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INTERVIEW

摩天楼オペラ

2020.04.17UPDATE

2020年04月号掲載

摩天楼オペラ

Member:苑(Vo) JaY(Gt) 燿(Ba) 彩雨(Key) 響(Dr)

Interviewer:藤谷 千明

昨年、名盤『Human Dignity』と共に新体制となり新たなスタートを切った摩天楼オペラ。そんな彼らが次に繰り出すのは、5曲入りEP『Chronos』。"時の神"の名を冠した本作は、ひとつの恋愛の出会いから別れまでの時間を、主人公の視点で描いたパーソナルでありながら、壮大な作品となっている。メンバー全員に制作についてたっぷりと語ってもらったロング・インタビュー。


自信を持って"摩天楼オペラ"として成立させることができた


-昨年の摩天楼オペラは、前作『Human Dignity』(2019年リリースのフル・アルバム)とともに、1年間ライヴをまわっていた印象があります。『Chronos』はそれを経て制作されたものだと思われますが、構想はどのあたりからあったのでしょうか?

苑:"Human Dignity TOUR"の後半あたりから、徐々に"こういう楽曲がやりたい"というものが固まってきましたね。前作を経たことにより、"この5人だったらどういう音楽が作れるか"がちょっと見えてきたんです。それをより強化するためにはどうすればいいかを、みんなで考えたとき、JaYと響の色、つまりラウドの色をより濃く強調し、なおかつ、今まで持ってた摩天楼オペラの色を殺さないように合体させることが理想だったんです。

-前作は"これが今の摩天楼オペラだ"という、強い決意表明のようなものを感じました。そこからさらに進化させていこうと。

響:僕は、作曲はしないので、方向性的な部分の話になるんですが。前作で軸ができあがったと言えるので、今回は苑さんの言うように、ラウド色が強くなっているとは思います。

JaY:自分は自分が聴いてきた音楽でしか、音楽を作れないんで、それを摩天楼オペラでうまくミックスさせることを心掛けて曲を作りました。それは"ラウド"とはひと括りにはできない、なんて言ったらわからない......言葉にはできないんですけど。でも簡単に言うと"ラウド"ですね。

-なるほど?

苑:"こういう曲に5人の色を入れていきたいんだよ"という話はしていましたね。5人の色を1個にまとめる、こういうことって抽象的な話じゃないですか。僕がメロディとコードを持ってきて、こういうJaYの得意なギター、響の得意なドラム、そこに燿さん、アヤックス(彩雨)には、今までの摩天楼オペラの色、自分の色をそのまま入れてほしいということは伝えました。

彩雨:僕的には特に何も変えてないというか、その曲の持ってる世界観を引き出すというアプローチの仕方については、意識的に変えようと思ったことはないですね。無理に新しいことをしようとすると、曲がいびつな形になっちゃうんで。

苑:でも、制作の最初の頃に"今っぽいキーボードの音とはなんぞや? 今流行ってる音ってどういうことなんだろう?"みたいな話し合いはしたよね。それでちょっと、少し作ったりもしてみたじゃん。

彩雨:たしかに、そういう話をしたのは覚えてる。

苑:それが全部ハズレだったというか、僕らがやりたい音ではなかったというか。

彩雨:"今っぽさ"って、僕の中にはなかったんですよね。"今っぽいシンセ"とは何かって話にもなるけど、シンセ自体が新しいか古いかという話ではなく、それはシンセの裏にある音像の話だったりするんですよ。僕の中での"シンフォニック論"もそうなんですけど、オーケストラを入れればシンフォニックになるわけではない。......これはたぶん僕にしかわからないことだと思うんですけど(笑)。だから周りの新しい古いには、変に惑わされないで、曲と会話をすることを常に意識して心掛けるようにしてますね。

燿:JaY君と響君とも、もう2年近くは一緒にいるので、どういうプレイをするかっていうのはわかってはきてるんですけども、細かい音とかもちゃんと聴いて、それに対して自分がどう合わせていくかとかは考えながらやってました。とはいえ、前のメンバーの頃からそこの方法論は変わってないですね。

-『Chronos』の楽曲の世界は繋がっているのでしょうか?

苑:そうですね、楽曲がすべて完成して曲順を決めるときに、起承転結がもう見えていたんです。僕は"EP"というより、"ミニ・アルバム"と呼んでしまう世代なんですけど、"ミニ・アルバムは、コンセプト・アルバム"というイメージがどこかにあったんです。この楽曲なら、ひとつのストーリーとして成り立つんじゃないか、(曲のイメージが)恋愛に近いなと行き着いて、流れができたんです。

-表題曲「Chronos」について聞かせてください。先程おっしゃっていた"ラウド色"を感じる1曲になっていると思います。

JaY:ブレイクダウンは、これまでの摩天楼オペラになかったかな? あったかな......?

苑:ないない(笑)。

燿:そこは本当にパッと聴いてすぐわかるところだと思うんですけど、それ以外の部分も、JaY君のギターにしても響君のドラムにしても色が強い。そのうえで、全員の色がちゃんと表に出てる状態が一番いいと思うんですよ。全員の音をちゃんと聴いて、自分の色を出すことを、ずっと考えてやってました。

響:ブレイクダウン自体が、いわゆるハードコアやメタルコア由来のものなんですよね。僕はそっち(のジャンル)をずっとやってきていたけれど、それを自分から持ち込むつもりはなかったし、今回もJaYさんから提案があったときも、消極的でした。

-それはなぜでしょう?

響:音楽性としては大好きなんですが、日本のメロディを基調としたヴィジュアル系をやるうえでは、それは取り入れるべきではないと考えていました。だけど、そこからみんなでいろいろアレンジして検討した結果、自信を持って"摩天楼オペラ"として成立させることができると感じたし、僕が得意なドラミングを全面に押し出せたという感覚ですね。

彩雨:僕も曲を作るときは結構流行りの路線とか意識しますし、ブレイクダウンが入ることは最初っからウェルカムだったというか。けれど、この曲にもしもシンセがなかったら、まったく違う印象というか、自分で言うのもなんですけど、僕がシンセ入れるとやっぱり"摩天楼オペラ"になると思うんですよ。要するに、僕が摩天楼オペラっていうことで(笑)、ぜひリスナーというか、読者の方も安心して聴いていただきたいなと思います。