INTERVIEW
"マガツノート" 野島健児 × HAZUKI 対談
2023.12.14UPDATE
"マガツノート"ではこんなにへヴィでラウドな音楽を楽しむことができるんだよ、って(HAZUKI)
-ちなみに、この「真月」の詞はカタカナと漢字とひらがなが巧みな形で使われているところも大きな特徴です。より深くこの内容を読み解いていくためのヒントを、何かしらHAZUKIさんからいただくことは可能でしょうか。
HAZUKI:んー。たぶん、これは読み解けないと思います。というか、読み解こうとするよりも、歌として耳で聴いたり、歌詞として目で見て楽しんでもらえるように、カタカナ、漢字、ひらがなを混ぜて作ってますから。字面から感じる不気味さであったり、いろいろと直感的なところでこの詞の世界を感じてもらって、その結果この曲を聴いた人の中にどんな画が浮かぶのか? っていうのがすべてです。逆に言うと、正解はこれですみたいなものがあるわけではないですね。どうぞ自由にお楽しみください(笑)。
-だとすると、野島さんはこの「真月」を歌うことになられたときに、どのようなスタンスで向き合っていくことになられたのでしょうか。
野島:まず、これだけロックな曲は今までそんなに歌い慣れていないというのがあったので、どういうアプローチで歌っていけばいいんだろう? っていうことは考えました。もちろん、ガイドの歌も聴いて参考にさせてはいただいたんですが、基本的に「真月」は幸村というキャラクターありきの歌ですからね。そのキャラクターの振れ幅の中でしか歌えないという制約があるので、単にいちシンガーとして歌うのとは違うところがやはり難しかったですし、かなり悩みました。ディレクターさんと相談させていただきながら、何回か試させていただきつつ幸村のキャラクターを最も生かせる歌い方、幸村というキャラクターにできるだけ寄り添っていく歌い方を自分なりに模索していった感じです。
-「真月」は六道閹としての曲でもあるので、歌については3人で歌われているところも大きな特徴ですよね。
野島:それもあって、レコーディングでは途中でキーを変えたりもしたんですよね。ちょうど3人の声が合うところで録っていくことになりましたけど、これだけ曲がロックだとどうしても歌っているうちに気持ちが乗ってきて、つい熱く歌ってしまいそうになるんですよ。でも、幸村は決して大口を開けて豪快に歌うようなキャラクターではないので、気持ちは盛り上がりつつも歌の面ではブレーキをかけながら、それでいて抑え切れない感情も少し見え隠れするし、目立つべきところでは目立って、というような幸村としての歌い方に徹してレコーディングをさせていただきました。
-お話をうかがっているだけでも、歌う側としては非常に複雑なコントロールが求められるレコーディングであったのだなということが窺えます。
野島:たしかに、これまでも声優としていろいろなキャラクター・ソングを歌わせていただいてきてはいますが、ここまで繊細に"ここには何回ビブラートを入れて、こっちはストレートに"と厳密なレコーディングをしたのは初めてだったかもしれません。その甲斐あって、時間はかかりましたが美しい仕上がりになって良かったですよ。
HAZUKI:実は僕、まだ野島さんが歌われたものって聴いてないんですよ。それ、早く聴きたいなぁ。今の段階だと、自分の歌に野島さんの台詞が乗ってる「真月(<マガツノート:DRAMA>)」しかまだ聴いてないんで。あれもカッコ良かったですけどね。いやー、ほんとすごく楽しみ!
-ちなみに、ヴォーカリスト HAZUKIの立場からすると、今しがた野島さんが語られていた歌録りエピソードはどのように受け止められました?
HAZUKI:とても真似できない技術だなと思いました。僕はそんなこと考えながら歌うなんて、絶対できないんで。幸村みたいに静かに喋る人は、そりゃ声を張っては歌えませんもんね。むちゃくちゃ難しいんだろうな、って思います。そういえば、この間僕は野島さんについて書かれたWikipediaを読んで驚いたんですけど、歌のキーがファルセットだとGの7まで出るってすごくないですか??
野島:えっ、そうなんだ? Gの7って自分では知らなかった(笑)。
HAZUKI:それって、Mariah Careyと一緒とかですよ。驚異的です。
野島:へー。普通のレンジっていうのが、どのくらいなのかがまず僕はよくわかってないんですけどね。おそらく、そのデータはボイトレの先生に測ってもらったものだと思います。そっか、すごいんだ。だったら自慢しようかな(笑)。
-声優さんでも、ヴォーカリストでも、喉を使ってプロフェッショナルなお仕事をされている方々に対してはある種の憧れがあります。当然、練習や鍛練によって磨かれていくところはあるにせよ、まずは天賦の才能としていい声を持って生まれてきているというのは、間違いなく強力なアドバンテージなのではないかなと。
野島:どうなのかな? 僕は声優事務所に入って仕事を始めるまでは、自分の声に対して特別な意識を傾けることってなかったんですよ。それに、歌うことはずっと好きでしたけど、その気持ちを遥かに上回るくらいの恥ずかしがり屋だったんで(笑)、カラオケで初めて歌ったのも18~19歳とかのときでした。
-HAZUKIさんは、自分の声が武器になると気づいたのはいつが最初でした?
