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INTERVIEW

lynch.

2019.09.18UPDATE

2019年09月号掲載

lynch.

Member:葉月(Vo)

Interviewer:杉江 由紀

15周年イヤーは盛り上げっぱなしでいきたいです


-そんななかにあって15年連続での右肩上がり状態を更新しているlynch.のすごさ。その根源はどこにあるとご本人は感じていらっしゃるのでしょう。

完璧とは言わないまでも、需要に応えようとするバンドだからっていうのはあるんじゃないかと思います。っていうのは、lynch.の場合たまたま需要と実態がリンクしているというわけじゃないんですよ。ファンの求めてることに対して、バンド側から発信することを意図的に合わせにいってますからね。そこなんじゃないかなと。

-なんとも勇気ある潔い発言ですね。ユーザー側に合わせにいっているということを明言するロック・バンドには、あまり会ったことがありませんよ。

僕もあんまり言う人いないだろうなと思います(笑)。でも、逆にそこがロックの一番危ういところなんじゃないかな? っていう気もしてるんですよ。バンドとファンの求めてることがすれ違って、そのまま進み続けていった先に待っているのは解散っていうパターン。とにかく、これまでにそれをいくつも見てきましたから。いくらバンド側のエゴとかを優先したところで、そうなっちゃったら意味がないかなって僕は思っちゃいます。

-ごもっともですね。

それに今のlynch.に求められていることっていうのは、もとを正せば僕やメンバーみんなで作り上げてきたものなので、当たり前ですけど、それを追求してくことに対する抵抗はないんですよ。あとはこのまま求められることに対してより応えていくことで、さらに数字を伸ばしていければ、それが一番なんじゃないかと思ってます。みんなの期待に応えるっていう姿勢をかなぐり捨ててまで、やりたいことっていうのもないですし。みんなが望むストライク・ゾーンにどれだけいい球を投げられるのかっていうのが、僕にとっては大きな快感になってきてるんですよ。"でしょ? これだよね、待ってたのは"っていう(笑)。

-lynch.は、希代のロック・バンドであると同時に、最高のエンターテイナーでもあるということなのですね。

人とはちょっとそこの楽しみ方が違うのかなぁ。"俺はこれを表現したいんだ、わかってくれ!"みたいなのは全然ないです。それよりも何よりまずは売れたいし、バンドとしてはその先っていうのもまた大事なわけじゃないですか。

-その先とは、おおよそどんなヴィジョンを描いていらっしゃるのでしょうか。

いつまでにどんなふうにとか、そういう具体的なことは何も見えてないです。今年の夏は"ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019"に初めて出ましたけど、例えばああいうところにポンと出ていったときに初めてlynch.のことを観た人でも、見た目と音楽とイメージのすべてがちゃんとリンクするようにいられるのが、理想だなと思いますね。lynch.をひとつのエンターテイメントとして確立させるところまで、ここから持っていきたいんです。

-フェスに出るとなると、アーティストによっては、"普段とは少し違ういかにもそれ的な仕様"で出演するケースもあると思うのですよ。lynch.の場合――

そういうのはナシです! 考え方の次元からしてそれじゃダメですね。もちろん方法論のひとつとしては、フェスでその場のお客さんたちに対するアプローチを積極的にして、動員に繋げるっていうやり方もあるとは思いますけど、今のlynch.が目指しているのは、そことはまったく違います。そして、フェスとかに出たときよくありがちなのが、"ヴィジュアル系なのにカッコ良かった"っていう反応なんですよ。"音はめっちゃメタルなんだけど......"とかね。そういう意見が出るっていうことは、つまり現状では、見た目と音とイメージがうまく"巡っていない"っていうことの証拠じゃないですか。

-なるほど。円滑にリンクしていないこと自体は事実かもしれませんが、そうしたギャップを醸し出していることが、インパクトや強い存在感に転じている可能性もあるとは思うのですけれどね。

んー、どうだろう? 僕からすると、そこはlynch.にとっての足かせにしかなっていないと感じるんですよ。

-いかんせん、未だにヴィジュアル系というものに対する偏見が根強いところはありますものね。

じゃあこの音で見た目が化粧してなかったら君はハマってたのかい? ファンになったのかい? っていうことになっちゃうわけでね。見た目も込みでもっと違う受け入れられ方っていうのが、あるんじゃないかと思うんですよ。

-それは間違いなくあると思います。例えば、THE MISFITSだったり、MARILYN MANSONだったりにしても、あのヴィジュアルであの音だからこそ、あれだけの人気を誇っているところが、多分にあるのではないでしょうか。

そうそう、SLIPKNOTとかもね。あのくらいの強いエンタメ性を持ちたいんですよ。だけど、まだlynch.はそこまでには辿り着けてない。

-辿り着くために、ここからのlynch.には何が必要になってくるのでしょうね?

