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INTERVIEW

lynch.

2024.06.28UPDATE

2024年07月号掲載

lynch.

Member:葉月(Vo) 玲央(Gt) 悠介(Gt) 明徳(Ba) 晁直(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

かれこれ約20年。2004年に始動したlynch.は今夏でいよいよ大きな節目を迎えることになるが、彼らの攻撃態勢が緩むことはあるはずもない。前アルバム『REBORN』では、タイトル通りにバンドとしての新たなフェーズに突入したことを、音として具現化していたlynch.だが、今作『FIERCE-EP』でもまさに名は体を表すかのような音をここに仕上げてくれたのだ。今まで以上の激しさと革新的な響き。約20年の月日を経てなお先鋭的であり続けるlynch.の音を聴くがいい。

-今作『FIERCE-EP』には獰猛/激しい様を意味するタイトルが冠せられており、全体的にサウンドの印象はその名に違わぬものになっていると感じます。それと同時に、この作品は、このあとに続く"TOUR'24 THE FIERCE BLAZE"のことを、強く意識して作られた作品のようにも感じられるのですが、実際のところはいかがだったのでしょう。

葉月:ツアーのことはもちろん考えてないことはないですけども、これまでのlynch.の流れの中で出すなら今回はこのくらいのサイズ感で、これぐらい振り切ったものがいいんじゃないかっていうことは、予めバンド内で話してました。その結果として、それぞれの曲たちがツアー映えする内容になったんじゃないかと思いますね。

-なお、そんな今作におけるリード・チューンは2曲目の「EXCENTRIC」となりますが、全5曲とはいえ、どれも際立ったポイントを持った楽曲たちが揃っているなか、この曲に白羽を立てた理由はどのようなものだったかも教えてください。

葉月:一番変わってるからです。

-「EXCENTRIC」というだけあって、名は体を表しているということですね。

葉月:lynch.としては、今まで一番やってこなかったタイプの曲なんですよ。最初は1曲目の「UN DEUX TROIS」もリード曲の候補に挙がってて、どっちにしようか? ってちょっと悩んだんですけどね。でも、「EXCENTRIC」のほうがMVも面白いのが撮れるんじゃないかというのもあり、lynch.にとってより新鮮なこっちの曲に決まりました。

-「EXCENTRIC」については、まずリズムからして強い特徴が感じられますね。これは当初からこのリズムありきで生まれた曲だったのでしょうか?

葉月:そうです。去年秋のツアー("TOUR'23 THE CRAVING BELIEVERS")を回ってるときに、lynch.の古い曲をたくさんやったんですよ。で、そういうツアーをやってみて改めて思ったのが、lynch.はもともとニューメタルにすごく影響を受けてるバンドで、当時の僕が作曲するうえで、ルーツとしてたのはニューメタルだったんだよなってことだったんですね。ただ、ニューメタルの中でもRAGE AGAINST THE MACHINEとか、LIMP BIZKITみたいなラップ・メタル的なものとか、シャッフル気味なノリのものは当時のlynch.では取り入れてなかったんで、今回それをちょっとやってみたいなとなって作ったのが「EXCENTRIC」なんです。

-たしかに、この風合いを持った曲は今までのlynch.にはなかったかもしれません。

葉月:いわゆるヒップホップのノリって、あんまり得意ではなかったんですよ。でも、今だったらできるかもなっていうことでやってみたわけです。

-そうなってきますと、当然「EXCENTRIC」では、リズム・パートをいかに構成していくかという点が重要だったのではないかと思われます。ドラマーである晁直さんからすると、この曲と最初に向き合われたときにはどのようなことを感じられたのでしょうか。

晁直:シャッフルのリズム自体は今までにも全然なかったわけではないんで、特に深くは考えてなかったですね。まぁ、こういうリズムに対してあんなウワモノが乗ってくるパターンは、lynch.としては珍しいと思うんですけど、僕自身はそこまで何か特別に意識して叩く感じではなかったです。

-これだけハネの要素が入っていると、この感覚を醸し出すのは難しそうですのにね。

晁直:僕らがいるような界隈のバンドだと、基本的にシャッフルの曲は苦手っていう人が多いとは思いますよ(苦笑)。だからこそ、なおさらちゃんとしたシャッフル感が出せるようにという気持ちではいました。

-この「EXCENTRIC」の独特なノリを打ち出していくにあたり、明徳さんがベーシストとして重視されていったのはどのようなことだったのでしょうか。

明徳:lynch.の曲としては珍しく音数が詰まっていないというか、音に隙間がある曲なので、たしかにノリは大事な曲ですね。曲を作ってる葉月さんの癖というか、持ち味としてすごく伝わってくるのが、ミュートっていうんですかね? 空ピッキングするみたいなところがあって、そこのゴースト(ゴースト・ノート)の出し方をどうするか? っていう"葉月癖"を理解すると、あの独特なノリを出すことができるんです(笑)。

葉月:それってたぶん、最初のAメロとそのあとに来るイントロのことを言ってるんだよね? あれはほとんど一緒なんですけど、空ピッキングがあるかどうかっていうところだけが違うんですよ。ちなみに、デモだとベースは打ち込みだからそれは入ってないんです。おそらくAK(明徳)は、デモに入ってるギターのほうの音を聴いて、"ここはベースも空ピッキングするんだろうな"と汲み取ったんでしょうね。

