DISC REVIEW
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インド哲学における五大元素としての空、風、火、水、地。あるいは中世欧州の錬金術師たちの基本概念であったという第五精髄。五体から成り、五本の指を持ち、五感を頼りに生きている人間は、どうも古今東西にかかわらず、"5"という数字に特別な力を感じてきたところがあるように思えるが、今ここにlynch.が完成させた3年ぶりのオリジナル・アルバム『REBORN』についても、どこか不思議な5の魔力が封じ込められているように思えてならない。ちなみに、彼らは2021年末から活休期間に突入したのち、昨年末の初日本武道館公演で復活した経緯があるものの、実際には2022年夏頃から今作の制作はスタートしていたという。そして、今作における大前提は"メンバー5人がそれぞれ楽曲をかたちにすること"だったのだそう。結果ここには晁直(Dr)がコンポーズを手掛けた斬新なものや、玲央(Gt)のミュージシャンとしてのバックボーンが窺える曲、明徳(Ba)の意外な一面が滲み出たナンバー、悠介(Gt)の音に対する美意識が具現化されたトラック、葉月(Vo)の中の先鋭性があふれ出たものなど、5人の持つ才覚がlynch.の音として力強く開花することになったと言えよう。その豊かな仕上がりたるや、五穀豊穣の如し。 杉江 由紀