INTERVIEW
オメでたい頭でなにより
2020.04.28UPDATE
2020年04月号掲載
Member:赤飯(Vo) ぽにきんぐだむ(Gt/Vo) 324(Gt) mao(Ba) ミト充(Dr)
Interviewer:吉羽 さおり
オメでたい頭でなによりのメジャー2ndアルバム『オメでたい頭でなにより2』が完成した。昨年夏にリリースしたシングル『乾杯トゥモロー』など、ともに、一生懸命、いい時を分かち合う、明るくてストロングな曲はもちろん、これぞオメでたい頭でなによりという言葉遊びや、昭和のカルチャーで育ってきた者ならばニヤニヤと笑ってしまうネタを盛り込んだ曲、また音楽ファン、ラウド・ファンを唸らせる曲が揃う。笑いの琴線だけでない、今作では特に真摯な思いや喜怒哀楽が音や言葉になっているが、それがよりオメでたい頭でなによりとしてがっちりと構築された。抜群のキャッチーさと、コアな両極を突き詰めたアルバムだ。
-まさに進化と深化の激しい2ndアルバム『オメでたい頭でなにより2』が完成しましたね。
赤飯:良かったです。質問なんですけど......大丈夫ですかね?
ぽにきんぐだむ:相変わらず情緒が不安定な内容ですけど(笑)。
-はい、曲を聴くたびに驚きはありましたけどね。ここまでやるかという相変わらずネタの宝庫でもあるし、そしてサウンド面ではより幅広く且つディープに突き詰められたアルバムだと思います。1曲目の「頑張っていきまっしょい」ですが、"心無いウィルス 蔓延ってんだ"など歌詞の内容を見る限りかなり直近で作られた曲ですよね。
赤飯:そうです。まず、曲のモチーフというかこういう曲にしたいねというのが12月の末頃にあったんです。そこで僕と324でタネとなるものを作っていったんですけど、どうしようか、ああしようかとすごい時間が経っていって。ようやく固まったのが2月末から3月頭だったんです。
-その12月の段階からは世の中的にはだいぶ変化をしてしまいましたよね。そこから曲としてどう転がっていったんですか。
赤飯:歌詞は、言いたいことは決まっているのにどうアウトプットするのがいいのか、ずっと迷っていたんです。それで、この世相に触れたときに、やっと見えてきたというか。自然と、ここで何を言うべきかが定まってこの形になったんです。この"頑張っていきまっしょい"という言葉は、そもそも軸にあったんですよ。オメでたい頭でなによりでは、ライヴを始める前にみんなで円陣を組んで"頑張っていきまっしょい"ってやるんです。これは、今はわからないですけど昔モーニング娘。がライヴが始まる前にやっていたもので。僕はモーヲタだったので、何かと"頑張っていきまっしょい"という言葉で気合を入れるというのを10代からやってて。それを、ここでやりたいなって思ったんです。
-その言葉がハマって、ぐっと熱が高まる曲になったわけですね。
赤飯:これを言いたかった曲なんです。ただこの"頑張れ"っていう言葉は、今、決してポジティヴに受け取られる時代ではないじゃないですか。病気の人や心が参っている人に頑張れって言って、余計に追い詰めてしまうこともあるし。でも僕はここで"頑張れ"という言葉を、もっと気合を入れなさいとか、まだまだあなたは努力が足りませんという意味では使っていなくて。お互いにうまくいくといいよね、あなたがうまくいくことを祈っていますよ、という意味合いで使いたいなと。みんなに言いたいんです。これは昔から言ってるんですけど、そういう意味で"頑張る"という言葉は全然悪い言葉じゃないんだと。今一度、みんながうまくいくよう祈ってますというメッセージを込めたいなと思って──って、俺なんかすごい普通のこと言ってる(笑)!
-いいじゃないですか(笑)。それがアルバムの幕開けの曲として晴れやかで大事な1曲になって。しかもこの曲では、いろんなゲストの方もコーラスで登場していますね。
赤飯:オメでたい頭でなによりを始めてたくさんの人と繋がりましたけど、その中でも特に濃い縁の方たちを呼ばせてもらって。みんなでレコーディングをしたときに改めて、こんなにいろんな人と繋がることができたのは嬉しいなと思いましたね。
-324さんは「頑張っていきまっしょい」はどういうイメージで作っていたんですか。
324:赤飯から、"こういうイメージで"というのがわりと明確にあったんですよね。それを俺なりにどう膨らませようかな、というところで。最初はすごくいなたい感じのアレンジだったよね?
