LIVE REPORT
lynch.
2023.12.12 ＠Spotify O-EAST
Writer : 内堀 文佳 Photographer：マツモトユウ
特定の作品をタイトルに掲げず、これまでの約19年の間に生まれた楽曲から自由にセットリストが組まれた今回の"無印ツアー"こと"TOUR'23 THE CRAVING BELIEVERS"。作品名こそ冠してはいないが、この日超満員のSpotify O-EASTで、ステージ後方の壁いっぱいに大きくバンドのロゴが書かれたバックドロップを背負って行われたライヴを目にして、これはlynch.そのものが掲げられているのだとはっきり理解した。
1曲目「EVOKE」から、アグレッシヴなサウンドに特大のシンガロングでステージ上の5人も会場に詰めかけた超満員の観客もテンション・マックス。明徳（Ba）のベース・ストラップの金具が折れるというハプニングも、いかに場内の熱が開幕から大爆発していたかを物語っていたし、紆余曲折を経て19周年を迎えようとしているlynch.の勢いがそれで緩められるわけもない。2005年リリースの1stアルバム『greedy dead souls』にも収録されている「59.」をはじめ、発表以来長く愛され続けている楽曲たちでますますヒートアップしていく。意外なことに、O-EASTでゲストなどのいない純粋なワンマンを行うのは今回が初だというMCを挟みつつ、"めちゃめちゃ良くなる気しかしないんですけど！ もう楽しむ気でしか来てないんですけどいいですか！？"という葉月（Vo）の煽りから「EVILLY」を投下。葉月の動きに合わせてフロア全員が一糸乱れぬ振りを決める光景は、まさにlynch.とファンがこれまで築き上げてきた関係の賜物だ。
悠介（Gt）の浮遊感たっぷりのギターが前面に押し出され、玲央（Gt）がその音の厚みをしっかりと支える「LIE」や、葉月の歌声を聴かせる、クールな色気を纏った「ENVY」、コントラストの効いた照明演出で5人のシルエットが妖しく浮かび上がるなか、明徳と晁直（Dr）によるリズム隊がグルーヴを先導する「MAZE」など、ラウドでヘヴィなだけでないlynch.の魅力に酔いしれることができたこのセクション。それに続き、静と動が見事なバランスで織り交ぜられた「THE WHIRL」から、"ようこそ、処刑台へ！！！"（葉月）の宣告で「GALLOWS」、そして「INVADER」、「OBVIOUS」が激しく畳み掛けられる。この瞬間を全力で楽しんでいるのだと、メンバーは演奏、パフォーマンスで、観客はヘドバンや振り上げる腕、張り上げる声で互いにぶつけ合う。
"今lynch.やりながらもさ、みんなそれぞれいろんなプロジェクトやったり、自分の好きな音楽に深く深くまで潜るような生き方をしてとても充実しているんですけど、このlynch.に、このバンドに所属していることをマジで誇りに思う、ありがとう！ めちゃくちゃかっこいいよな！？ 自慢のバンドですよろしく！ そして自慢のファンです、ありがとう！"
葉月のストレートな言葉が届けられると、「pulse_」、「LIGHTNING」で本編ラスト・スパートへ。その激流から、最後を飾る「A FOOL」の美しい旋律、そして悠介の繊細な舞で再びドラマチックな緩急が生まれ、深い深い余韻を残していった。
「unknown lost a beauty」からまた怒濤の猛攻が開始されたアンコール。「A GLEAM IN EYE」で葉月が観客にマイクを向けると、残るエネルギーすべてを出し切ろうと爆音の合唱が発生する。葉月が笑顔で見渡すその景色を作り出した、フロアを埋め尽くすファンたちにダブル・アンコールとして"超スーパー・ラヴ・ソング"の「TIAMAT」、さらに"俺らとお前らの絆を歌います"と「ADORE」が贈られた。"lynch."を掲げて繰り広げられたこの日のライヴ。バンドの歴史を前半から彩ってきた楽曲たちが多く披露されたが、どれだけ時間が経とうと、それらが会場をひとつにする力は増すばかりと証明していた。
[Setlist]
1. EVOKE
2. 59.
3. GREED
4. DAMNED
5. EVILLY
6. -273.15℃
7. LIE
8. UNELMA
9. ENVY
10. MAZE
11. BE STRONG
12. THE WHIRL13. GALLOWS
14. INVADER
15. OBVIOUS
16. pulse_
17. LIGHTNING
18. A FOOL
En1. unknown lost a beauty
En2. VANISH
En3. A GLEAM IN EYE
WEn1. TIAMAT
WEn2. ADORE
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