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FEATURE

Pay money To my Pain

2023.11.09UPDATE

2023年11月号掲載

今なお音楽シーン/ストリート・カルチャー最前線からリスペクトされ続ける、Pay money To my Painの軌跡を辿るドキュメンタリー映画"SUNRISE TO SUNSET"公開

Writer : 村岡 俊介(DJ ムラオカ)

全編ノーカット、"BLARE FEST. 2020" P.T.P一夜限りの復活ライヴ――


活動を止めて今なおシーン最前線のバンドマン、さらにはミュージック・シーンやストリート・カルチャーのキー・パーソンたちからリスペクトされ続けるPay money To my Pain(以下P.T.P)。そんな彼らの結成から活動休止に至るまでのヒストリーと、彼らがシーンに残した軌跡を辿るドキュメンタリー映画"SUNRISE TO SUNSET"が11月17日に劇場公開となる。

まずいきなりだが、この映画の中心人物、P.T.Pのヴォーカル Kこと後藤 慶はすでにこの世にいない。彼は2012年12月30日朝、急性心不全のため横浜市内の自宅で逝去した。31歳の早すぎる、あまりにも悲しい出来事であった。この一報に驚きはしたものの、身を削るような彼の音楽への向き合い方を知っていただけに、悲しみのなかにもどこか腑に落ちる自分がいたのも確かだった。とはいえ私自身、身近な人間の死をあまり経験してこなかったこともあり、どこか受け止めきれておらず、なんだか宙ぶらりんな気持ちでいた。しかし彼への想いや追悼をステージ上でバンドマンが語るのを聞き、ファンとライヴハウスで悲しみを分かち合った。そうやって彼に関わる人たちと気持ちを共有できたことで、私自身救われたのかもしれない。

逝去の翌年11月、Kが生前ヴォーカルを録り終えていた7曲と、Kがリスペクトしてやまないヴォーカリストたちをゲストに迎えて4thアルバム『gene』を制作。そのリリースに合わせて約1年ぶりに、残されたメンバーのPABLO(Gt)、T$UYO$HI(Ba)、ZAX(Dr)の3名に取材を行った(※2013年11月号掲載)のだが、それからまた約10年の時を経て、当時の状況やKへの想いをこうやって映像で観ることで、メンバーの心情の吐露に取材中、胸を締めつけられていたことを私に思い出させてくれた。
『gene』リリース後、Kの命日の12月30日、3名はZepp Tokyoでワンマン・ライヴ"From here to somewhere"を開催。PABLOが語っていた"P.T.Pは4人でこそP.T.P"というメンバーの思いを再認識させる公演であったが、その公演を最後に惜しまれながらも活動休止となる。

映画は、メンバーやバンドに近しい人物たちのインタビュー、そして過去の貴重な映像を通して、P.T.Pというバンドの成り立ちを振り返るところから始まる。結成のきっかけや経緯、T$UYO$HIとPABLOのKとの出会い、思い出をリアルに語っている。まさにドラマの世界の話のような結成ストーリーなのだが、音楽に対する真摯な思いで繋がっていたとことが、この作品を観ていただくとわかると思う。

話は前後するが、私のP.T.Pとの出会いは1stシングル『Drop of INK』(2006年リリース)のCDを手に取ったことに始まるが、Kとの出会いに関しては前バンド GUNDOGまで遡る。GUNDOGのライヴはKのLINKIN PARKのヴォーカル、Chester Benningtonを彷彿させる卓越したヴォーカル・スキルがバンド内でもひと際目立っていた。そんな彼の新バンド P.T.P結成に注目していたが、1stシングル収録のTrack.1「Black sheep」の怒りと悲しみを纏ったアグレッシヴなサウンドに、一発KOされたのは言うまでもない。リリース当時いち早く「Black sheep」をDJイベントでかけ倒していたのも懐かしい思い出だ。

P.T.Pのメンバーと初めて直接会ったのは、2009年秋に初開催した"激ロックFES."である。当時若手最右翼のcoldrain、Crossfaith、そしてイタリアから招聘したHOPES DIE LASTを抑え、P.T.Pにイベントのトリを飾ってもらったが、その圧巻のステージは今でも鮮明に記憶している。そのライヴ以降、ライヴハウスや取材、時には個人的に酒を酌み交わしたりとお付き合いさせてもらったが、PABLO、T$UYO$HI、ZAX、そしてK、メンバーみなこの映画のまま、音楽やバンドにまっすぐに、情熱的に向き合っていた。当時からずいぶん時が経ってしまったが、この作品を観て、彼らとの思い出がつい昨日のことのように、鮮明に蘇ってきた。

