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LIVE REPORT

オメでたい頭でなにより

2023.01.08 @EX THEATER ROPPONGI

Writer : 吉羽 さおり Photographer:ゆうと。

全18公演の全国ワンマン・ツアー"今 いくね くるね 3"のファイナル公演が、オメでたい頭でなによりのバンド名に相応しい末広がりな1月8日にEX THEATER ROPPONGIで開催された。この会場はもともと2020年春に予定していたワンマン・ツアー("オメでたい頭でなにより 全国ワンマンツアー2020 ~今 いくね くるね 2~")の東京公演が開催されるはずだった場所。コロナ禍でツアーが延期や中止となり、"楽しく、幸せに騒げる、底抜けに自由でオメでたいバンド"を信条に熱いライヴ空間を作り上げてきたオメでたい頭でなによりにとしては、思う活動ができない時間が続いてきた。

ライヴ自体は再開できたものの、"コロナ禍でのライヴ"は以前のようにステージとフロアとが一体となって汗だくでわちゃわちゃと楽しむ形とはほど遠く、バンドは試行錯誤を重ねながら、できないことを言い訳にしないステージを行ってきた経緯がある。そこで漏れ出た葛藤や怒りや皮肉や消耗感など、かつてないエモーションがパツパツに詰まった泥臭く人間味溢れる作品が、昨年9月にリリースした3rdアルバム『オメでたい頭でなにより3』でもあったわけだが、胸のつかえを吐き出して、ようやく迎えた全国ツアーである。開演前の赤飯(Vo)によるラジオ番組風"オールナイト転換"で、"コロナ禍でバンドを始めた意味を忘れてしまうこともあったが、今回のツアーはそれをしっかりと取り戻すものになっている"という話があったのは、5人の登場を今か今かと待ち望んでいるオメっ子(ファンの呼称)たちにとって最高の呼び水だ。しかも今回は、"声出しOK"の公演でもある。

3rdアルバム『オメでたい頭でなにより3』の幕開けの曲でもある「きなしゃんせ。」でスタートしたライヴ。ミト充(Dr)とmao(Ba)のグルーヴィなビートを軸にしたバンド・アンサンブルと、頭からテンション・マックスで縦横無尽にステージを駆けコール&レスポンスを起こしてく赤飯とぽにきんぐだむ(Gt/Vo)に、自然と歓声のボリュームが上がる。新年のライヴらしく「SHOW-GUTS」では会場全員で二礼二拍手一礼でブレイクダウンし、「乾杯トゥモロー」、「海老振り屋」、さらに早くもクライマックス感のある「スーパー銭湯~オメの湯~」へと展開していく、怒濤の展開の序盤。ニュー・アルバムの曲が盛り込まれたセットリストは攻め攻めだ。

ここに続いて、このツアーでいつの間にか新たな遊び(324がギター・ソロ前にドンと足を踏み鳴らすと、メンバーや観客がジャンプするという、ダチョウ倶楽部のネタ)が生まれた「四畳半フォークリフト」、バキバキにブルータルな「超クソデカマックスビッグ主語」、"3年間、一緒に歌うのを待っていた"(赤飯)という「NO MUSIC NO LIFE」と超重量級の曲を連投して、観客を休ませない。ぽにきんぐだむが"いつもならこのへんで小芝居が入るけど、今日はぶっ通しでやるので"と言えば、324がこれはどうしても言いたいと、17公演やってきたこのツアーで「推しごとメモリアル」のギター・ソロを一度も弾けてないと申し立てる。"17公演、(ギター・ソロで)ご当地のもの食べさせられてきた。ファイナルはさすがに弾きます"と宣言。「意味ない歌」、「プレシューズ」に続いた「推しごとメモリアル」で待望のギター・ソロを披露、しかも17公演ぶんの音量も添えてかつてない爆音でのソロを完遂した。オメでた(オメでたい頭でなにより)としてはネタ少なめのステージとはいえ、こうした小技を挟みながらとにかく曲をやっていくというボリューミーなライヴである。

そして、いよいよフロアを巻き込んでこういう遊びもできるようになってきたなというのが、「ダルマさんは転ばないっ」だろう。曲中のブレイクダウンでみんなでダルマさんが転んだをするという、ファンにはお馴染みの曲だ。今回は椅子ありの会場だが観客は思い思いに身体を動かし、または思いを叫び、曲の途中にもかかわらずどんどん脱線していくライヴの醍醐味を味わう。その楽しさから「We will luck you」で存分に拳を振ってステージとフロアの熱と気持ちをぶつけ合っていくカタルシスもまたいい。

赤飯はMCで、今回のツアーをやっていくなかで、自分がいかにこのコロナ禍で心に食らっていたかに気づいたと語る。みんなとバカをやって楽しく作り上げてきたライヴだが、そこでみんなに貰ってきた力がいかに大きかったかを痛感したという。弱気になっていたところもあったが、反撃の狼煙をここでもう一度上げていきたいと宣言した「ザ・レジスタンス」では、観客は再び拳を掲げて高らかに合唱する。観客の掛け声やシンガロングが加わったこの曲は、やはり強さを増す。また、観客の声が戻ってきたことで本来の強さ、輝きを増したのがもう1曲「オメでたい頭でなにより」だ。バンド名を冠し、オメでたい頭でなによりのライヴのあり方や"守りたい場所があるのならば"、"続け いつまでも"と願いを歌ったこの曲が、大きく響き渡る会場は眩しい。赤飯が最後に"ずっと続けたるわ"と絶叫すると、会場は拍手喝采で包まれた。ラストに据えたのは「すばらしい時代」。ニュー・アルバムの中ではシニカルに響いていた曲も、時を経て、ツアーで育っていくなかで、前向きなムードを帯びているようにも感じる。近い将来くるだろう正真正銘のライヴ、"すばらしい時代"がくるときまで歌い続けてほしい曲だ。

最後には、4月4日に新宿LOFTで"オメでたい頭でなにより ワンマンシリーズ2023「大寿祭」"を開催することも発表された。ライヴハウスでのライヴのあり方、オメでたい頭でなによりとしての遊び方をイチから、いやゼロから作り上げていきたいとぽにきんぐだむは語った。そして作り上げていったその先で、日の丸を見に行こう(日本武道館公演)と具体的な目標も提示した。この3年間を経験してのその発言は、とても重みがあるものだし、何よりパワフルだ。オメでたい頭でなによりにとって再起とも言えるこのツアーを完走したこと、それもポジティヴにファイナルを迎えたことは、確実に新しい道に繋がっている。


[Setlist]
1. きなしゃんせ。
2. SHOW-GUTS
3. 乾杯トゥモロー
4. 海老振り屋
5. スーパー銭湯~オメの湯~
6. 四畳半フォークリフト
7. 超クソデカマックスビッグ主語
8. NO MUSIC NO LIFE
9. 意味ない歌
10. プレシューズ
11. 推しごとメモリアル
12. 日出ズル場所
13. HAKUNA MATATA
14. 生霊の盆踊り
15. ダルマさんは転ばないっ
16. We will luck you
17. ザ・レジスタンス
18. あれこれそれどれ
19. オメでたい頭でなにより
20. すばらしい時代

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