HAZUKI:とりあえず、他の人より低いなっていうことしかもともとは感じてなかったです。昔は周りから"なんでそんなカッコつけた喋り方するの?"とか言われることもあったけど、自分からすると"これが普通なんです"みたいな。だから、その頃は自分の声ってイヤでしたね。今でこそ褒めていただけてますけど、っていう感じですよ。
野島:その感覚、僕もわかります。ドラマの仕事とかをすると、自分では普通に台詞を言っているつもりなのに"あ、そのイイ声やめてもらえませんか"みたいなことを言われるとき、わりとありますもん。
HAZUKI:えー、そんなこと言われるんですか!?
野島:なんか"イイ声すぎるとリアリティがなくなる"っていうことらしいんですよ。だから、そういうときはわざとガサガサした声を作って演技することもあるんです。
-それぞれにタイプは違えども、ともにイケヴォイスなおふたりでいらっしゃいますので、この"マガツノート"を通じた今後の展開にも期待したいところなのですが、今の時点で何かおふたりが"今後やってみたいこと"がありましたら教えてください。
HAZUKI:僕としては、今回"マガツノート"のファンの方々からリアクションをたくさんいただけたことが何より嬉しかったですし、"「真月」は幸村にすごく合ってる曲ですね"とか、あとは"「真月」でHAZUKIさんのことを初めて知って好きになりました"とか、そういう声をいただけるのって、とにかく作り手側からすると喜びだったんですね。だから、機会があるならまた曲も全然書きますし、ライヴの場とかで野島さんと一緒に歌ったりもしてみたいです。
野島:願望レベルの話でもいいんだったら、僕は六道閹を中心としたロック・ミュージカルみたいなものを作り上げることができたらすごくカッコいいんじゃないかな、と思います。それも、演奏は生バンドでやれたら理想ですね。
-そのような未来が訪れることを切に願っております。とにかく、"マガツノート"というのは戦国武将と近未来SF、そしてV-ROCKの要素を三つ巴に融合させた新しいメディア・ミックス・プロジェクトでもありますので、ここからのさらなる発展についてはいい意味で未知数なのではないでしょうか。
野島:僕自身もいろいろ初心者な面がありまして、いわゆるV系と呼ばれている音楽の世界とは今まで関われる機会が少なかったんですけど、この"マガツノート"を通してたくさんの曲を聴く機会に恵まれて、それによって"こんな世界観があるんだ"と気づくことがたくさんあるんですね。新しい世界を知って自分自身が自由になれる部分もあったりして、表現の幅という面でも今までにないものを取り入れることができるようになったので、もしまだ"マガツノート"の世界に触れたとがないという方は、まず音楽の面から1歩足を踏み入れてみるのも良いのではないかと思います。物語として見ても、個々のキャラクターが異なる個性をいろいろと表現していたりするので、そういったところを楽しんでいただきつつ、そこからライヴのほうにもぜひ遊びに来ていただけたらなと思います。
HAZUKI:ここまで音楽と絡み切ってるプロジェクトというのもなかなかないと思いますし、ヴィジュアル系という部分も主張してるコンテンツでもありますからね。まぁ、僕はいつもお世話になっているとはいえ、ぶっちゃけ激ロックを読んでいる人の中には"ヴィジュアル系ってどうなの?"っていう方もいらっしゃるとは思うんですが、僕としては橋渡しじゃないですけど、ヴィジュアル系にもこんなハードな音ってあるんだよ、"マガツノート"ではこんなにヘヴィでラウドな音楽を楽しむことができるんだよ、っていうことを見せつけていきたいですね。僕の存在をきっかけに"マガツノート"を知ってくれた人たちに関しては、ここからどんどん引きずり込んでいきたいです(笑)。
-では、そんなHAZUKIさんにもうひとつ質問させてください。"マガツノート"に登場する16キャラ(政宗、小十郎、秀吉、官兵衛、清正、光秀、利三、左馬之助、家康、忠勝、直政、織田信長、蘭丸、幸村、佐助、才蔵)のうち、もし異世界転生するとしたら誰を選ばれます?
HAZUKI:どうしよう? 誰が一番強いんですかね。強いキャラがいいです。幸村もいいんですけど、でも僕は名古屋(出身)なんで。そういう意味では尾張の信長かな。
-野島さんは、いち個人として異世界転生するなら誰を選ばれます?
野島:いや、できれば誰も選びたくないです(苦笑)。
HAZUKI:わかります。怖いですよね、死にたくないから(笑)。
野島:そう。ただ、私は幸村しか気持ちを通じ合えている人がいないので、ここは幸村を選びますよ。でも、僕も死にたくない派です(笑)。