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INTERVIEW

オメでたい頭でなにより

2022.04.02UPDATE

2022年04月号掲載

オメでたい頭でなにより

Member:赤飯(Vo) ぽにきんぐだむ(Gt/Vo) 324(Gt) mao(Ba) ミト充(Dr)

Interviewer:吉羽 さおり

オメでたい頭でなによりの初のカバー・アルバム『オメでたカバー横丁~一番街~』が、3月30日に配信リリースとなった。1960年代の「明日があるさ」や「三百六十五歩のマーチ」に始まり、2011年の「マル・マル・モリ・モリ!」まで昭和~平成の歌謡史、J-POPの曲たちから、メンバーの好きなものをピックアップして、新しい味つけを施した全9曲が並ぶ。ラウドやいろんなネタを盛り込んだ遊びで聴かせる面白さは、オメでたい頭でなによりらしいところだが、そのニッチな遊びに振り切るだけでない、曲へのリスペクトや新たな試み、カバーだからこそてらいなく見せることもできるバンドの一面、素の部分のようなものが露になっているのも今作の面白さだ。制作のエピソードを聞きながら、カバー・アルバムへの思いを語ってもらった。

-カバー・アルバムを作ろうというのは、いつ頃出てきたものだったんですか?

324:「金太の大冒険」を作り始めたときは確か、まだカバー・アルバムの話はなかったかな。

赤飯:全然ないですね。「金太の大冒険」が出たのが2020年の12月で、そのタイミングではカバー・アルバムを作ろうぜというのはなかったんです。昨年のツアー中?

ミト充:作り始めたのが9月とかそのくらい。夏、秋くらいでしょ。

-アルバムを聴いて一番に思ったのは、すごく原曲へのリスペクトがあるカバー・アルバムだなということでした。オメでたい頭でなによりがやるカバーということで、もっとおふざけ満載なのかと思いきや──

赤飯:「マル・マル・モリ・モリ!」を聴いてもそう思っていただけるならよかったです(笑)。

-遊びももちろんたっぷりなんですけど(笑)。ただ、ゴリゴリにラウド・アレンジするということでもないし、楽曲の面白さを追求して、オメでたい頭でなによりはこう解釈しますというものになって、バンドとしても表現の振り幅が大きくなったカバー・アルバムだという印象です。選曲については、どのあたりの曲から決まっていった感じですか?

324:「WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント~」とか、モーニング娘。の「恋愛レボリューション21」あたりが早かった気がします、これは絶対に入れたいっていう。「三百六十五歩のマーチ」とかは結構あとのほうだったかな。

ぽにきんぐだむ:コロナ禍のライヴでできること、できないことを考えつつでしたね。例えば「三百六十五歩のマーチ」だったら、ライヴでも足踏みをして行進するのは、できないことじゃないと思うので。そんな感じで"ライヴ"というところも考えていましたね。

324:たしかにライヴができないなりに、ライヴの光景も考えつつの制作ではあったかもしれないですね。

-やはり制作のうえでは、ライヴというのは大きなものなんですね。

324:そうですね。ただ今までほどメインで"ライヴ"というものを考えているわけではないんですよ。コロナ禍でどうしても今までとは状況が違うし。モチベーションの一番重要なところが今まではライヴだったけど、そうではなくなってしまったから。

赤飯:ライヴでの光景に感動してそれを広めていきたいというのが、僕のモチベーションの根源で。それを形にするのがこのオメでたい頭でなによりだと定義づけて活動していたので、コロナ禍でその表現する場が物理的に奪われてしまって、アウトプットをすることが難しくなってきてしまったんです。僕自身、理想の形にすることにモチベーションを感じるタイプなので。その理想がそもそも形にできないと突きつけられた状況下で、じゃあ何をしたらいいの? ってモチベーションの行き場をなくしてしまったのが、この2年間やったんですよね。今回のカバー・アルバムは、一度原点に立ち返るじゃないですけど、シンプルに自分の好きなものに向き合い直すとか。あとは、バンドとしての曲作りの方法を改めて組み直す意味合いも、結果的に強くなったなと思っているんです。きっかけとしては、ディレクターが"1回、肩の力を抜いて好きなもの単純にやってみなよ"って提案をしてくれたことから始まっていて。

-好きなものに改めて触れる、カバーするというのが、いい機会になった。

赤飯:完全に、行き詰まっていたんですよね。これまでは曲作り自体、この5人でしかやってこなかったので、5人だけでぐーっと集中していった結果、"真っ暗で何も見えん"みたいになっちゃって(笑)。1回リセットする意味でも、肩の力を抜いてやれることはないかというときに、カバーをやってみようかとなって、今回はakkinさんに編曲という形で入ってもらったんです。楽曲提供というのはこれまでもあったんですけど、外部の方に関わってもらって一緒に曲作りや編曲をするのは一切やってこなかったので、そのスタートがオリジナルの曲じゃなくてカバーだったのは良かったなと思って。

-akkinさんとの曲が3曲ありますが、結構一緒に作っていくという感じだったんですか。

赤飯:曲によりけりなんですけど、自分がこういうふうに作っていきたいというものをakkinさんに共有して、話をしながら形にしてもらったのが「恋愛レボリューション21」と「君がいるだけで」ですね。「WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント~」は自分たちでやっていくなかで、どうしたらいいんやろうなってなったときに、"先生!"って感じでアドバイスをいただくことができたので。

