INTERVIEW
"マガツノート" 野島健児 × HAZUKI 対談
2023.12.14UPDATE
月の光が照らし出す真実は、やがて物語をしかるべき流れへと導くことだろう。戦国武将と近未来SF、そしてV-ROCKの要素を三つ巴に融合させた新しいメディア・ミックス・プロジェクト"マガツノート"において幸村を演じる声優 野島健児と、その幸村が率いる"六道閹(りくどうえん)"という陣営を「真月」(2023年1月リリース)なる楽曲として表現したアーティスト HAZUKI。今回これが初の対談インタビューとなる両者は、音楽というものを媒介にして互いを理解していくことになったのではなかろうか。そして、ダークでヘヴィだけれども洗練された音像と、意味深なる"真月乃音ガ響ク"という歌詞が交錯する「真月」が示すのは、六道閹の首領である幸村の本性であるのかもしれない。
野島健児(幸村)
HAZUKI
Interviewer:杉江 由紀
-このたびは"マガツノート"において幸村を演じられている野島さんと、その幸村率いる"六道閹"をイメージした楽曲を作られたHAZUKIさんのおふたりに集っていただいたわけですが、まずはHAZUKIさんに"なぜこのコンテンツに参加することを決めたのか"ということをうかがいたいと思います。最も興味を惹かれたのはどのような点だったでしょうか?
HAZUKI:そもそも、今回はこういう外の世界といいますか、今まで自分が関わってこなかったところからのオファーをいただけた、というほぼ初めての経験でもあったので、まずはそれがシンプルに嬉しかったんですよ。しかも、何か物語として成立しているものに対してそれを前提とした曲を作ってみたい、という気持ちは個人的にずっと前から持っていましたからね。結構昔から"タイアップの話とか来ないかなぁ?"と言い続けてたので、こうして"マガツノート"さんからのお話があったときは喜びましたし、絵柄とかもカッコ良かったんで、すぐにお返事させてもらいました。
-絵柄といえば、まさに野島さんの演じられている幸村のキャラ・デザインは、HAZUKIさんをモデルにしているかのような雰囲気だったりもしませんか。
HAZUKI:SNSでもちょっと話題になってたりしましたもんね。たしかに、僕も初めて幸村を見たとき"あれ? これは「JØKER」のときのワシやな"って思いましたよ(笑)。
-2018年にlynch.として出したアルバム『Xlll』収録曲「JØKER」のMVは、リアル幸村に見えますよね。
HAZUKI:でも、ほんとにそういうことなのかはわかんないじゃないですか。幸村のキャラ・デザインがどうやって決まっていったのかまでは、僕はよく知らないんで。ただ、もしそうなんだとしたら光栄ですね。
-一方、幸村の声をあてられている野島さんからしてみると、幸村とはどのような人物であると感じていらっしゃいますか。
野島:彼は自分の理想とする"美しい死"を追い求めている、みたいな人物ですからね。イメージ的には死神のようでもあるし、ちょっとおどろおどろしい面もありはするんですが、彼が首領となっている六道閹は佐助と才蔵のふたりも含めて、3人が揃うことでどこか家族的な要素を併せ持った集団だとも思うんですよ。僕としてはおどろおどろしさよりも、そういった彼らの人間関係の部分がクローズアップされているので、かなり殺伐とした世界観が漂う"マガツノート"の世界の中でも、この六道閹の3人の存在がある種の癒やしを醸し出すものになっていくといいなぁ、と考えてます。
-ストーリー序盤では解放区の暗殺者集団と呼ばれていた六道閹が、実は癒やしの存在としての一面も持っていたというのは意外な展開です。
野島:僕が思うに、幸村は六道閹の首領ではあるんですが、家族に喩えるなら父親というよりは面倒見のいい母親みたいな存在に近い気がするんですよ。そのあたりまで意識しながら表現していくことによって、僕が幸村を演じていく意味をそこに見いだしていきたい、というふうにも思っていますね。みんなを導いたり、いるべき場所にいさせてあげられるような、そういう力を持ったキャラクターになっていけばいいなぁと思いながら幸村を演じてます。
-HAZUKIさんから見た場合、幸村とはどのような人物でしょうか。
