INTERVIEW
"マガツノート" 峯田大夢 × HIROTO(アリス九號.) 対談
2023.12.13UPDATE
宿命にも似た縁と、強い使命感、そして音楽に対する深い愛。きっと、それらがふたりを強く結びつけているということなのだろう。戦国武将と近未来SF、そしてV-ROCKの要素を三つ巴に融合させたメディア・ミックス・プロジェクト"マガツノート"において、峯田大夢は政宗を演じる声優であり、HIROTO(アリス九號.)はミュージシャンとしてこのたび開催されるイベント"解放区 -冬の陣-"に参加する立場である。が、もともと彼らはプライベートでの親交も深かったのだという。ここでは彼らのここまでに至る経緯と、それぞれが表現者として志していること、さらにはここからに向けた野望までを深く語ってもらうことができた。
峯田大夢(政宗)
アリス九號.:HIROTO(Gt)
Interviewer:杉江 由紀
-今度、峯田さんとHIROTOさんは"マガツノート"のイベント"解放区 -冬の陣-"にて共演されることが決まっておりますが、実は以前からプライベートな親交があられたそうですね。よろしければ、そもそもの馴れ初めについてのお話をうかがえますでしょうか。
HIROTO:知り合ってからは、もう8~9年くらいだよね?
峯田:だと思います。最初は共通の友人を介しての出会いだったんですよ。
HIROTO:それ以来、よく集ってるメンバーたちとBBQしたり、誰かの家で飲んだり、っていうことを結構してます。
-なるほど。峯田さんとHIROTOさんの場合、会話を交わされるようになってから、これまでによく話題にされてきているのはどのようなことなのでしょうか。
峯田:それが、音楽の話はあんまりしたことがなくて。というか、むしろ僕からは音楽の話題は一切振ったことがないんです。僕らを繋いでくれた共通の友人には"前からアリス九號.のことを知ってる"とか"僕もヴィジュアル・ロックが好きで"みたいなことを言ったことはあったんですけど、HIROTO君本人に"アリス九號.を聴いてた"っていうような話を直接したのは、ほんとにごく最近になってからですね。
HIROTO:ほんっとに、僕は大夢がアリス九號.を聴いてたとか全然知らなくて。それまでは、いつもアニメの話とかをよくしてる感じだったから、"えっ! そうだったの!?"ってちょっと驚いちゃいました。だから、思い返すとここまでにふたりでしてきた会話って、かなり他愛ないというか。そんなに実のある話はしてきてない気がする(笑)。
峯田:あ。でも、HIROTO君はウィスキーのこと詳しいですからね。ウィスキーについて教えてもらったり、っていうことなんかもありました。
HIROTO:それと、コロナ禍になってリアルに会えなくなったときはオンライン上でコミュニケーションしたりっていうのもあったよね。基本的に、僕らの集まりは何しからの形でエンタメに関わってる人たちばっかりだし、やっぱりあの時期って裏方のことも表の人もみんな現場が止まっちゃって、大変だったじゃないですか。
-世の中全体が打撃を受けていたのは確かだとはいえ、エンタメ界隈は特に深刻な状況に追い込まれましたものね。
HIROTO:そうなんですよ。エンタメが止まっちゃって、みんなの持ってるエネルギーをどこに向けたらいいんだろう? みたいな状況になったときに、勉強会っていうか、改めて自分たち自身と向き合う時間を作ってもいいんじゃないか? ということで、ずっと飲み仲間だったみんなとかなり真剣なモードで、いろいろオンライン上でのコミュニケーションを取っていくことが増えたんですよ。
峯田:コロナでいったんは立ち止まるしかなくなったときに、自分たちの中の考え方の整理を改めてした感じでしたよね。そして、そのあたりからお互いの中身をより知るようになりましたし、関係もさらに密なものになってきた気がします。
-そんなおふたりが、このたび"マガツノート"の"解放区 -冬の陣-"で共演されることになったというのは喜ばしい限りです。ちなみに、"マガツノ(マガツノート)"では以前アリス九號.の楽曲「TSUBASA.」(2007年リリースの10thシングル表題曲)が忠勝(CV:岡本和浩)によってカバーされたことがありますけれど、HIROTOさんは当時その件についてどのような印象を受けられたのでしょうか。
HIROTO:非常に新鮮でしたね。アリス九號.って、我ながら界隈ではそこそこの知名度があったバンドだとは思うんですよ。ただ、名前は知っててもどういうことをやってるバンドかまではよく知らない、見た目はわかるけど音がわかんない、っていうパターンもあったみたいなんですね。それに、後輩のバンドマンからも"アリス九號.に影響を受けてるんです"って言われるような機会もそんなになかったから、僕らの曲を"マガツノート"でカバーしていただいたっていうのは、僕らからすると新鮮な体験でした。
-それにしても不思議ですね。"後輩のバンドマンからも「アリス九號.に影響を受けてるんです」って言われるような機会もそんなになかった"とおっしゃるものの、それこそ2010年前後あたりは"アリス九號.っぽいバンド"が増殖していた記憶がありますよ。
HIROTO:それが、あえて言いますがヤツら"アリス九號.に影響を受けました"とはなかなか言ってくれないんですよ(苦笑)。なんでなんすかね? ちょっとキラキラした雰囲気に抵抗があるとか、人によっては"ホストっぽい"みたいなイメージがあるからなのかなぁ!?
