MENU

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

INTERVIEW

葉月 × PABLO

2020.09.15UPDATE

2020年09月号掲載

葉月 × PABLO

lynch.:葉月(Vo)
Pay money To my Pain/POLPO/RED ORCA:PABLO
インタビュアー:杉江 由紀

気高き意志は、今もここに脈々と息づき続けているということなのだろう。現在の日本におけるヘヴィ・ロック・シーンに多大な影響を与えたバンド、Pay money To my Painのギタリストであるだけでなく、現在はHYDEやLiSAのサポートとしても活躍しているPABLO。今やシーンの中核を担う存在となったlynch.のフロントマンにして、9月16日には初のソロ・アルバム『葬艶-FUNERAL-』を発表するヴォーカリスト、葉月。このたび実現した両者による対談の中では、改めてKという偉大なヴォーカリストの存在について語られることとなったが......いい音楽を伝え続けていきたいという純粋な想いは、確かにここに受け継がれている。


僕らが音楽を始めた頃、日本にラウドロックの定義はまだできてなかった(PABLO)


-このたび葉月さんが発表する初ソロ・アルバム『葬艶-FUNERAL-』には、ピアノとストリングスを主体としたアレンジにて仕上げられた、Pay money To my Painのカバー曲「Another day comes」と、2014年にlynch.が出したアルバム『GALLOWS』に入っていた「PHOENIX」が、ある種のセルフ・カバー的なものとして収録されています。ちなみに、後者についてはPTP(Pay money To my Pain)のK(Vo)さんに向けての想いを詞に込めたもので"じゃあこれから俺はどう生きていこうかということを言葉にしたものなんです"というようなことを、以前インタビューで表明されていたことがありましたよね?

葉月:うん、そうでした。たしかに、「PHOENIX」の詞は彼のことがきっかけになってできたものだったと言えます。

-また、2013年にリリースされたPTPのアルバム『gene』では「Resurrection ᐸP.T.P×Masato from coldrain & 葉月 from lynch.ᐳ 」で音源での共演が実現したこともありましたよね。

PABLO:あれはさ、録る前日になって急に連絡したんだけど、葉月が"何がなんでも歌わせてくれ!"っていう勢いできたよね(笑)。

葉月:違いますよ! 僕が言われたのは当日です。最初は「Respect for the deadman feat. Ken & Teru from Crossfaith」のコーラス録りに参加するっていうことで現場に行ったら、Masato(coldrain/Vo)が「Resurrection」のほうを録ってて、いきなりそのとき"葉月はこれをMasatoと歌って"っていうことになったんですよ(笑)。

PABLO:そうだった、そうだった(笑)。Masatoと葉月って、俺らが名古屋に行くと必ず会える仲間っていう感じだったからね。葉月が歌ってくれたらKも喜ぶよねっていうことで急だけど歌ってもらったんだったっけ。

-なお、今回の対談は葉月さんのソロ・アルバム『葬艶-FUNERAL-』の完成を記念すべく、PTP愛の強い葉月さんたっての希望によって実現したことになりますが、PABLOさん側からしてみると、葉月さんというヴォーカリストに対しての認識を最初に持たれたのは、いつのことだったのでしょうか?

PABLO:最初に出会ったのは名古屋のell.FITSALLだった気がする。PTPのライヴに葉月がMasatoに連れられて来てて、そのときに紹介してもらったんですよ。

葉月:いや、たぶん最初は名古屋CLUB UPSETです(笑)。PTPがROTTENGRAFFTYとのツーマンをやったときだったと思うんで。

PABLO:あれ!? そうか(笑)。とりあえず、そのライヴのあとに会場で葉月とMasatoとKの3人で話をしたのは今でも覚えてる。あれが10年とかそれよりもうちょっと前くらい?

葉月:2009年くらいですね。僕はPTPのライヴにはその少し前から行ってたんですけど、当時はK君以外とは話してなかったですから。PABLO君と初めてちゃんと話をしたのは、そのときだったんですよ。

PABLO:そうそう、話をする前からちょっと気になってはいたんだよね。ああやってKがバンドマンと仲良くしてんの珍しいなと思って。

葉月:へぇー、そうだったんですね。ちょっとそれは嬉しい(笑)。

-これは改めての質問になりますけれど、もともと葉月さんがPTPのどんなところに心を鷲掴みにされたのかをうかがってもよろしいですか?

葉月:いっぱいあるんですよ。でも、実は対バンして出会うまではそんなにPTPのことってよく知らなかったんですね。昔からファンでした、みたいなことではなくて。

-となると、Kさんが以前に在籍されていたGUNDOGのことは......?