HAZUKI:上品ですよね、とても。自分にとって理想の死を追い求めている姿勢とか、物語の中で言っていること自体はかなりえげつないし、怖いこともいろいろ言ってるんですけど、野島さんの声の温かさによって生まれるギャップというのがすごいんですよ。僕はそういうところがすごく素敵だなと思ってます。
-なお、そんなHAZUKIさんは六道閹のために「真月」という楽曲を書き下ろされていらっしゃるわけですが、こちらを作曲およびアレンジをしていくうえで特に重視されたのはどのようなことでしたか。
HAZUKI:"マガツノート"というプロジェクトに提供する楽曲ということで、まずはひと通り公式ホームページを拝見したり、ストーリーの全体像をとらえたうえで、やっぱり印象として強かったのは各キャラに実在した武将たちの名前が付いている、ということだったんですよ。それってとても日本ならではの香りがするところなので、そういった日本らしい和のテイストと、僕が普段やっているようなヘヴィでラウドな音を混ぜていきたいなと思ったわけです。本来的に"マガツノート"はハードなイメージを持ったプロジェクトでもあるので、和の質感と凶暴性を融合させていくのは合うだろうと思ってましたが、この「真月」に関してはその読みがハマった感じですね。
-「真月」では和楽器の音がいろいろと使われておりますが、特に目立つのは尺八です。そこをフィーチャーした理由も教えてください。
HAZUKI:尺八の音は前から好きで、自分のソロでやってる"奏艶"っていうクラシック・コンサートみたいなものでも、和楽器コーナーで和太鼓とかも交えつつ取り入れたことはあったんですよ。で、尺八が好きになったきっかけはなんだったのかというと、これはLUNA SEAのSUGIZO(Gt/Vn)さんがソロ・プロジェクトのときに尺八を使った曲を披露されていて、それで好きになったんです。だから、今回の「真月」でも尺八だけは生なんです。他はシーケンス・ソフトとかを使ってるんですけど、尺八だけは生録音してもらいました。
-管楽器は人のブレスのニュアンスが如実に出るものですし、まさに生演奏ならではの奥深さが「真月」にはしっかりと生かされている印象ですね。
HAZUKI:そう、管楽器の音って歌に近いところがあるんですよ。だから、尺八を打ち込みにするのはどうしても寂しくて。おかげでいい空気感を生み出すことができました。
-野島さんは「真月」という楽曲をお聴きになられたとき、どのような印象をお持ちになられたのでしょうか。
野島:がっつりロックなんですけど、たしかにHAZUKIさんがおっしゃられていたように和楽器との親和性が高い曲になっていて、六道閹の放つ恐ろしい雰囲気と、それだけじゃない煌びやかさのようなものを両方感じられるなと思いました。どこか花魁のようなイメージも感じるくらい、色鮮やかで艶やかな印象もありますね。派手さはあるんですけど、そこには上品さがありますし、月の光が反射してリフレインしていく光景も浮かんでくるような、聴いていると映像的な感覚も湧いてくる曲になっていると思います。
HAZUKI:そう言っていただけると嬉しいです、ありがとうございます。
-また、この「真月」では歌詞もHAZUKIさんが書かれていらっしゃいますが、言葉を使って幸村という人物を表現していくときに留意されていたのはどのようなことでしたか。
HAZUKI:どうしたら"マガツノート"のファンの方たちに喜んでいただけるかな、ということは考えました。そして、僕も一応ヴィジュアル系っていうシーンの中にいる人間ではあるので、歌い出しのところの"妖艶ノ夜ニ 髑髏ノ満月ガ照ラス"みたいな表現とかは、普通の人たちより圧倒的に得意だとは思うんですよ。だから、そういう表現をここではあえてたくさん取り込んでみたりもしてます。それと"真月乃音ガ響ク"っていう部分に関しては、これを"マガツノート"っていうふうにも読めるようにしました。
-"真月乃音(まがつのおと)"で"マガツノート"! なるほど!!!
野島:そういうことだったんですね。言われるまで気づかなかったです(笑)。
HAZUKI:自分としてはそこが一番気に入ってます。といっても、これは僕の勝手な解釈なんで。ほんとにそういう意味かどうかまではわかんないですよ(笑)。
野島:いや、すごく面白いですね。そういうふうにとらえたことなかったので、ちょっとびっくりしました。今すぐ誰かに言いたい気持ちでいっぱいですよ(笑)。