは、すごくフューチャリスティックな曲調から始まり、後半ウッド・ベースにピアノという、ジャジーでどこか懐古的な曲調へと変化していくという。だんだん未来に向かうのではなく、未来っぽい雰囲気からだんだん遡っていくというのが面白いです。
マネージャー:当初の構想ではドラム、ピアノ、ベースでトラックを作りたいっていうのがあって。それで参考にしたアーティストも結構いっぱいたんですが、結構難航してしまって。最終的にうるさいパートから始まってジャズにいくことで、先述したようなインタールードの役割も果たせるなと思い、今の構成になりました。
-この曲1曲というよりは、その前後を考えての曲展開ということですね。
マネージャー:そうですね。アルバムの曲順も考えながらの作業だったので次の「Tear Down」に合わせたBPMの効果音も入れたりしていました。
-なるほど。そして、その流れで始まる「Tear Down」なんですが、こちらはスクリームの応酬やブレイクダウンなど、これぞメタルコアというパワー系のスタイルがクールな楽曲ですね。
マネージャー:アルバムを作るにあたって、こういう部分を強化しなきゃいけないなと思っていて。そのポイントとしてギターのリフがあって、Spotifyなどでいろんなバンドを聴き漁り、その中でもHONE YOUR SENSEというバンドは結構参考になりました。
-そうなんですね! その繋がりは想像できませんでした(笑)。
マネージャー:こちらでいろいろと参考になるアーティストを探してMinamiに聴かせてみたりしていました。他には例えばKobaryoっていう人がいて、これは全然メタルコアとは関係ないんですけど、めちゃくちゃ良かったですね。
Minami:そうですね、「Tear Down」の真ん中のSoが歌うサビとかは結構Kobaryoさんを参考にしています。Kobaryoさんはハードコア・テクノ系の音楽なんですけど、目まぐるしく展開していく曲の攻めた感じが面白くて。さっきの「Interlude」もKobaryoさんの影響はありますね。
マネージャー:2015年あたりのひと昔前の海外で流行っていたメタルコアを聴いた日本のバンドたちがそれぞれの解釈でいいものを作っていて......それをさらに解釈し直したような流れになっていますね。
-ひと昔前のスタイルが1周回ってカッコいい的な。
マネージャー:まさにそんな感じですね(笑)。
-Taiki君のスクリームもかっこいいですね。いつもとちょっとスクリームの声質が違うような気がして......。
マネージャー:そうですね。ちょっと違う質の声になったというか。
-いつもは結構野太い感じのシンガロング・スクリーム・スタイルじゃないですか。今回はどちらかというと、キレがいいというか。
マネージャー:最近はだんだんいろんな声が出るようになってきてます(笑)。Taikiももともとシャウトしたかったと思うんですよ。2個前のアルバム(『New Sunrise』)で「Before I Fail」っていう曲があって、そのへんでもちょっとシャウトっぽい声は出しているんです。Taikiはこんな声を出したいんだろうなっていう印象があって、そこから期間が空いて今回はちゃんと出てるなっていう。
Minami:パワー・アップしてますね。
-引き出しは増えてますよね。トリプル・ラップとかも。まさかの3人ともできるの!? っていう(笑)。
マネージャー:ライヴでもいろんな計画があるので、面白いことになるかな、と思いますね。楽器を置いて、また楽器を持ってっていうところも、しっかりスペースを設けているので。
Minami:Tetsuyaも"まさかベースを置いてラップをすることになるとは......"って言ってましたけど、でも意外とノリノリで(笑)。