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INTERVIEW

葉月 × PABLO

2020.09.15UPDATE

2020年09月号掲載

葉月 × PABLO

lynch.:葉月(Vo)
Pay money To my Pain/POLPO/RED ORCA:PABLO
インタビュアー:杉江 由紀

-そんなPABLOさんからすると、葉月さんのいるlynch.に対してはどのようなバンドであるとの印象をお持ちですか?

PABLO:ちょっと前にもライヴに行かせてもらいましたけど、彼らの出している音のヘヴィさはもちろん好きなんですよ。でも、それと同時にヘヴィなだけじゃなく、そこに葉月の持っている世界観を落とし込んであるところも大きな特徴だと感じていて、激しさの中にも美しさや繊細さを漂わせているのがlynch.なんじゃないかなと思ってますね。

-今まさにPABLOさんのおっしゃった、"激しさ"と"繊細さ"という言葉をピックアップさせていただくなら、このたび葉月さんが発表する初ソロ・アルバム『葬艶-FUNERAL-』は、繊細さの領域にフォーカスを当てた作品になっているように感じます。その意識は、葉月さんの中にもありました?

葉月:それがないんですよねぇ。むしろ、今回のアルバムの中で僕が注目してほしいのは「PHOENIX」とか「Another day comes」、あるいは「D.A.R.K.」みたいな、シンフォニックな編成なんだけど、シャウトも入ってて、思いっきり高いテンション感でやってるっていう曲たちだったりするんです。ピアノや弦の人たちがいて、しっとりバラードをやるっていうのは普通ですから。それはそれでいいんだけど、自分がグッときてる本命ポイントは繊細さとは逆の、激しいニュアンスが強く出てるほうの曲たちなんですよ。そこに生まれる不思議な違和感みたいなものにこそ、僕は可能性を感じることができたんです。

-実際、このアレンジとこの編成でここまでの高い熱量をもっての歌を表現することができるのは、葉月さんならではの持ち味であると言えそうです。PABLOさんは、この『葬艶-FUNERAL-』はお聴きになられました?

PABLO:はい、聴かせてもらってます。「Another day comes」のライヴ動画も観ましたよ。そして、やっぱり葉月らしいものになってるなって感じました。こういうテイストのアルバムにPTPのカバーを入れてくるっていうあたりからしてね(笑)。バンドとは違うソロである意義っていうのも、ちゃんと感じられる作品になってるなと思います。

-lynch.の楽曲のカバーたちや、ソロとしてのオリジナル新曲と共に、今作『葬艶-FUNERAL-』にはPTPだけでなく、BUCK-TICK、Cocco、柴咲コウ、LUNA SEA、黒夢、尾崎 豊(数量限定豪華版のBlu-ray収録)といった、名だたるアーティストたちのカバー曲が詰め込まれております。これらはいずれも不定期にて行ってきたソロ・ライヴ"奏艶"で歌ってきたものが主軸となっているのだと思われますが、その中からこの収録曲にまとめあげていくプロセスにおいて、何を重視していたのかもぜひ教えてください。

葉月:そこを言葉で説明するのは難しいですねぇ。みなさんそこはよく聞いてくださるんですけど(苦笑)、一番わかりやすく言うと、"1枚目のソロ・アルバムに入れるならこれかなって自分が感じた曲たちを直感的に並べました"ということになるのかな。別に理論とか戦略があって決めたものではないんです。

PABLO:それって、ヴォーカリストとしての名刺代わりの1枚として出すなら、この曲たちを聴いてほしいっていう気持ちが強かったの? それとも、純粋にこの曲たちを歌いたい! この曲をたち聴かせたい! っていう気持ちのほうが強かったの?

葉月:そこは自分の好きな曲も入れたいし、自分が歌ったときに映えるものも入れたいっていうふうに、おそらく両方が混ざってるんですよ。だからひと言では表しにくいんです。

-PTPの「Another day comes」については、強いて言えばどちら寄りになります?

葉月:この曲はライヴでやってみたらめちゃくちゃ良かったから、すぐCDにしたい! ってなったパターンです(笑)。

PABLO:これ、すごく豪華なつくりじゃない? 自分の作った曲だけど、聴いてて楽しかったもんね。ストリングスはこのラインにいくんだ、とか発見があったよ。というか、俺も自分でこういうの弦を入れてやりたい! って思った(笑)。

-それから、「Another day comes」に関しては、原曲が英詞なのに対して今回は葉月さんによる日本語詞で歌われております。歌詞を変えて歌った理由はなんでしたか?