-いい関わり合いができた感じですね。

赤飯:うちらの考え方を第一に尊重してくださって、そのうえでアドバイスをいただいたので、勉強にもなってますしね。

-「WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント~」などは、オメでたい頭でなによりはこんなふうに解釈するのかというのが面白かったですね。原曲はビートが基軸になっている曲だと思うんですけど。

ぽにきんぐだむ:そうなんですよね、それが難しかった。

324:原曲を改めて聴くと、こんなに尖った曲だったんだなって。

ぽにきんぐだむ:分解して聴いてみると、マジかみたいな発見がいろいろあって。

-ジャングル・ビートが取り入れられたJ-POPというのが前提にあったと思うんですね。そこをオメでたい頭でなによりは熱い青春の歌と捉えてやっていくという。エモーショナルな歌や哀愁感がよりフィーチャーされていて。

赤飯:たしかにその解釈で作ったから、この形になったのかもしれないですね。この曲、熱い曲だよねっていうのが一番前にあって、ジャングル・ビートの曲だからというのはあとから気づいたみたいな感じで。この曲をやってるときは、勝手に物語を想定してたんです。最初は、みんなでキャンプファイアーの火を囲んでポロポロ~ンとやっているところから始まって、そこからいきなり謎の部族に襲われて──

ミト充:急だよね(笑)。

324:そこで民族っぽいものというのが出てきた。

赤飯:で、その部族の儀式にまつりあげられそうになるけど、最終的にはみんな楽しくわーってなって、で、夢オチでしたみたいな。そういう物語を想定して作ったのがあって。

-曲の物語を考えていくんですね。

324:カバーは、まずは原曲があるので。その曲のどの要素を大事にするか、あとは"オメでたい頭でなによりがやるカバー"ということで、どの要素を壊すか、そのバランスですかね。どれを生かして、どれを面白く破壊して再構築するかというのは、普通のカバーとは違う考え方でやったかなと思います。

-まずは原曲をじっくり聴きこむことからスタートですか。

赤飯:身体に馴染んでいるイメージを膨らませていった感じが結構強いんじゃないかな?

324:聴き込まなくても、わかってるような曲ばっかりだからね。

赤飯:そういえばここどうだったっけというのを、リファレンス的に検証することはあったんですけど。ほとんどの曲は、もともと持っているイメージのまま作り始めてますね。激ロック的なところで話していくと、「三百六十五歩のマーチ」の、もともとのマーチのリズムと、MARILYN MANSONの「The Beautiful People」は絶対ハマるよなって(笑)。というところから作っていったら、案の定ハマりが良かったんです。

324:ハマったね。

赤飯:チータ(水前寺清子)・ミーツ・マンソン(MARILYN MANSON)ということで。アレンジ面もマンソン風味を拝借して──実際にマンソンも出てくるんですけど。そういうのも入れつつも、原曲へのリスペクトも大前提で。僕は歌謡曲が好きなので、原曲のニュアンスやもともとの節回し、歌い方って軸は絶対に崩さんぞというのでやりましたね。

ミト充:「三百六十五歩のマーチ」は、俺は下手したらオメでた(オメでたい頭でなにより)史上、一番レコーディングに手間取ったんじゃないかな。

ぽにきんぐだむ:8時間くらいひとりでやってたよね。

ミト充:「三百六十五歩のマーチ」と「うしろゆびさされ組」を同じ日に録っていたんです。今回はデモ作りを赤飯とぽにきんぐだむ、324がメインでやっているんですけど、この曲をこう表現したいというのがデモ段階ではっきりとあったんですよ。それをどう料理するかに手こずったのが「三百六十五歩のマーチ」で。話に出たマンソン感と、原曲にはマーチというテーマがあるからそこも残したいしって。

324:今回は、赤飯からの注文がだいぶ増えたよね。

mao:いろいろ出てきたよね。

赤飯:今までは極端に言えば、自分が歌えていたらいいやっていう感覚だったんです。でも一個一個めっちゃ口出すようになったので、すげぇ鬱陶しがられてます(笑)。

ぽにきんぐだむ:制作のスタイルとしても、デモの段階でほぼ完成まで持っていくように作り変えたんです。これまではこんな感じのビートでというくらいだったものも、フィルのひとつひとつからタイム感、入れ方もすべてデモ段階で組んで渡しているんですよね。"それ通りやって"っていう。

324:シンバルの音ひとつまでこだわりだしてね(笑)。

ミト充:なので、スネアの音色作りもいろいろ試しましたね。今回は初めてドラムテックさんに入ってもらったんですけど。akkinさんアレンジの曲とかは、特にサウンドメイクも一緒にやってもらって、初めての試みはありましたね。

-この期間にいろんな制作の試みがあったようですね。

赤飯:満足度は上がっているので。そういう意味でも成長したんじゃないかと思いますね。

ぽにきんぐだむ:ミックスにしてもこのデモの音にしてくださいみたいなのもあったしね(笑)。"これを作りたいので"って。それくらい突き詰めてデモを作っています。

赤飯:なんなら「WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント~」の頭の歌は、デモをそのまま使ってますね。僕が宅録でやったものが枯れている感じが出ていて、スタジオで録るとどうしてもきれいになるので、どうやってもしっくりとこなくて。デモのものを使ってくださいとなりました。