葉月:それもK君と出会ってから初めて聴きました。とにかく、僕からすると2009年にSHIBUYA-AXでSADSのK-A-Z(Gt)さんがやってらっしゃるカイキゲッショクとかも出てたイベント("Damnation Special")に出たときに、PTPも一緒で、そこで初めて観たステージが衝撃だったんです。"日本にこんなバンドがいるのか!"って。

PABLO:そうだ、そうだ。あれで初めて一緒になったのか。そのときはJESSE(RIZE/The BONEZ/Vo/Gt)もカイキゲッショクで歌って参加してたよね。

葉月:当時はまだ、ラウドなバンドって日本ではそこまでオーバーグラウンドで活躍していた感じではなかったし、なんなら音的には、ラウドロックをやってるバンドってヴィジュアル系の界隈のほうが数としては多かったくらいだったのもあって、いきなりそこで"本物を観た"感覚になったのを今でもよく覚えてます。そこからはPTPをすごく聴き込むようになりました。

-Kさんの遺作となったPTPのアルバム『gene』に参加した葉月さんやMasatoさん、JESSEさん、CrossfaithのTeru(Prog/Vision)さんとKoie(Vo)さん、Taka(ONE OK ROCK/Vo)さんといった顔ぶれを振り返っても、やはりPTPが後の日本のヘヴィ・シーンに与えている影響は相当に大きいと言えるのではないかと思います。一方で、PABLOさんとしてみても、ここに至るまでにはラウドロックに対するこだわりや、美学をずっと貫いてこられた感は強いのでしょうか?

PABLO:僕らが音楽を始めた頃って、日本におけるラウドロックの定義はまだできてなかったですからね。今だったらディストーションのギターが入ってて、メタル準拠のリフや、洋楽からインスパイアを受けたメロディが入ってて、それをシャウトして歌ってれば、基本的にそういうのはすべてラウドロックって呼ばれてる印象があるんですけど、当時はそういうのって特になかったんですよ。なんとなくLINKIN PARKが出てきたあたりから、それに近いようなことをしてるバンドを、ラウドロックって括るようになっていった傾向はある気がするけど。それこそPTPがデビューするときに、"うちらみたいな音楽って表向きにはどんなジャンルって説明するんですか?"ってレコード会社の人に聞いたときに、"まぁ、ラウドロックなんじゃない?"って言われたときはすごく嫌でしたもん。

-ラウドロックと称されるのが嫌だったとは、実に興味深いお話ですねぇ。

PABLO:だって、ダッサい名前だなーと思ったから(苦笑)。そもそも、日本にしかない言葉だし。とは言っても、今となっては和製英語として広く浸透してしまってるので、もう抵抗はないですけどね。でも、そのくらい僕らがPTPを始めた頃は定義も何もなかったんで、すべてが終始ヘヴィじゃなきゃいけないなんていう考え方もしてなかったから、葉月が今回カバーしてくれた「Another day comes」と同じアルバム(2007年リリースの『Another day comes』)には、「Home」みたいな曲もありましたし。あの曲は葉月がライヴで歌ってくれたことがあるんですけど、括りで言えばまったくラウドロックではないんですよ。

葉月:うん、そうなんですよね。「Home」みたいな曲も僕はすごく好きなんです。

PABLO:結局、僕はラウドロックに対しての常識みたいなものを壊したいタイプなんでしょうね。いちギタリストとして考えたときにも、今の自分が最も目指しているのは"パワー・コードを弾いて日本一カッコいい音を出したい!"っていうことだし。

-これだけのキャリアを積まれてきてなお、あえてシンプルなパワー・コードを究めたいとは潔すぎます。

葉月:僕も今の話はちょっと意外でした。PABLO君のYouTubeチャンネル"俺の竿17"っていうのがあって観たんですけど、あの中でもパワー・コードで弾いたあとに、オープンな感じで1弦まで鳴らしてる場面が多いじゃないですか。個人的にはあの響きにむちゃくちゃPABLO君らしさを感じるので、パワー・コードを究めたいっていう言葉が出てくるとは思ってなかったです。

PABLO:メタルでもポップスでもパワー・コードなんて普通に使われるものなんだけど、それだけにどれだけカッコ良く聴かせられるかが大事なんじゃないかと思うからね。シンプルだからこそ奥が深い、みたいな話だよ。

葉月:PABLO君って、ギタリストは誰が好きなんですか? 誰にハマってああいうヘヴィな音を出すようになったんですか?

PABLO:姉ちゃんが洋楽好きだったから、その影響で、小6で聴いたMETALLICAがきっかけかな。ギタリスト個人に注目してたっていうよりは、好きなギター・サウンドの入ってる音楽をバンド単位で聴いてたって言ったほうが正しい気がする。

葉月:そこからはずっと洋楽ばっかり?

PABLO:そうでもないよ。X JAPANとか、LUNA SEAとかもたくさん聴いていて、BUCK-TICKやGASTUNKも聴いたし、結構雑食(笑)。