-きっと、そこには大いなる誤解があると思います。アリス九號.がホスト的だったわけでは決してなく、ホスト業界の方が後追いでアリス九號.やヴィジュアル・ロックのスタイルを模倣しだして、それがいつしか定着してしまっただけの話ですのにね。
峯田:僕もたぶん、それはあるんじゃないかと思います。時代的にはだいたいそういう流れってありましたよ。
HIROTO:まぁ、そのへんのどっちが先かっていうのは置いといたとしても、なんとなくそういうイメージがあったせいなのか、人によってはアリス九號.が好きって口に出しづらい雰囲気がたぶんあったと思うんですよね。だからこそ、"マガツノート"で僕らの「TSUBASA.」をカバーしていただけたのはすごく嬉しかったですし、タイミング的にはちょうどアリス九號.が無期限活動"凍結"する直前あたりで、今回のイベント"解放区 -冬の陣-"に関してのお話を貰えたときもありがたかったですね。
-先ほど、峯田さんはアリス九號.のことを以前からご存じでいらしたというお話がありましたけれど、初めてその存在を知ることになったきっかけはなんだったのですか。
峯田:僕がヴィジュアル・ロックと出会ったのは中学生くらいのときで、最初はthe GazettE、lynch.、BORNあたりをよく聴いてました。そこからはもうジャンルを広げて挙げ切れないくらいにいろいろ聴いていて、もちろんアリス九號.、シド、GACKTさん、LUNA SEA、L'Arc~en~Ciel、DIR EN GREYなんかも軒並み聴いてましたね。
-それだけたくさんのアーティストの音楽に触れていたなかで、アリス九號.の音は峯田さんからするといかなる印象を持ったものとして聴こえていたのでしょうか。
峯田:さっきHIROTOさんは"キラキラ"っていう言葉を使ってましたけど、僕もアリス九號.に対しては明るい輝きを感じてましたね。当時だとほかのバンドさんはダークで重い世界を描かれていることが多い印象だったのもあって、アリス九號.のような存在は他にはあまりいなかった感じがしたし、自分の中にはないキラめきっていうものを感じてました。
-おふたりが音楽のお話をされるようになったのは、わりと最近になってからだったということですけれども、ざっくりとでも"何か一緒にやりたいね"的な話題が出だしたのはいつくらいからだったのでしょう。
峯田:それが、ふわっとしたところからの始まりだったんですよ。
HIROTO:うん、最初はふわっとしてたね(笑)。
峯田:僕が"マガツノート"を始めたときに、結構すぐ"今こういうのをやっていて、音楽面ではヴィジュアル・ロックの人たちもいろいろ関わってくれてるんです"っていう話はしたんですよ。で、なんとなくの話で"いつかHIROTOさんとも一緒に何かやれたらいいなぁと思ってるんです"みたいなことは、その段階から言ってました。
HIROTO:でも、そのときもまだ大夢は僕に"アリス九號.のこと知ってた"とは言ってくれてなかったよね(笑)。それどころか、政宗としてLUNA SEAの「JESUS」をカバーしてるのに、"LUNA SEA好きなんです"っていうことすら言葉として聞いたことがなかったんですよ。
峯田:ほんとは、自分が中学生のときに聴いてた曲をカバーできる! っていうことでもうめちゃくちゃ嬉しかったんです。でも、その嬉しさをすぐに言葉で表わせなかったのは、自分の中でジャンルに対するリスペクトが強いだけに、プレッシャーがかなりデカかったっていうのはあると思います。
-好きであればあるほど、おいそれとは向き合えないという覚悟もあられたのでしょうしね。そうした心境はあって当然かもしれません。
峯田:しかも、ただカバーするだけではなくて、"マガツノート"というコンテンツの中で、キャラクターの特性も取り入れつつ歌う必要がありましたからね。そのためにアレンジを調整していただいたりもしましたし、自分としてもこれは新しい挑戦でした。
HIROTO:たしかにそうだよね。ただのカバーじゃないっていうところは、歌うの難しいだろうなぁ。そう考えると、声優さんってほんとにすごいと思う。"峯田大夢の演じる政宗が、LUNA SEAの「JESUS」を歌う声"っていうのを出さなきゃいけないなんて。それは何重にも難しいよねぇ。
峯田:ややこしいです(笑)。
HIROTO:今思うと、初めて会ったのって大夢が10代の終わりか20代に入ったばっかりくらいだったわけでしょ。あの頃から、大夢はみんなでBBQとかやってるところでいろんな声真似とかをずーっとぶっ込んでたんですよ。
峯田:あれは僕の悪いクセです。気になるキャラクターとか、声を聞くとすぐ真似したくなっちゃう(笑)。
HIROTO:いや、でもそういうのの積み重ねが結局いろんなことに生きてるんじゃない? 僕らとしてはいつも楽しませてもらってるけど、普段の遊びの中でも常に新しい声の出し方にトライしてるし、それを僕は近くで見てきてるから、今これだけ幅広く仕事をして、主演とかもするようになったのって"すごいなぁ"というより、"そりゃそうだよね"と感じてる気持ちのほうが強いです。
峯田:いやいや、HIROTOさんにそんなふうに思っていただけるなんて。近くにいてくれる人だけにちょっと小っ恥ずかしいですけど、何よりも本当に嬉しいです。