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INTERVIEW

lynch.

2019.09.18UPDATE

2019年09月号掲載

lynch.

メンバー:葉月(Vo)

インタビュアー:杉江 由紀

なんと潔く、なんと凛々しく、なんと頼もしいことだろうか。lynch.というバンドは、その昔からエクスキュースを必要としないバンドとして、ここまでひたすら邁進してきたように思えてならない。作品制作に対する真摯且つ貪欲な姿勢といい、ライヴ・バンドとしてのストイック且つ勇猛果敢なあり方といい、彼らの呈示するロック・バンドとしての覚悟と誇りは、どんなときも彼ら自身に燦然とした輝きを与えてきた。このたび発表される、先だってのホール・ツアーの模様を軸とした映像作品『HALL TOUR' 19「Xlll-THE LEAVE SCARS ON FILM-」』を観ても、そのことは濃厚に伝わってくると言っていい。lynch.のlynch.たる姿を存分にご堪能あれ!

-今年6月にlynch.が4年ぶりに行ったホール・ツアーの模様を軸とした映像作品『HALL TOUR' 19「Xlll-THE LEAVE SCARS ON FILM-」』が、このたびBlu-ray盤とDVD盤にて同時発売されることとなりました。今作の中にはインタビュー映像や、オフショットなどのドキュメント的な映像もふんだんに織り込まれてはいますけれど、何よりライヴの音がリアルに再現されているという面で、観賞させていただきながら、サウンドについても迫力のある作品に仕上がっていると感じました。まずは、その点について今回どんなところに留意されたのかを教えてください。

そこの仕事は、このところ僕らのCDのミックスをエンジニアとしてずっとやってくれているЯyo(ex-ギルガメッシュ/Dr)君に投げたんで、僕らからは何も言ってないです。結局彼も演者だった人なんで、気持ちいいライヴ映像の音の響きっていうのを充分わかってる人だと思うんですよ。だから、実際仕上がってきたものに対してももの足りないとかそういうのは一切なくて、"さすがだね!"ってみんなで言って終わりました(笑)。

-では、仕上がった映像そのものについてはどのように感じられていますか? 観ていると、盛り上がっているお客さんたち越しでカメラがステージに向けられているアングルが、とても印象的でした。またとない臨場感が出ていますよね。

あれいいですよね。僕も観てて"監督あっぱれ!"ってなりましたよ。

-なお、"HALL TOUR' 19「Xlll-THE LEAVE SCARS ON FILM-」"は、東名阪の3ヶ所で開催されましたけれど、こちらの映像作品においては初日の中野サンプラザだけではなく、名古屋市公会堂、NHK大阪ホールといった全会場の模様が編集、収録されております。どこの映像をどう使うかということは、どのように決められたのですか?

それはだいたい僕が決めました。ツアーの前からあらかじめ、流れも含めてこの曲は中野、この曲は名古屋、そのあとにドキュメント、みたいな順番をiPhoneでバーっと一気に書き出して、それをメンバーみんなにメールしてから監督にも伝えてっていうふうに作っていったんです。でも、結果的には監督の意向で変わった部分もありましたね。正直ここまで東名阪の映像が入り交じるとは思ってなかったです。

-オーディエンス側からすると、全通まではできない場合も多いわけですから、各地の様子が楽しめるというのは嬉しいことですよ。

監督としてはあらかじめこっちが決めてた流れを踏まえたうえではあるんだけど、実際のツアーの展開を考慮したうえでこういう構成にしたっていうことみたいですね。彼は、このところのlynch.のMVも作ってくれている方で、その場でのひらめきがすごく多いんですよ。だから、今回も編集中にひらめいたことでこうなったんでしょうね。そういうプロならではの感覚は大歓迎ですし、より良いものに仕上がって良かったです。

-また、今作には打合せの様子などが収められているのも大きな特徴です。どれも裏側にあたる部分ですし、悠介(Gt)さんの足元にあるエフェクター類の並びや、玲央(Gt)さんのラックの構成、明徳(Ba)さんの楽器が特殊仕様になっていること、晁直(Dr)さんのセッティングなど、あんなにも細かいところまで垣間見ることができるシーンの数々は、ファンの方々からすると相当レアかと。

ライヴ本編だけじゃなく、その裏側っていうのもこの映像作品の中ではぜひ見せたかった部分なんですよ。あそこまでカメラが細かく入ったことは、これまでたぶんなかったですからね。スタッフとの話し合いとかのシーンもあるから、ステージがどうやって作られていくのかっていうこともわかって、きっと面白いんじゃないかと思います。

-AKこと明徳さんが、あそこまで細かくベースのパーツにこだわっているというのも、私は今回の映像で初めて知りました。

アホですよね、アイツ。あれを全部自分で作ってるんですよ? どんだけ時間あんだよ! って(笑)。

-いえいえ、アーティストならではのこだわりを真摯に貫くのは大変素晴らしいことですよ。ところで、今作には終盤に、ライヴ参線をされたオーディエンスの方の感想コメントもいくつか使われておりまして、その中には"ホール・ライヴならではの演出がすごかった!"というご意見がありました。初日の中野サンプラザ公演には私もうかがったのですが、たしかにあのライヴはライティングや映像の面での演出もかなり凝っていた印象です。そうしたことも踏まえると、この4年ぶりのホール・ツアーは、lynch.にどのような収穫をもたらしたと葉月さんは感じていらっしゃいますか?

