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INTERVIEW

lynch.

2020.12.23UPDATE

2021年01月号掲載

lynch.

Member:葉月(Vo) 玲央(Gt) 悠介(Gt) 明徳(Ba) 晁直(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

生きて"約束の場所"に辿り着いた、lynch.が今ここに奏でるのは力強くも美しい夢についての誇り高き歌だ。lynch.にとって15周年の節目にあたった2020年は、はからずもコロナ禍という事態に見舞われてしまったが、彼らは2021年2月3日に初の日本武道館公演[15TH ANNIVERSARY "THE FATAL HOUR HAS COME" AT 日本武道館]を敢行するに至り、そんな待望の一夜に向けてこのたびデジタル・シングル「ALLIVE」を発表したのである。lynch.の真髄を凝縮した音像と、"誰もが皆 夢を抱いて/叶えられないとしても 闘うのが/"生きる"って事なんじゃねえの?/君も 俺も"という言葉が響く歌詞。これは実に意義深い。

-2020年はlynch.にとって15周年の節目にあたるアニバーサリー・イヤーでありました。激ロックでは春先に、最新アルバム『ULTIMA』(2020年3月リリース)についての取材を行わせていただいていて(※2020年3月号掲載)。それからほどなくコロナ禍に突入したことにより、予定されていた全国ツアー("lynch. [XV]:act5 TOUR'20 -ULTIMA-")は実現しなかったものの、4月下旬には縁のある全国のライヴハウスに対して、制作費を除く全売上利益を寄付すると表明したシングル『OVERCOME THE VIRUS』を発表されていました。9月には2デイズにわたる無観客配信ライヴ("LIVE'20「DECIDE THE CASE」CASE OF 2013-2020"、"LIVE'20「DECIDE THE CASE」CASE OF 2004-2012")を行い、10月25日には政府ガイドラインに沿った形で、日比谷野音での観客動員ライヴ[LIVE'20 "FACE TO FAITH" at 日比谷野外大音楽堂]も開催されましたね。いずれにしても、lynch.は一貫して"どのような状況になろうとも立ち止まらない"姿勢を呈示されてきている印象があります。

玲央:自分たちからすると、意外とそこまで積極的に動いているという感覚はないんですよ。純粋に、今やるべきことをその都度やってきているという言い方をしたほうが、より正しいのかもしれないです。それに、緊急事態宣言が出ていた間はむしろ動かないほうがいいと思っていましたし、無理に動いて何かが起きてしまったときに、余計ロック・バンドに対する世間の風当たりが強くなってしまうのは、絶対に避けたかったんですよ。いずれにしても、ここに至るまでは常にいろいろなことを考えながら、たくさんの想いを巡らせながら動いてきたなと今振り返ってみて感じますね。

-なるほど。本来であれば、lynch.にとっての2020年は15周年を記念した動きが多く予定されてもいましたし、それらの遂行を断念せざるを得なかった場面では、さぞかしつらい思いもされたのではないでしょうか。

玲央:いや。こういう状況になった以上、そこは仕方ないというふうにある種割り切って考えてましたね。あれもしたかったのに、これもしたかったのに、と後悔だけしていても誰も喜ばないですし。僕らとしては、この状況下でもファンのみんなが幸福感を得られることってなんだろう? っていうことを考えて行動してきただけです。

-なお、10月の日比谷野音では2021年 2月3日に初の日本武道館公演[15TH ANNIVERSARY "THE FATAL HOUR HAS COME" AT 日本武道館]を開催するとの告知がありました。フロントマンである葉月さんは、前々から"武道館でやりたい"という旨の発言を幾度となくされてきておりますけれど、昨今の世相も踏まえるとこの決断にはかなりの覚悟も必要だったのではありませんか?

葉月:2月に武道館をやりましょうって決めたのはまさにあの野音の直前だったんですよ。デカいライヴに向けた告知っていうのは本番と同じくらい大事なものだと思っているので、それをあの野音でできたのは良かったですね。言霊じゃないですけど、あそこで言葉にしたことでファンのみんなとの共通した認識や、志気を持てたと思いますから。でも、覚悟とか、そういうのは実を言うと別にないです。ガイドラインに沿ってできるのであればそれでいいわけだし、開催したら誰かから何かを言われるんじゃないか? みたいなことまでは考えてません。

-いちロック・バンドとして武道館のステージに立つ、ということについてみなさんは今どのように考えていらっしゃいますか?

