FEATURE
lynch.
2014.09.09UPDATE
2014年09月号掲載
Writer 荒金 良介
実際の現場で観た生のライヴと、そのあとにDVD化されたライヴ映像を比較すると、同じステージでも違うパフォーマンスを観ているような気持ちに陥ることは多々ある。大別すると、ライヴとDVDを切り離し、作り込んだ映像にしているケースもあれば、ライヴの質感を再現したDVDにしているものの、やはり現場で味わった肌感覚とは異なる映像になってるケースが存在する。どちらが良い悪いの話ではなく、ライヴを映像化する以上はそこにアーティストやレコード会社の意志は介在するわけで、それを込みでこちらも楽しんでいる。
lynch.が今年4月23日にSHIBUYA-AXでライヴを行った。そのワンマン・ライヴの模様を収めたDVD『TOUR'14「TO THE GALLOWS」-ABSOLUTE XANADU-04.23 SHIBUYA-AX』がリリースされる。なお、初回限定版は完全ノーカット映像、またメンバーによるスペシャル副音声付き仕様になっている。この日のライヴは私自身現場で観ているが、原稿を書くために完全ノーカット映像を追体験した。そして最初に抱いた感想は、先述した2パターンのどちらにも当てはまらないということ。実際のライヴに限りなく近い映像に仕上がっているのだ。それは初回限定版だけの話になってしまうが、完全ノーカット収録という点が大きい。どうしても映像になると、収録時間の関係や、観る側の立場を配慮して、余計な曲間などはカットされてしまう。だが、省いてもまったく問題ないだろうと思われるシーンこそ、よりライヴを感じられる瞬間だったりする。無駄なところに宝は埋もれているものだ。ライヴがその場で起きるドキュメントならば、映像も同じであって欲しいと密かに願う。今作はその意味でもぜひ初回限定版をお薦めしたい。アンコールに応え、葉月(Vo)がステージに現れた際に"さっきキミたちが呼んでくれた時間も入れようと思ってるしさ。生のものを伝えます!"と言い切った。本編を終え、メンバーがステージを去り、観客がアンコールを求めるあの時間も漏れなく収録されている。 知ってる人も多いと思うが、今年の5月末にSHIBUYA-AXは13年半という歴史に終止符を打った。このワンマン・ライヴはlynch.にとって最後のAXのステージということもあり、特別な感情があったに違いない。その辺りは葉月のMCでも触れているので、割愛させてもらう。ただ、このSHIBUYA-AXはバンドにとってずっと憧れの場所だった。この会場を満員にすることが1つの夢であり、目標だった。その夢を叶えた場所が閉館という運命を辿る。その事実を受け入れたくない気持ちと、受け入れて前に進まなければいけないという複雑な感情が大爆発していた。映像にはパイロの特殊効果から、派手なライティング、雪を降らせる演出、思わぬハプニングまで、バンド側が隠したいと思われるようなシーンまで入っている。その赤裸々ぶりもAXマジックとして、観る方も存分に楽しめる。また、ライヴ自体も4月に出たばかりの最新作『GALLOWS』からの新曲を含め、全32曲約2時間半(初回版のみ)に渡る内容だった。最新にして集大成のような濃密さで、改めて見返してもすごいの1言に尽きる。それと、ここで葉月は満員の観客に向かって、ある1つの約束をした。夢を叶えたこのAXでどうしても言っておきたかったのだろう。あのときの歓喜のどよめきは未だに生々しく覚えている。日本武道館に連れて行く、と。lynch.は辿ってきた道のりを振り返ることなく、さらなる頂上を目指すことをここで誓った。その思いを秘めた、ラストSHIBUYA-AX公演はやはり特別だったと言わざるを得ない。
lynch.
『TOUR'14「TO THE GALLOWS」-ABSOLUTE XANADU-04.23 SHIBUYA-AX』
[KING RECORDS]
【初回限定版】
KIBM-90452~3 ¥5,926(税別)
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【通常版】
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