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LIVE REPORT

Survive Said The Prophet

2021.02.21 @LIQUIDROOM ebisu

Writer 吉羽 さおり Photo by toya

2021年にバンド結成10周年を迎え、10年の軌跡を辿ることで現在地を再確認し、新たな未来へと繋いでいく意味でのリテイク・ベスト・アルバム『To Redefine / To Be Defined』をリリースしたSurvive Said The Prophet。リリースに伴ったワンマン・ツアー"Redefine Tour 2021"の最終日となる東京公演が2月21日、恵比寿LIQUIDROOMでガイドラインに沿った形で開催された。これまでは黒、ダーク・トーンのイメージが多かったが、ステージに登場した5人は全員白い衣装に身を包んでいるのが新鮮だ。だがそれ以上に驚いたのが、Yosh(Vo)が自らギターをかき鳴らして「Awake You Ask Kinda Awkwardly」をスタートしたこと。今回のツアーに相応しい始まりだ。こうしてバンドの歴史をしっかりと背負ってパワフルな歌と、ギターとを響かせると、そこから怒濤の勢いで「T R A N S l a t e d」、「found & lost」とサバプロの曲の中でもヘヴィで、構築的なアンサンブルで見せる曲を連投する。感染症対策で、フロアの観客は歌ったり、声を上げたりすることはできないが、そのぶんコブシを高く突き上げ、ハンド・クラップで音に食らいついていく。その姿にYoshは"さすがだな"と笑顔を見せた。そこから、バンドのしなやかなグルーヴで身体を揺らしていく「The Happy Song」や「Right and Left」が続く。冒頭から、多種多様なキラーチューンが投下されていくのは、コロナ禍で制限される動きがある観客には酷な話である。ただそんな思いを吹っ飛ばすように、「NE:ONE」では包容力のあるサウンドとスケール感の大きいメロディでフロアを丸ごと抱きしめ、また憂いを解放させる。ステージの彼らからは、マスク越しでもいろんな表情をした観客の顔が窺えるのだろう、Yoshは"ちょっとのことで、俺は救われているんだよ"と言う。スロウなビートで編み上げていく「MIRROR」のエモーショナルなメロディもまた染みる。

「HI | LO」でスタートした中盤は、サバプロのアレンジの多彩さ、それをディープに表現していくバンド・サウンドの醍醐味が冴える曲が並ぶ。特に「red」から「Follow」へと続いていく流れは美しい。アンビエント的に浮遊するサウンドから、アンセミックなシンガロング、そして歪んだギターの叫びとシャウト・パートへと熱を帯びていく、1曲の中で大きなストーリーが静かに確実にうねり出す展開の「red」はライヴを重ねるごとに、スリリングな鋭利さを増している。痺れるような余韻から続く「Follow」でのメロディは甘美で、カタルシスを増す。差し込まれるTatsuya(Gt)が奏でる「上を向いて歩こう」のギターのフレーズもグッと眩しく響いてくる。スロウ~ミドル・テンポの曲たちだが、観客のテンション、高揚感を落とすことなくどっぷりとサウンドの世界観に浸らせることができるのは、培ってきたバンド感があってこそだろう。そして後半は、「Mukanjyo」で再びヘヴィな音量を上げ、"しっかりこの瞬間、本物にしてやろう"というYoshの言葉に大きな手拍子が起こる。「Conscious」、「UPLIFTED」をじっくりと描き、"またやりましょう"と言って、本編ラストには彼らにとって大事な曲である「3 A.M.」を披露した。サバプロのこれまでとこれからを橋渡しする今回のツアーだったが、緊急事態宣言が発令されたこともありツアー序盤は中止の決断をせざるを得ない状況もあった。今回のMCでは、突然投げ出された状態になり戸惑い、途方にくれながらも、そういうなかだからこそ本当に自分がやりたいこととは何かを考えたと、語られた。この日ステージに立ち、生み出した空間はその答えだろう。ツアーとしては心残りがあるかもしれないが、この経験を経たからこそ、10年が単なる数字的な区切りでなく、生身の重みを持ったものだということが、表現されていたと思う。

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