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INTERVIEW

lynch.

2020.03.17UPDATE

2020年03月号掲載

lynch.

Member:葉月(Vo) 玲央(Gt) 悠介(Gt) 明徳(Ba) 晁直(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

東の国で誰も見たことがない星が西の空に見えたとき、賢者たちが新たな時代の訪れを察知したように。lynch.が15周年を迎え発表する渾身のアルバム『ULTIMA』は、彼ら自身にとってのベツレヘムの星のような存在感と役割を持った作品へと仕上がったと言えるのではなかろうか。もはやlynch.のことを語ろうとする場合、ジャンルだの些細なボーダーラインだのについて考慮する必要などは一切ない。lynch.はlynch.であって、lynch.以外の何者でもないのだ。そんな彼らにとって現時点における究極を具現化したという今作は、間違いなく近未来へと向けた確かな道しるべとなっていくに違いない。

-ついにlynch.が激ロックの表紙を飾る日がやって参りました。いち音楽メディア関係者としても、いちファンとしても、これは実に喜ばしいことだと感じておりますよ。

葉月:ありがとうございます。やっぱ、激ロックとしてはお化粧してるバンドの表紙は珍しいんですかね(笑)。

-過去に例がないわけではないですけれど、何よりもlynch.がこの音、この見せ方、この姿勢を貫いてきたなかで今回アルバム『ULTIMA』を完成させ、そのタイミングで本誌表紙を飾ったことに大きな意味と意義があるように感じております。しかも、このアルバム・タイトルがなんとも潔くて素晴らしいです。自ら"ULTIMA"と言い切るからには、それだけの自信なり確証をもって世に呈示する作品である、ということですものね。

玲央:このタイトルは、アルバムの制作がほぼ終わりかけの頃に葉月から"今回はこの言葉が一番ぴったりくるのでこれにしたいです"って、メンバーみんなに連絡があったんですよ。もちろん、その時点で全員納得でこれに決まりました。

葉月:でも、実はそこまでの深い意味はないんですよね。意味合いとしても厳密にはULTIMATEじゃないから、"ULTIMA"だと究極とかそういうわけでもなくて、"最後の~"とかそういう意味ですから。まぁ、自分の中ではULTIMATEの略くらいの気持ちでつけているのは確かですけど、それも"現時点での自分たちにとっての究極だから、このタイトルで行こうか"くらいのスタンスですね。逆に、"ULTIMA"としたことでこれが最後とか、この先がもうないみたいに聞えちゃうのが多少心配だったくらいです。

-なるほど、そういうことでしたか。

葉月:最初は、"ULTRA"にしようとも思っていたんですよ。ただ、それだと自分にとっては響きとしてしっくり来なかったのと、他のアーティストさんでそういうタイトルのアルバムもありますから、"ULTIMA"だったらちょっと見た目は似てるし、意味としてもこれはこれでいいかなって(笑)。

-では、ここからは『ULTIMA』が葉月さんのおっしゃられた"現時点での自分たちにとっての究極"であることを前提としながら、みなさんそれぞれにとって今作のどんなところがULTIMAだと感じているのか、ということをぜひうかがいたいです。

玲央:アルバム制作をしていたときに、葉月から"今度のアー写のイメージは近未来的なサイバーパンクな感じにしたい"というメールを貰って、そのあとタイトルが"ULTIMA"と決まる前に今回の写真撮影をしたんですよ。さらにそこからリード・チューン「XERO」のMV撮影もしたんですが、今までlynch.でここまで音と視覚的なところを統一した世界観で色づけをしていったことは、なかった気がするんですよね。すでにやっていそうで、意外とやっていなかったと言いますか。そう考えると、『ULTIMA』はアートワークなどもすべて含めてトータルで今の僕らが伝えたいことをリンクさせながら、それを明確に具現化した作品に仕上げられたんじゃないかと思います。

晁直:『ULTIMA』がどういうアルバムになっているのか、という意味でその質問に答えるとするなら、これは若手に聴かせたいかな。こんな40歳前後のオッサンたちがこれだけカッコいいものを作りましたよ、と(笑)。だから、君たちもうちょっと頑張ってよ! という気持ちはあります。まぁ、最近は止まっちゃったりするバンドもいっぱいいるし。なかなかあとが続いてきていない状況だから、若手に聴かせたいって思うわけですよ。かと言って、別にうちらが引っ張っていくとかそういうことじゃないんですけどね。年齢関係なく、カッコいいものは作れますよっていうことが伝わったらいいかなと思います。

明徳:このアルバムのULTIMAなところは、チューニングがULTIMAっす。

葉月:あぁ、それはあるね。

明徳:今までで一番、低くなってるんですよ。

-それは、低域音の迫力を増すために意図して狙ったことだったのでしょうか。

葉月:ということではなく、しょうがなくですね。リード・チューンになった「XERO」を作ったとき、イントロのリフの部分が極端に低くなったんですよ。具体的にはローF♯かな。

玲央:その曲の一番低い音がローF♯だったってことですね。

葉月:さすがにローF♯までいっちゃうと、通常のベースと比べると1オクターブくらい下ですから。もう、ベースとしては機能しないんですよ。ちゃんと鳴らないし、聴こえないっていう。楽器の使い方としてはそもそも間違ってるから、そりゃそうなって当たり前なんですけどね(苦笑)。ただ、「XERO」に関しては僕の歌のキーに合わせて作ったサビがまず先にできていて、それありきでどうしてもこのリフと繋げたかったから、無理やりにでもチューニングを下げないといけなかったんです。この曲で1オクターブ上げてしまうと、音が軽くなっちゃうので。それで、"ちょっと、これでできる?"っていう相談を曲として構成し始める前に(明徳に対して)しました。

-その際の、明徳さんの反応は?

葉月:即、"いや、これはちょっとヤメといたほうがいいっすね"って言われましたよ。でも、"なんとかなるだろ!"と思ってそのまま作っちゃいました(笑)。

-明徳さんとしては、相当な無理難題をふっかけられたことになってしまったわけですね(笑)。そこからは、いかにして「XERO」と向きあっていくことになったのでしょう。

明徳:アプローチの仕方としては、楽器を改造することにしました。僕、自分のベースは自分で作ってるんですよ。

-そのことは昨年の秋に発表されたライヴ映像作品『HALL TOUR' 19「Xlll-THE LEAVE SCARS ON FILM-」』の中の、ドキュメント映像でも触れられていましたね。なんでも、パーツまでご自身で製作されているというこだわりようなのだとか。

明徳:ええ。今回の場合はまたマニアックな話にはなっちゃいますけど、ピックアップというベースに組み込まれているマイクの位置を、めっちゃズラして対応しました。最初はそのまま弾いてたんですよ。でも、録りながら"これは絶対ムリだな"となったので、音が飽和しなくなるまでボディを削ってピックアップを付け替えました。

-なんという匠の技!

明徳:諦めないで改造して良かったです。チューニングとしてはこれだけ低くても、ただうるさいとかヘヴィっていうだけじゃなく、ここまでちゃんと音楽として聴ける音ってそうないんじゃないかと思いますよ。

-間違いありませんね。ロー感は満載ながらも、すべての音がしっかり聴こえてきます。

明徳:ヘヴィにすることを目的に音を低くしたわけではなくて、歌のキーだったり、メロディだったり、あの新しいリフの雰囲気を最大限に生かすためにこうする必要があった、っていうことですからね。無理はしましたけど、上手くいきました。

-となると、今後はライヴでも「XERO」では"この曲のために身を削った"ベースが登場することになるわけですね?

明徳:そういうことになります(笑)。