赤飯:そうかもしれない。
324:それをもうちょっと掘り下げていって、あとは最終的に人数感が出るものがいいということで。思っていたところと、プラスアルファいろんなものが乗っかって、化学反応が起きた感じがあるなと思いますね。
赤飯:今回は、324が作ってくれたものに対してメロと歌詞を同時にはめていくという作業を初めてやったんですよ。
324:時間がかかったぶん、すべての部分にちゃんとこだわりがある。
赤飯:だいぶディテールにはこだわってますよ。
324:12月末くらいから作り始めたんですけど、ずっとうちのスタジオに赤飯に通ってもらって、ふたりでああでもないこうでもないとやりながら......今で言うとあれは濃厚接触でしたね。
ミト充:やめなさい。
324:ずーっと濃厚接触でした。
-そうやってできあがって、これはアルバムの1曲目だろうと?
ぽにきんぐだむ:最初は違ったんですよ。当初の予定では、「今いくね」から「踊る世間もええじゃないか」で始まっていたんです。でも今回の新型コロナウイルスの件もあって、「頑張っていきまっしょい」に集まって参加してくれた仲間たちもいたし、これがメッセージ的にも一番強い曲になったので。1曲目だろうと。
赤飯:まず、聴いてみようとなったときにアルバムのド頭の曲がやっぱり一番聴かれるじゃないですか。それなら一番伝えたいことを頭に持ってくるべきだなと思ったので。
ぽにきんぐだむ:繰り上げになりました。
-たしかにいただいた音源が、不思議な並びではあるなとは思ってました。そういうことでしたか。
赤飯:ある意味「頑張っていきまっしょい」は、サウンドも含めてオメでたい頭でなによりっぽくない感じはあるんですけど、2曲目からいつもの感じに戻ってくるというか(笑)。"毎度~"って感じになるので。
-その「踊る世間もええじゃないか」ですが、初めに歌詞をパラパラと見ていたら、のっけから"踊ったって ええじゃないか (大豆)"とあって、"ダイズ?"(正しくは、大豆と書いて"そい"というコール)という感じだったんですけど(笑)。どんなイメージだったんですか。
ミト充:はははは(笑)。
mao:そうですよね(笑)。もともとはなんの意味もなかったんですよ。"そい (大豆) じょい (喜)"って言っただけっていうか。
赤飯:口当たり良く、"そい! じょい!"って言ってただけで。
324:それで、"そい!"って言ったところに、"大豆"って当てれば面白いんじゃない? じゃあそのあとは、"じょい"、"喜ぶ"にすればいいんじゃない? っていうのでね。
ぽにきんぐだむ:たしかに、普通に歌詞だけ読むと意味わからないですけどね。
赤飯:あとは恒例の昭和ネタも入ってます。
-祭囃子もあって、和のテイストがふんだんのロック・サウンドで。曲の後半は、リズムの緩急や遊びもあって、これはライヴでの画が見えますね。
324:作った当初から、テンポを速くしようぜというのは面白いから採用ってなっていたんですけど。その速くしたものを、"もっと速く、もっといける、まだいける!"ってギリギリのところまで速くしていて。
ミト充:ドラム、どこまで叩ける? って聞かれたからね。
赤飯:ライヴはそのセクションで、スピードを上げたり、落としたりしてフロアで遊べる曲だなと思ったので。というのを、ゆくゆくはしていきたい曲です。
-盛り上がりそうですよね。また、モチーフになったええじゃないか運動、この民衆が起こしていくムーヴメントって結構このバンドに通じるところがありますよね。
赤飯:そうですね。これはお察しの通り、ええじゃないか運動のイメージなんですけど。みんなでいろんなことをええじゃないかと、いい意味で開き直ろうぜという感じで。もともとは、どのタイミングで言い出したんだっけ?
ぽにきんぐだむ:去年か一昨年だったか、打首(打首獄門同好会)のツアーに連れていってもらったときに、秋田のライヴでお客さんが、打首をアンコールで呼び込むときに秋田の祭りの節みたいなもので、やっていたんですよ。それがすごく印象的で。聴いたときに、ええじゃないかのフレーズが出てきて。赤飯がそれ作ってよ、って言ってた気がする。
赤飯:あ、そっか!
324:それが後々にこうなった感じだね。うまくハマったよね。お祭りソングはもともと作りたかったし。