それはわかんないです(苦笑)。わかってたらもうやってるし。でも、次の作品ではできるだけそこを目指していこうと僕は思ってます。

-これは、頼もしいお言葉が出てまいりましたね。

この音にしてこのルックスあり。そして、その逆もまた然りというものを表現していきたいんですよ。考え方としては映画とかを作っていくような感じにより近づいていくことになるのかな。それこそ"バットマン"シリーズの"ダークナイト"とかね。あの内容でバットマンが普段着で普通の車に乗って出てきたら嫌じゃないですか。

-興ざめもいいところですよ! そういう意味でも美術、衣装、美粧などの"見せ方"は、lynch.にとってもまた大切なのものなのですね。

そうやって考えると、やっぱり"化粧してるのに本格的な音を鳴らしてるバンド"っていうのは、lynch.にとって最低の見られ方なので、ほんとそれはダメ。褒められてること自体は嬉しいですけどね。そんな次元じゃなく、もっと上を目指さないと。

-重々承知いたしました。では、ここからは10月より始まる次回ツアー"ZEPP TOUR'19[XV]act:0-OVERTURE-"についてもうかがいましょう。まさに、これはlynch.の未来へと繋がっていくものになっていくのではないかと思いますが、葉月さんとしてはいかなるスタンスで臨みたいとお考えですか。

とりあえず自分の歌に関しては、このところ"うまくなりたい!"という欲が、やたらとすごいんですよ。その姿勢をどれだけ実際のライヴに反映させていけるかっていうのも、個人的にはひとつの課題としてありますし、最近は1本ずつのライヴもそうだし、1本リハをやるごとにも"ここは前よりレベルアップできたな"と自覚できているので、そこは今度のツアーにもちゃんと繋げていきたいです。

-15年もやってきて、すでにヴォーカリストとしての評価も充分に高いというのに、それでもまだまだ伸びしろがあるというのは、驚異的ですねぇ。

向上心を持ってそれを可能な限り実践してくことくらしいか、できないっていうところもありますよ(笑)。だって仮にアニメのタイアップを取りたいとか思っても、それは僕の力でどうにかできることではないことですから。僕にできることと言えば、曲を作って歌うくらいのことしかない。ライヴに関して言うと、僕はひたすらお客さんたちに楽しんで帰ってもらいたいんですよ。それがなぜかっていったら、"また来てほしい"から。そのためには、歌のピッチが外れてお客さんが"あれ!?"ってなる瞬間を徹底的に排除したいわけですよ。あるいは、もっとすごいシャウトをできるようになったらみんなも喜ぶだろうし、なるべく喉にダメージが少ない歌い方を身につけられれば、それだけツアーのコンディションも保てるので、ツアーを前にして僕が準備できるのは、そういうところに尽きますよね。

-"ZEPP TOUR'19[XV]act:0-OVERTURE-"では、その成果を思い切り感じさせていただけますと幸いです。今回はZeppツアーということでもありますし、ライヴハウスにおける最強のlynch.のパフォーマンスの真骨頂を味わいたいです。

ここ最近やってきたことをすべて発揮したいです。今真骨頂って言っていただけましたけど、lynch.と言えば、ライヴハウスで思いっきり暴れられるみたいなところをいいと言ってもらえることが多いので、来てくれた人たちに、手放しで何も考えず、とことん楽しんでもらえる空間を作っていこうと思います。そこはセットリストの内容も含めてね。来てもらえたら、絶対スカッ! とできるものになると思いますよ。

-"ZEPP TOUR'19[XV]act:0-OVERTURE-"と冠されているくらいですから、ここから始まる15周年イヤーへの期待も高まりますね。

ここからは、来年やっていくライヴにも、すべて"[XV]act:~"っていうタイトルが付いていくことになるはずですし、今回は"act:0"なので序曲っていう感じですかね。せっかくですから、この15周年イヤーは盛り上げっぱなしでいきたいです。さっきも話しましたけど、近い将来には『Xlll』に続く次の作品も出ることになると思うので、もう今はlynch.の次とか未来とかにしか興味ないですね。周りのことも気にならないし、そんな余裕もないし、少なくとも僕は自分たちのことで精一杯です(笑)。