葉月:僕が英詞を歌えないからです。自分の英語の発音が下手なことによって、"もうちょっと英語上手けりゃなー"って聴いている人たちのテンションを下げたくなかったんですよ。だったら自分で、日本語で書こうと思って。僕が原曲から受け取ったイメージと、僕が今この歌を通して伝えたいことを合わせて言葉にした感じですね。でも、韻は原曲に沿わせたので、そこだけはすべて同じにしてあります。

PABLO:最初はこういう日本語の歌になるのかってびっくりしたっていうのもあるんだけどね(笑)。でも、葉月がこういう形で歌ったこと自体にも、Kに対するリスペクトが含まれてるんだろうなって僕は感じてます。というのも、Kは英語で歌うっていうことを勉強するためだけに、アメリカに渡ったことがある男ですから。Kに失礼なことはしたくないという気持ちから、この曲はこういう仕上がりになったんじゃないですかね。

-「Another day comes」には万感の想いが込められているように感じます。今思うと、かつてlynch.がアルバム『GALLOWS』を出した際に、「PHOENIX」の歌詞を書いた経緯についての説明の中で葉月さんは"僕はK君のことを背負って生きている"といった発言をされていたことがありました。Kさんの遺志を継いでいきたいという葉月さんの想いは、この歌にも託されているように感じられてなりません。

葉月:あの当時は......今よりそう想わせてほしいっていう気持ちが強かったんですよ。これも本当に言葉で表すのは難しいんですけど、考えれば考えるほど逆に自分の考えすぎだろうと思えてきてしまうところもあってですね。K君のことを想うとなおさらというか。でも、こんなのはK君本人に言ったら"は!?"ってなりそうで(笑)。だから、今はそこまでガッツリ背負ってる感じではないんですけど、ずっと忘れたくないなっていう気持ちでいるのは間違いないです。

PABLO:Kの遺志がどうこうみたいな話ってわりと出るんだけどさ。すべては彼の遺した歌と作品の中にあると思うし、それがいろんな人たちの心に影響を与えている点というのはあるんだろうけど、俺も同じバンドのメンバーだけど、彼の遺志を継いでいるとかじゃなくて、自分の役割は、Kというヴォーカリストがいたってことを風化させないことなんじゃないかなと感じてる。特に最近は、よりそう思うようになったかな。そういう意味でも、今回こうして葉月が初めてのソロ・アルバムの中で、PTPの「Another day comes」を選んで歌ってくれたってことはすごく嬉しいし、葉月のファンだけじゃなく、僕のファンの人たちにもぜひ聴いてもらいたいです。

-聴き手側としては、今回の『葬艶-FUNERAL-』のみならず、今後も葉月さんにはlynch.と並行して、ソロ作品も作っていっていただきたいという思いがありますけれど、ご本人としてはそこに向けての展望はいかがですか?

葉月:出すとしても、まったくおんなじことはやらないでしょうね。今回のアルバムは、ここ5年くらい続けてきたライヴ"奏艶"で積み上げてきたものを音源にした、集大成的なものですけど、次は今回のレコーディングで得られた、ピアノや弦を入れた編成で熱くて激しい曲をやるっていうところや、そこに生まれる不思議な違和感みたいなものを、自分ならではのオリジナルなものとして突き詰めていきたいなという気持ちがあります。

-PABLOさんは現在HYDEさんやLiSAさんのサポートとしてもご活躍中ですが、ご自身による曲作りを生かした活動のご予定というのはありますか?

PABLO:作曲も編曲も全然やってますよ。いわゆる楽曲提供はしてますし、降谷建志君や金子ノブアキ君ともバンドやってますけど、実は自分の新しいバンドのプロジェクトも始まってます。9月9日に1曲目を超インディーズで出しますが(※取材は9月2日)、あえて宣伝はしてないし僕に興味のある人にしか聴いてほしくないから、バンド名も公表していないくらいなんです(笑)。これ以上の情報については、YouTubeの僕のチャンネルを見てください。そのうちみんなが無視できない存在になるんで。テッペン獲るつもりでやってますから、興味のある方はぜひよろしくお願いします!

-承知いたしました。葉月さんの近況としましては、9月10日に"LIVE'20「DECIDE THE CASE」CASE OF 2013-2020"、11日には"LIVE'20「DECIDE THE CASE」CASE OF 2004-2012"とlynch.としての初無観客生配信ライヴが予定されていますね。

葉月:まずはlynch.としてのその配信ライヴをやって、それを無事に終えられたら、近いうちにソロのほうでも配信ライヴをやれたらいいなとは思ってるんですけどね。あくまでlynch.が優先なので、まだ詳しいことは決めてません。

-最後に、せっかくの機会ですので、PABLOさんから葉月さんへのエールを贈っていただけますか。

PABLO:んー、生きろ! かな。これは葉月に対してだけじゃないけどね。すべての人たちに対しても思うし、葉月個人に対しては、いつまでもいい歌を届け続けてもらいたいです。

-葉月さんから、PABLOさんにここでうかがっておきたいことはありますか?

葉月:"Dead by Daylight"(※対戦サヴァイヴァル・ホラー・ゲーム)はやんないんっすか?

PABLO:やったことないんだよねー。面白いの? だったらやるわ(笑)。そして、コラボでもしますか!

葉月:めっちゃ面白いんで、一緒にやりましょう(笑)。