-長年一緒にやってきているからこその阿吽の呼吸が生かされたと。

明徳:ちゃんと汲み取りました(笑)。

-一方で、「EXCENTRIC」についてギタリスト、玲央さんが大事にされたのはどのようなところでしたか。

玲央:緩急のつけ方ですね。さっきも話に出てましたけど、Aメロとイントロの、ああいうニューメタルっぽいRAGE AGAINST THE MACHINEとか、LIMP BIZKITとかみたいなノリと、それとは違う部分での疾走感が混在している曲なので、そこの差はギターでも意図的にパキッと表情を変えたいなと思ってました。

-悠介さんがプレイヤーとして「EXCENTRIC」と向き合われたときに、音色や弾き方の面で考慮されたのはどのようなことだったのでしょう。

悠介:思いついたことをやっただけなんですけど、ちょっと古臭いことをしたいなというのはあったんですよ。それがフレーズなのか、音色なのかって考えたときに、今までフランジャー(エフェクターの一種)を大々的に使うことが、自分のギター人生の中ではほぼなかったというか、LUNA SEAの「SLAVE」をコピーするときくらいしか使ってなかったので(笑)、この「EXCENTRIC」では使ってみることにしたんです。あそこはちょっと、自分としても時間をかけて音を作ったところですね。

-その結果、この「EXCENTRIC」では単なるニューメタルともまた違う、新たなlynch.の一面が革新的なサウンドとして提示されたように思います。また、ラップ要素があるという点では、歌詞を書かれる時点でも、葉月さんはこの曲だからこそのアプローチを取られたのではないかと思います。特に留意されたのはどのようなことでした?

葉月:でもこれ、ラップなのか? っていうと別に韻も踏んでないし、全部シャウトだし、全然ラップではないんですよね。そして、lynch.の曲であんなリズムで歌うのは珍しいし、面白いかなっていうのでやってみたんですけど、実際にはむちゃくちゃ大変でした(苦笑)。途中で"やめときゃよかったな"って思いましたよ。それも何度も(笑)。

-それは、いわゆる滑舌の部分が難しかったということでしょうか?

葉月:いや、そうではないですね。あの声色で、あのリズムで、この歌詞でっていう組み合わせが大変だったんです。今はできるようになりましたけど、レコーディングを開始した当時は全然できなくて、何度も失敗しながら、成長しながら、みたいなことを繰り返して"やっと録れた......!"っていう感じでした。仮歌を録らないから難しかったというのもあるにせよ、500テイク目くらいでようやくって感じでしたね。

-葉月さんほどのキャリアと実力を持ったヴォーカリストでも、そこまで苦戦されることがあるのですか。つまり、それだけの新領域に踏み込んだのがこの曲なのでしょう。なおかつ、この"EXCENTRIC"という曲タイトルと歌詞の内容も実に興味深い仕上がりなのですが、これはいかなる成り立ちを経て生まれたものになりますか。

玲央:順序としては歌詞のほうが先にできてたと思います。で、そのときは別のタイトルが付いていて、あとから"「EXCENTRIC」に変えます"って連絡が来たんですよ。

葉月:もっと正確に言うと、歌詞よりも先に"EXCENTRIC"っていう言葉が浮かんではいたんです。だけど、歌詞を書いていったら"なんか違うな"となって、その段階では"VILLAIN IN ME"っていう仮タイトルを付けたんですよ。

-まさに歌詞中にはそのフレーズも含まれておりますものね。

葉月:でも、サビのところで"Wow Wow Wow"から"EXCENTRIC"って叫んだ感じが気持ち良かったんで、意味とかは置いといてもこの曲は"EXCENTRIC"というタイトルにすることにしました。

-"EXCENTRIC"という言葉は、日常会話の中でも、"あの映画の内容はエキセントリックだよね"などというかたちで使われることもないわけではない単語ですが、葉月さんの中での"EXCENTRIC"という言葉に対するイメージは、端的に言うとどのようなものなのかもぜひ教えてください。

葉月:変わった人を指す言葉ですかねぇ。例えば、ヴィジュアル系シーンの中で見たら別に普通なんでしょうけど、自分たちのことはそこだけでは考えてないんで、音楽をしている人たち全体の規模で見ると、我々みたいにもういい大人がこんな真っ黒な格好でメイクしてギャーッ! ってうるさい音楽やってるとなると(笑)、それはやっぱり"変わってる"ということになるわけじゃないですか。lynch.とはそんな特異な存在ですよということを、"EXCENTRIC"って言葉で表したかったんです。

-今思うと、2015年にlynch.がシングル『EVOKE』をリリースした際、葉月さんは(「EVOKE」の)"真夜中 窓から月に手を伸ばす"という歌詞が当てはまるのは中二病の人だけだといったことを語ってくれていたのですけれども、あれから約9年が経った今、ここに完成した「EXCENTRIC」の歌詞もまた、いい意味で完全に中二病ですよね。"血染めで謡う俺はピエロ"で締めくくられているところなどは最高に痺れます。

葉月:そういうのって大事なんじゃないかと思うんですよ。キャラ立ちをちゃんとしたいんで。"VILLAIN IN ME"って歌ってる通り、世の中から見たら俺らなんて悪者ですから(苦笑)。悪としての存在感を際立たせたい、と思ってこう書きました。