ホール・ツアー自体はもちろん初めてじゃなかったですけど、ライヴハウスと何が一番違うかっていうと、ステージ上は、新木場STUDIO COASTとかZeppくらいのサイズのライヴハウスだったら何も変わんないんですよ。違うのは、お客さんたちがその場から動かないっていうことなんですね。上半身だったり手だったりは動いてるにしても、塊で前に押し寄せるみたいなことはないんです。そうやって自然と生まれる熱量は、やっぱりライヴハウスならではのものですから。自分自身も、そういうオーディエンスのカオスな状況を見ていてテンションが上がるっていうことはあります。でも、ホールの場合はどうしてもそれがないから、普段通りのライヴハウスでやっているときみたいな気持ちで臨んじゃうと、いろいろと違和感を感じることっていうのが出てきてしまいかねないんで、自分で気持ちを作ってアゲていかなきゃいけないというところがあるなと思いますね。それは、キャパがデカくなればなるほどコントロールが必要になってくる部分で、ホール・ライヴをやっていくうえでのテクニックとしてはすごく重要ですよね。

-中でも、そこはフロントマンの手腕によって大きく左右されることになるのかもしれません。

ライヴの規模に合わせて自分の気持ちを育てていくっていうのはほんと大事です。前に幕張(メッセ)でやったときも"あぁ、これはライヴハウスとは全然違うな"って感じたのと同時に、あの広がりのある独特の空間とか景色とかっていうものに対して、僕はグッとくるものがありましたから、まずはそこで自分の気持ちをアゲていった感じでした。

-先だっての中野サンプラザ公演については"激ロック"でもレポートをさせていただきましたが、ここで名古屋と大阪でのライヴの手応えが、どのようなものであったかということも少しうかがわせてください。

うん、どこも良かったですよ。名古屋は初めてやったとこで、作りがちょっと海外っぽい雰囲気でした。って言っても、海外は行ったことないですけど、イメージ的にね(笑)。大阪に関してはこの映像作品の中のインタビューでも言っている通り、僕にとって大阪NHKホールは、"最初にワンマンをやったホール"なんですよ。4年前にやった初ホール・ツアー("HALL TOUR'15「THE DECADE OF GREED」")の初日があそこだったんです。その当時は会場入りしたときに"なんてデケぇ場所なんだ......!"って感じたはずなのに、今回は全然そうは思わなかったんですよ。

-その現象は、思うにlynch.と葉月さんの成長を意味していたのではないでしょうか。

あれは嬉しかったですね。俺たちも前よりはデカくなれてんのかなって感じられたというか。

-ここ数年でlynch.は、ライヴ・バンドとしての実力をさらに底上げしただけでなく、客層の開拓もずいぶんと進めましたしね。今や場内では野太い歓声も多く響くようになってきていますし、ジャンルや性別の壁を超えた領域で、多くのファンの方たちに支持されてきているように感じます。その実感を葉月さんがご自身でも得ることはありますか?

どうだろうな......。まだそのジャンル的な括りから抜け切れているわけではないと思いますけど、その中でもレベルを上げることはできているのかなと感じます。規模とかの面ではね。でも、全然まだまだです。

-ちなみに、lynch.は15周年を迎えることになるわけですが、いわゆる兎と亀の話になぞらえると、このバンドは完全に亀タイプにあたりますよね。

亀でもかなりの亀ですよ(苦笑)。

-もっともそれだけに歩みは極めて着実ですし、誠実です。

そう言ってもらえるのは、それはそれでありがたいんですけど、1回くらいブレイクしてみたいですねぇ。ひと晩明けたらもう武道館のステージに立ってました! っていうくらいの感じで(笑)。

-とはいえ、lynch.はあのホール・ツアーをもって、最新アルバム『Xlll』(2018年リリース)で呈示した孤高なる世界を、見事に総括することに成功したのではないかと思いますので、今回の映像作品『HALL TOUR' 19「Xlll-THE LEAVE SCARS ON FILM-」』を発表することで、長きにわたったひとつのタームを完結させ、確実に次の高みへと向かっていくことになるのではないでしょうか。

基本的にバンドとしてやっていること自体は、ずっと変わってないような気もするんですけど、その質を『Xlll』とか、それに伴ったツアーをやっていくことで、高く上げられたんじゃないかなという手応えはあります。かつて『GALLOWS』(2014年リリースの7thアルバム)を作ったときにこれと近い感覚がすごくあって。当時はリリース前からTwitterとかでも、"『GALLOWS』以降と以前で分けられることになるくらいのアルバムになる"って言っていたし。今でもそれは事実だし、間違いないと思っているんですけどね。『Xlll』もまた、lynch.にとって非常に重要なポイントに成り得る作品になったなと思ってます。

-"最新作こそが最高作である"ということは、古今東西においてたくさんのアーティストたちが口にしてきた言葉となりますが、lynch.もその事実を『Xlll』ではっきりと証明したことになりますね。

しかもね。我ながらlynch.が素晴らしいと思うのは、内容もそうなんですけど、実は数字も最新作が最高なんですよ。

-15年連続で右肩上がりというのは、つくづくすごいことです。

音源が売れないって言われてるこの時代に、そこはすげぇなって思います。おまけに、発売日にサブスク解禁してそれですからね。これは過去にブレイクがなかったからこその状況でもあるんですけど(苦笑)。

-葉月さんの中での"ブレイク"とは、具体的に何を指すのです?

数字です。売る枚数と動員。この両方をどこまで上げられるかですよ。

-もっとも、枚数という部分については相対評価的な側面もあるのではないでしょうか。20年前の1万枚と現在の1万枚では意味合いがまったく違うと思うのです。

たしかに。それは全然違うでしょうね。今の1万って、昔で言う10万くらいの感じなんですかね? 当時は10万でスマッシュ・ヒットって言ってましたし。