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LIVE REPORT

lynch.

2023.04.23 @KT Zepp Yokohama

Writer : 杉江 由紀 Photographer:マツモトユウ

あの頃のlynch.はもうここにいない。あのときのlynch.もここにはいない。ただし、今ここに"再生"して第2章へと突入したlynch.は、かつてのどの時期と比べてもたくましく骨太であり、そのうえ奥深い豊かさと美しさも持った、もはや誰も追いつくことのできない領域を先鋭的なスタンスで闊歩する、頼もしいバンドへ進化したと言えるはず。

思えば、2021年末にlynch.が一時活休期間に入ったのち、それぞれのメンバーが展開した個人活動は非常に多彩だった。葉月(Vo)がソロ・アーティスト、HAZUKIとして動き出し、玲央(Gt)は古巣 keinでの活動を復活させ、悠介(Gt)のユニット 健康が始動して、明徳(Ba)はVIVACEでの活動とともにHAZUKIソロのサポートにいそしみ、晁直(Dr)も先輩バンドであるdeadmanを、楽曲制作やレコーディングも含めてサポートするようになった、というその事実。lynch.というバンドにとって、それがいい意味での大きな変革をもたらす1要因に繋がったことは疑う余地もない。

そのあと、2022年11月には初の挑戦にして長年の目標だった日本武道館単独公演(["THE FATAL HOUR HAS COME" AT 日本武道館])をもってlynch.が活動を再開したことは記憶に新しいが、今春には3年ぶりのオリジナル・アルバムとして『REBORN』が発表され、その内容が、これまでになかった"メンバー5人がそれぞれ2曲ずつ楽曲を書く"というアプローチから生み出された、斬新にして秀逸な内容に仕上がっていたことを知った段階で、lynch.がバンドとしての明確な第2期を迎えたことを、本当の意味で理解した人々もきっと多かったのではなかろうか。

当然、3月から始まった"TOUR'23 「REBORN」"でも、今回のアルバムで打ち出されたlynch.の新たな可能性は、存分なほど提示されていくことになった。晁直作曲による攻撃力満載な「THE FORBIDDEN DOOR」や、悠介のセンスフルな音に対するこだわりが生きた「CANDY」、明徳のスラップが曲を牽引する「NIHIL」、玲央にとってのルーツ・ミュージックが色濃く滲む「PRAGMA」、葉月があえて王道から外れたラインで切れ味のいい音を凝縮させたという「CALLING ME」など、アルバム『REBORN』の収録曲たちが思っていた以上の大活躍ぶりを続々と見せていく様は、痛快でさえあったくらいだ。

"最後にもう1曲いいですか。これは『REBORN』で生まれた、新たなる俺たちの「約束の歌」です。歌える人はぜひ一緒に歌ってください!"(葉月)
本編ラストでこの言葉を受け演奏されたのは、アルバムの冒頭に位置していた「ECLIPSE」。今回のツアーはlynch.にとって声出し解禁のツアーでもあったせいか、ここからアンコールにかけての流れが非常にエモかった点も特筆すべきところで、アンコールでは前オリジナル・アルバム『ULTIMA』の収録曲「EUREKA」、ダブル・アンコールではlynch.の基本精神を込めた名曲「ADORE」が、いずれも盛大なオーディエンスによるシンガロングによって鮮やかに彩られた次第である。

"こんなに歴史の長いバンドを、この5人で未だにこんな美しいかたちで続けられているのは誇りだし、続けられているのはみなさんのおかげです。本当にありがとう! また次の機会を楽しみにしていてください。ずっと続けていきましょう、「これ」を!"(葉月)
"再生"を果たし、かつてのどの時期と比べてもたくましく骨太であり、そのうえ奥深い豊かさと美しさも持ったlynch.の、期待すべき第2章。それはまだ始まったばかりだ――。


[Setlist]
1. CRIME
2. THE FORBIDDEN DOOR
3. CREATURE
4. EVOKE
5. CANDY
6. ANGEL DUST
7. NIHIL
8. IDOL
9. BLEU
10. PRAGMA
11. SINK
12. AMBIVALENT IDEAL
13. GALLOWS
14. EVIDENCE
15. CALLING ME
16. OBVIOUS
17. pulse_
18. ECLIPSE
En1. INVINCIBLE
En2. DAMNED
En3. -273.15℃
En4. EUREKA
W En. ADORE

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