明徳:武道館ってバンドを始めてもっと上に行きたいとか、デカくなりたい! となったら、きっと誰もが目指す場所ではあるとは思うんですよ。僕なんかは負けず嫌いな性格であるが故にずっとベースを続けてきたところもあるので、昔から描いてきたひとつの夢を2月に叶えられるという状況はやっぱり嬉しいです。

晁直:僕自身はどこそこでやりたいとか、そういうことはあまり口にはしてこなかったし、具体的な目標を持ってバンドをやってきたのか? と言えば、あんまりそういうことでもないですからね。今回も、その場所でlynch.の動員力でできるのならばいいんじゃないの? っていう感覚だったかなぁ。

-意外とあっさりしていらっしゃるのですね。

悠介:僕も以前はそういうことって全然考えたことがなかったです。でも、本来は2019年末から始まっていたlynch.の15周年イヤーというものがあって、たくさん予定していたこともありましたから。それを経て最終的に武道館に辿り着くプランが当初あったので、それがすべて飛んじゃったことで、僕の中では武道館までの階段というのがなくなってしまったんですよ。もちろん、野音で武道館の告知をできたのは嬉しかったんですけど、RPGで言うと、最初の村から、いきなりラスボスのところまで行くことになってしまったみたいな感覚なので(苦笑)、現状では自信よりも不安のほうがちょっと大きいです。フタを開けてみないとわからないことだらけだろうなと。

-もっとも、lynch.にはここまでの15年という月日がありますのでね。そこは経験に裏打ちされた実力と才覚で迎え撃つことができるのではないでしょうか。

葉月:とにかく、今は成功させることだけしか考えてないです。浮き足立った気持ちはまるでなくて、嬉しくてソワソワしてるみたいなのは皆無というか。そういう意味では、なかなか寂しいもんですねぇ。いざ実現させるとなると、全然ウキウキしてられないから。今のところ、あの野音で発表したときが一番ウキウキしてた気がする(笑)。あとは、本番でウキウキできたらいいなと思ってますよ。

玲央:より多くの人たちに楽しんでもらうために、現状は不安要素をひとつずつ消していく作業に入ってる感じですね。もはや、これは自分たちだけのものではない話なんですよ。周りのスタッフたちもそうだし、来てくれるみんなや、lynch.のライヴに関わってくれているすべての人たちを、その日みんな笑顔にできるようにしたいので、そのためには何をする必要があるのか? ということを逆算して実行しているのが今の状態なんです。

-また、そんな待望の武道館公演を前にして、このたびはデジタル・シングル「ALLIVE」が発表されることとなりました。ちなみに、この楽曲からは、まだインディーズ時代であった2008年に、シングル『Adore』を出した頃のlynch.が纏っていた空気感を強く感じ取れたのですが、これは意図的に醸し出したものになるのでしょうか?

玲央:あぁ、それ! そうなんですよ。昨日、実は他の媒体でのインタビューで"これはどんな曲ですか"って訊かれたときに、僕は"「Adore」に近いです"と答えたんです。それも曲調が似てるとかじゃなくてね。バンドにとっての名刺になるような曲を作りたいっていう気持ちで、必死に「Adore」を作ってたときと、今回の「ALLIVE」を作っていくときの気持ちがどこか似てたんですよ。だから、意図的に醸し出したというわけではないんですけど、同じような姿勢で作っていたら音の面でやってることは全然違うのに雰囲気が近くなった、ということなんでしょうね。

-『Adore』発表当時に某雑誌にて私が行ったインタビューでは、葉月さんが"lynch.がlynch.らしくあるためには、自分たちだけの力だけじゃダメなんだっていうか。聴いてくれてる側と自分たち、そのお互いが向き合って初めて生まれるものっていう感覚が今ほんとにあるんです。そして、こういう詞を自分が書くって実は初めてかもしれない。ここまで強く「外」に向けて何かを発信するっていうのは"と発言されていたのですけれど、そのことを今でも葉月さんは覚えていらっしゃいますか?

葉月:えっ? そんなこと言ってたんですか? 初めてって!?

玲央:うん、言ってた。僕、そのインタビューのときのこと覚えてますよ。

葉月:へぇー。だとしたら、ちょっとそうなるのが遅かったですよね(苦笑)。

-あれから12年の月日が経った今、この「ALLIVE」を完成させていくうえで葉月さんがこの曲に託したのは、どのような想いでしたか?

葉月:さっきも話に出ましたけど、いつか武道館に行こう! というのは僕にとってファンの人たちとの共通の目標でしたからね。だったら、1曲くらいは武道館のことを書いた曲 があってもいいだろうということで、これは仮タイトルからして"BUDOKAN"だったんですよ(笑)。その段階から意識していたのは、lynch.の王道を詰め込んだ曲にしたいっていうことでした。"これこそlynch.だよね"って誰もが感じるような曲にしたかったんです。まぁ、実際の王道よりもメロディはややキャッチー寄りにはなってますけどね。そうしたほうが曲としての威力が高まるなとも思ったんで、あえてそっちに寄せました。

-たしかに、「ALLIVE」のメロディ・ラインは秀逸且つ大変覚えやすいです。

葉月:『Adore』のときと大きく違うのは、あの頃はまだ、lynch.にとっての"王道"っていうのがそこまで確立されてなかったことでしょうね。それどころか、当時は、lynch.にとっての王道を生み出したいっていう気持ちが強かった時期だったと思うんです。そして、結果的に「Adore」は今でも、"lynch.と言えばあの曲でしょ"って言われるくらいの、強い存在感を持った曲になってくれたので。実にありがたいんですけど、今回はその王動がすでにある状態で作ってるので、そこは全然違ったんですよ。そうやって王道と呼べるものがあるっていうのは、バンドにとって素晴らしいことだなと改めて感じました。