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LIVE REPORT

マガツノート

2024.01.28 @パルテノン多摩

Writer : 杉江 由紀 Photographer:菅沼剛弘、清水ケンシロウ

次元や守備領域を遥かに超えた、協演という名の共同戦線。今宵それが抜かりなく張り巡らされることになったのは、パルテノン多摩において執り行われたスペシャル・ライヴ・イベント"解放区 -冬の陣-"の場だ。

戦国武将と近未来SF、そしてV-ROCKの要素を三つ巴にしたメディア・ミックス・プロジェクト"マガツノート"は、ダークな楽曲×ストーリーを軸に展開するサブカルチャー・コンテンツで、中でも声優勢とV系アーティストたちが同じ舞台に立つ独自企画のライヴ・イベントについては、これまでにもかなり重視されてきたところが窺える。ちなみに、このたび大阪と東京で開催された"解放区 -冬の陣-"については共にこれまでの例と比べても最大規模となり、なんと東京公演では13人のヴォイス・アクターらと6組のV系演者が一堂に会することに!

なお、この"マガツノート"に関する前提情報としては時代設定が西暦2222年で、隕石の衝突によって人類の9割が死滅した世界を背景に、人類再興を目指す組織 ARKと、それに対抗する武将と呼ばれる悪魔の力を持った者たちが戦乱を繰り広げる物語となり、武将たちがARKから奪取した領土が"解放区"とされている、ということをぜひとも含み置いていただきたい。また、"マガツノート"を愛好する人々に対しては公式で"有害人類"との名称が授けられているそう。

かくして、そんな有害人類の集う場"解放区 -冬の陣-"でこの夜まず始められたのは、岡本信彦(光秀役)と大河元気(左馬之助役)による月夜の出来事を描いた朗読劇。それに続き登場したZOMBIEは、自虐的な曲題と相反するような勢いあるバンド・サウンドが炸裂する「ウルトラムシケラボーイ」で岡本&大河の両人とコラボ・プレイを披露したうえ、最新シングル曲「ごめんなさいのメロディー」なども含めて、全編にわたり楽しく派手な熱演ぶりを見せてくれたのだった。

かと思うと、小笠原仁(秀吉役)、馬場惇平(官兵衛役)、仲村宗悟(清正役)の3人が繰り広げた朗読劇のあとには零[Hz]が登壇し、ここでは零[Hz]が"マガツノート"のために書き下ろした「惡鬼招雷」を、バンド+声優チームの総勢8人で実演することが叶った次第である。むろん、近年ライヴ・バンドとしての底力をよりボトムアップさせて来ている零[Hz]そのものの魅力も、「SINGULARITY」などの曲たちを通してこの空間で存分に発揮されていたのは言うまでもない。

さらに、峯田大夢(政宗役)と堀江 瞬(小十郎役)の朗読劇に次いで幕を開けた摩天楼オペラのステージでは、苑(Vo)の独唱が冒頭を飾った1曲目の「闇を喰む」で、途中から峯田が苑との壮麗なツイン・ヴォーカルを聴かせるという非常にエモい場面が勃発。なんでも、これは"マガツノート"のヴォイス・ドラマ"Season:3"のテーマ・ソングとして作られたそうで、のちのち峯田の歌うバージョンに加え、摩天楼オペラが5月4日に行うLINE CUBE SHIBUYA公演ではバンド・バージョンの音源も発売されることになっているとのことで期待大。

一方、昨年はアニメ"デュエル・マスターズ"のエンディング・テーマに「ドロー」が起用されたことで話題になったザアザアは、あえてなのかその曲は封印してこの場に挑んでいたのが印象的だった。昨年"マガツノート"への書き下ろし楽曲としてバンドから提供した「闇と桜」を、美藤大樹(家康役)、岡本和浩(忠勝役)、沢城千春(直政役)、岡本信彦(光秀役)、大河元気(左馬之助役)の朗読を受けたのちに声優陣と共にパフォーマンスしてみせたほか、ラストの「大雨警報発令」まで一貫して中毒性の高い空気を生み出し、場を圧倒した姿は流石のひと言。

野島健児(幸村役)が読み上げた"死に際の私を照らす月光は どんなに冷たく美しいのだろう...無残に変わり果て 蟻に集られた私の死体を 月はどんな顔で見下ろすのだろう..."との情景が絶妙にシンクロしたのは、いよいよ"解放区 -冬の陣-"が佳境に近づいてきたところで見参したdeadmanの奏でる「蟻塚」。この曲自体はdeadmanのオリジナル作品となるものの、幸村というキャラがカバーした楽曲であり、彼の抱える痛みと願望がdeadmanの織りなす濃厚な音楽世界と交錯していく様は、どこか不思議でもあり興味深くもあった。

ところで、以前、本誌では野島健児とHAZUKIの対談を掲載したことがあるのだが(["マガツノート" SPECIAL ISSUE])、その際にHAZUKIから発されていた"ライヴの場とかで野島さんと一緒に歌ったりもしてみたいです"との言葉が、なんとこの日のライヴでは見事実現したのも大きなトピックスであったと言えよう。野島健児、小野将夢(佐助役)、堂島颯人(才蔵役)の3人が朗読のあとにコラボ楽曲である「真月」を、その曲を作ったHAZUKI本人と歌い上げた光景はエモいことこのうえなく、場内もそこから当然のように大いなる盛り上がり方を見せていき、この"解放区 -冬の陣-"はさらなるクライマックスへと突入。

峯田大夢(政宗役)、堀江 瞬(小十郎役)による「リブラ」のサプライズ歌唱のあと、最後の最後を締めくくったのは、13人の傾奇いた武将たちによる「天下多事CHAOS」で、ここでもHAZUKIのサポート・バンドが彼らの背後を護るなか、峯田はシャウトやデスボも駆使しながら、陣頭へと躍り出て有害人類たちを激しく煽りに煽った。
この"解放区 -冬の陣-"で勝利を得た彼らが"マガツノート"でさらなる共同戦線を強化させていくことは、もはや必至であるに違いない。

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