Pay money To my Pain【Black sheep】


監督の茂木 将氏いわく、この映画はcoldrainが地元名古屋で初めて主催したフェス"BLARE FEST. 2020"で一夜限りの復活を果たしたP.T.Pのライヴ収録を経て、その直後のコロナ禍で先の見えない不安のなか、自分にできることとして映画化への構想が生まれたとのこと。監督はP.T.Pのラスト・アルバム『gene』のリリースに際し、メンバーとゲスト・ヴォーカルのインタビューのディレクターを担当しており、また活動休止ライヴでもカメラマンとして参加しているなど、メンバーたちのその後と深い関わりを持った人物だ。今作は、そんな監督だからこそ作り上げられた、P.T.Pの軌跡を辿るドキュメンタリー映画となっている。

メンバーの人となりがわかるバンド・ストーリーや、Masato(coldrain/Vo)、JESSE(The BONEZ/RIZE/Vo/Gt)、Taka(ONE OK ROCK/Vo)など彼らと同じ時代を生き多大なる影響を受け、現在もシーンを支えている多くのミュージシャンたちがP.T.Pへの想いを綴るインタビュー、そしてなんと言ってもcoldrain主催の"BLARE FEST. 2020"。映画本編後半では、その公演で一夜限りの奇跡の復活を遂げたP.T.Pのパフォーマンスを初公開、しかも全編ノーカットでフィーチャーされている。『gene』でゲスト参加したアーティストが、ライヴでもそれぞれの想いを込めたパフォーマンスを披露し、最後はKの映像とヴォーカルで締めくくるという感動的な流れだ。会場中のアーティスト、スタッフ、オーディエンス全員の心がひとつになった温かなその空気はきっとKのもとにも届いたことだろう。このライヴ・カットは映画のクライマックスであり、このシーンなくしてこの映画のラストはありえないと言っても過言ではない。

P.T.Pを愛するファンは誰がなんと言おうと"SUNRISE TO SUNSET"を観に行くだろう。もちろん彼らにも観てもらいたいが、出演しているバンドやアーティストのファン、2000年代初頭の日本のラウドロック黎明期~全盛期を実体験していない音楽ファンにも映画館に足を運んでいただき、ぜひPay money To my Painに触れてもらいたい。


Pay money To my Pain / 映画「SUNRISE TO SUNSET」予告編


▼映画情報
"SUNRISE TO SUNSET"

11月17日(金)より新宿バルト9ほかにてロードショー
監督:茂木 将
プロデューサー:田中健太郎
出演:Pay money To my Pain / JIN(High Speed Boy inc.) / Kihiro(Supe) /
JESSE(The BONEZ/RIZE) / Kj(Dragon Ash/The Ravens) / Hiro(MY FIRST STORY) /
Hiro(SHADOWS/ex-FACT) / Kazuki(SHADOWS/ex-FACT) / Masato(coldrain) /
葉月(lynch.) / MAH(SiM) / Koie(Crossfaith) / Teru(Crossfaith) / N∀OKI(ROTTENGRAFFTY) /
NOBUYA(ROTTENGRAFFTY) / AG(NOISEMAKER) / Yosh(Survive Said The Prophet) /
Taka(ONE OK ROCK) / Kentaro Tanaka(Warner Music Japan)
配給/宣伝:SPACE SHOWER FILMS
©2023 Warner Music Japan Inc.
映画公式X(Twitter)はこちら

▼映画情報
"SUNRISE TO SUNSET"

11月17日(金)より新宿バルト9ほかにてロードショー
監督:茂木 将
プロデューサー:田中健太郎
出演:Pay money To my Pain / JIN(High Speed Boy inc.)
Kihiro(Supe) / JESSE(The BONEZ/RIZE) /
Hiro(SHADOWS/ex-FACT) / Kazuki(SHADOWS/ex-FACT)/
Masato(coldrain) / 葉月(lynch.) / MAH(SiM) /
Koie(Crossfaith) / Teru(Crossfaith) /
N∀OKI(ROTTENGRAFFTY) / NOBUYA(ROTTENGRAFFTY) /
AG(NOISEMAKER) / Yosh(Survive Said The Prophet) /
Taka(ONE OK ROCK) / Kentaro Tanaka(Warner Music Japan)
配給/宣伝:SPACE SHOWER FILMS
©2023 Warner Music Japan Inc.
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