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LIVE REPORT

PassCode

2022.02.12 @日本武道館

Writer 吉羽 さおり Photo by Shingo Tamai, Viola Kam (V’z Twinkle), KOH MAJIMA

2020年1月、"CLARITY Plus Tour 19-20"ファイナルの新木場STUDIO COAST公演で、日本武道館でワンマン・ライヴを行うことを宣言したPassCode。そこから約2年、コロナ禍でライヴができない時期もあったが、2021年には3rdアルバム『STRIVE』を携えて["STRIVE" for BUDOKAN Tour 2021]と題したツアーを行った。その中で、体調不良で療養をしていた今田夢菜がグループを勇退し、有馬えみりが加入した新体制に。世の中の状況も含めて、2020年時に思い描いただろう筋書きとは違った展開になった部分もあったと思うが、出来事を受け止め、ひとつひとつをポジティヴに転化して2月12日の日本武道館のステージに繋げていった。この日集った観客も、PassCodeが描いていくストーリーを、時にはハラハラしながら追いかけてきた。開演前、"PassCode 日本武道館"と大きく映し出されたスクリーンとスモークで煙るステージを見つめる観客は、この日が実現することの感慨に浸りつつ、また心地よい緊張感を放っていた。

オープニングの映像が流れ大きな拍手が武道館に響くなか、バンドに続いて南 菜生、高嶋 楓、大上陽奈子、有馬えみりが登場──それも突如大きなスクリーンが上下に開いて4人が表れたことで、会場の拍手は驚きと興奮とで一段と大きくなった。"日本武道館、楽しんでいこうぜ"。南 菜生の言葉とともに、PassCodeがこの記念すべき日の1曲目に選んだのは、2016年のメジャー・デビュー曲「MISS UNLIMITED」。爆発的な勢いをさらに加速するように「Toxic」、現体制後初のシングル「Freely」で有馬えみりが力強くリズミカルなシャウトで4人の馬力を上げた。最初のMCでメンバー同士や観客にこの場を共有していることを確かめるように、"緊張してる?"と笑顔で問う4人だったが、南 菜生は"どれだけ広い会場になっても、いつもとやることは変わらないと思っています"と言い、続くゾーンはさらにPassCodeのアグレッシヴでカオスな曲を連投。テンションを一気に上げるシャウトで始まり、メタリックにポップにとプログレッシヴに展開する「Taking you out」から、この2年ほどのライヴでも"動"のエンジンとなっている「Seize Approaching BRAND NEW ERA」、そしてダンサブルな「DIVE INTO THE LIGHT」に続く。「ONE STEP BEYOND」ではスクリーンに歌詞が映し出された。"とめどなく僕らなりの明日を築く"と歌うこの曲は、この日にとても似合う。会場の一体感も増したところでの中盤は、さらにピコピコ&ヘヴィな曲で攻める。「Future's near by」、高嶋 楓と有馬えみりがシンメトリーでシャウトを掛け合う「Club Kids Never Die」など、大きなステージでさらにダイナミックに魅せる曲から、PassCodeの武器や旨みが詰まった「rise in revolt」、新体制初シングルの「FLAVOR OF BLUE」へと、インディーズ時代からの曲や最新曲が並んだ。現在進行形のPassCodeでアップデートされアグレッシヴに暴れまくる曲に、レーザーや炎の特効もハマっている。

中盤にはPassCodeの物語やそれぞれの思いを語る映像が流れた。エモさが極まったところでさらに、南 菜生が歌詞を綴った「horoscope」へという流れは、この日本武道館という場所で、ひときわ美しく響く。正解はわからないけれど、希望を頼りに手探りで進んできたPassCodeの姿が重なる曲で、メンバーも涙を飲むように歌い上げたシーンが印象的だ。憂いの時を昇華するように「Remnants of my youth」、「STARRY SKY」へと晴れやかに展開していったのも、ドラマチックだった。

後半へ向かうMCではメンバーそれぞれがこの日への思いを語った。高嶋 楓は"去年は自分たちが想像していなかったような出来事がたくさん起こって。でも今日、こうやってたくさんの人が日本武道館に足を運んでくれて、PassCodeがPassCodeでいれることを実感した"という。大上陽奈子は"日本武道館のライヴを発表したときに、たくさんの人からメッセージを貰ったことが嬉しかった。今まで支えてくれた方へ、やっと恩返しができるひとつ目の場所かなと思った"とこの場を借りてお礼をしたいと笑顔を見せた。有馬えみりは"半年前に加入した有馬えみりです"と改めて自己紹介し、10代の頃からメタル・バンドでシャウトをしてきたけれど、日本のシーンでは女性でシャウト・ヴォーカルでやっていくのはなかなか難しいと感じていたときに、PassCodeに誘いを受けたと語った。"メンバーが替わった今を認めたら、過去を否定することになるかもと思う人もいるかもしれない。でもシャウトでは後悔させないのでこれからもよろしくお願いします"と力強く宣言。大きな拍手が会場を包む。そして南 菜生はステージから見える景色を味わいながら、"こうやってきてくれたみんなが、武道館に立っているPassCodeを観て、応援してて良かったなって思ってくれたり、事務所の社長がPassCodeを作ったことを肯定できたり、サウンド・プロデュースの平地(孝次)さんがPassCodeに曲を書いてくれることを誇れるようなグループでありたいと思ってやってきたけれど、本当に信じてくれてありがとうございます"と言い、"過去を置いていくとかじゃなくて、すべて背負って進んでいきたい。えみりが入ったこの4人のPassCode、最新がいつもかっこいいPassCodeとしてずっとステージで待っているので、安心してもらえたら"と続けた。武道館でライヴを行うことを宣言してから、この地を目指して走ってきた約2年。この日はその集大成ではあるけれど、同時にこの先もっと新しい世界へとPassCodeが進んでいくうえでのマイルストーンであることも伝えられた。

「Tonight」、「Same to you」などが並んだ終盤は、この日ならではのスペシャルなアレンジでも魅せた。「Anything New」、そしてラストの「Ray」では総勢10名のストリングスを背負って歌う。ラウドなバンドと重厚なストリングスによるサウンドは馴染みの曲を壮大にゴージャスに色づけて、祝祭感溢れるエンディングを迎えた。

アンコール後、今田夢菜在籍時のMVを使用した「ATLAS」では、今田夢菜の映像とステージの有馬えみりのヴォーカルがシンクロしてPassCodeの歴史を繋ぐ、エモーショナルなシーンにグッとくる。そして再び4人のコメントや始まりとなった大阪 堺の事務所を訪れた映像が流れた。この日最後の曲は、事前に多くのファンがスマホで録って送ってくれたシンガロングをフィーチャーした「It's you」で、日本武道館に大合唱を起こした。会場が高揚感に包まれ、銀テープが舞ったこの瞬間は、コロナ禍のライヴであることも忘れる時間として目に焼きついている。


[Setlist]
1. MISS UNLIMITED
2. Toxic
3. Freely
4. Taking you out
5. Seize Approaching BRAND NEW ERA
6. DIVE INTO THE LIGHT
7. ONE STEP BEYOND
8. Future's near by
9. Club Kids Never Die
10. rise in revolt
11. FLAVOR OF BLUE
12. horoscope
13. Remnants of my youth
14. STARRY SKY
15. Tonight
16. Same to you
17. Anything New
18. Ray
En1. ATLAS
En2. Seize the day!!
En3. It's you

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