INTERVIEW
Survive Said The Prophet
2021.01.19UPDATE
2021年01月号掲載
Member:Yosh(Vo) Show(Dr) Ivan(Gt)
Interviewer:村岡 俊介(DJ ムラオカ)
2021年、結成10周年を迎えるSurvive Said The Prophetが、リテイク・ベスト・アルバム『To Redefine / To Be Defined』を完成させた。メンバーそれぞれがキャリアの中で分岐点となった楽曲を2曲ずつ選び、リアレンジした"To Redefine"と、ファン投票で選ばれた5曲、そしてメンバーを支えてきたクルーがセレクトした5曲で編成された"To Be Defined"からなる今作。一発録りのスタジオ・ライヴ・レコーディングという手法で、彼らの"リアル"をありのままに映し出し、メンバー含めバンドに関わる全員が"サバプロ"という概念を改めて定義したこのベスト盤は、彼らの過去、現在、未来を繋ぐ重要な作品となった。今作について、Yosh、Show、Ivanに話を訊いた。
ライヴRECという手法は絶対的に必要だった。僕らにとって残すべき瞬間ができたのが大事だったんですよね
-2021年、Survive Said The Prophet結成10周年ですね。10年前バンドを結成したときのことを覚えていますか?
Yosh:結成当初いたのは僕ひとりだけだったので、僕だけの角度の説明になってしまうんですけど、今振り返ってみると、友達何人かで東京を中心としていろんなライヴハウスに出入りして友達を繋げていって、全力でツアーを組もうとして、でも実際失敗して。そんな奴らみんなで飲んでた。そのなかでやっぱり音楽は大切にするべきだよね、ビジネスマインドを捨てられたらいいねってコンセプトで、3人くらいで僕のアパートで僕が作っていた音楽を、少しずつサバプロ(Survive Said The Prophet)っていうものにみんなで変えていきました。けどそのときは3人しかいなかったので、今のサバプロっていうものが見えていなかったんですよね。イメージを一生懸命描いてはいて、メンバーが5人ってことは頭にあったし、いろんなサウンドを試せるようなバンドになりたいな、とかあったんですけど、わりとナイーヴに音楽をやろうとしてた時代だったのかなと。その結果、メンバーひとりひとりに出会えたというか、みんなそういうナイーヴなときに出会ったというか。何か答えを探してる人もいれば、チャンスを掴み取りにきた人もいるし。でも結局音楽を中心としているところはブレない奴らがだんだん参加していくっていうストーリーがそこから始まっていきましたね。
-参加していった側のおふたりとしてはどうですか? 加入した際のことは覚えていますか?
Ivan:本当にタイミング良くて奇跡だと思うんです。(Yoshとの)出会い方も音楽で出会っているわけでもなくて、アパレルのお店で働いていてそこで出会ったんですよ。加入してから今までずっと変わらない志でやってこれました。もちろん当時はツアーもリリースも初めてだったし、DIYから始まって今ここにたどり着いたんですが、もう1回初心に返ってまたDIYなところも考え直してもいいんじゃないかって思っていますね。
Yosh:彼の言ったことにちょっと付け足すと、さっき加入したときから志が変わらないって彼が言いましたが、加入したときはむしろ探り探りな部分もあったからか、バンドに対してどの程度興味があるのか見えなかったんですよ。どういう感じなんだろうっていう、結構距離を取ってる感じで。このDIYの話とかサバプロのヴィジョンが彼なりに固まった瞬間が地元の香港に戻ったときだったんですよね。そこで子供の頃の親友と再会してその親友がめちゃくちゃ売れ始めてたっていう。で、彼はサバプロに加入したばっかりで、バンドのヴィジョンを作る前だったので、そこで"よし、俺も!"ってスイッチが入ったんです。
Ivan:やっぱ悔しかったんだよね。すごく悔しかったです。
Yosh:SUPPER MOMENTっていうバンドなんですけど。1回コラボレーションさせていただいてるんですよ。
Ivan:ずっとSUPPER MOMENTのヴォーカル(Sunny Chan)と香港で路上ライヴやってたんです。それから俺は日本行ってみるわって言って日本に来て。で、戻ったら彼がすごいビッグになってて"マジかよ"と。そういう思いもあって、サバプロと出会ってからの"これで行こうぜ"っていうけじめがついたかな、というのはありましたかね。
-Showさんはいかがですか?
Show:最初は正直"なんだこのバンド"って思ってたんですよね(笑)。結構ぐちゃぐちゃだったんで。加入する、しないってところから悩んでたから、この先どうなっていくんだろうという不安はすごくあった。特に僕の場合、ずっと年上とバンドを組んでて、なんでもやってもらってた立場だったんですけど、初めて自分の力でもやらなきゃいけないっていう立場になって、しばらく苦しい時期はありましたね。何したらいいかわかんないっていうか。
Yosh:今振り返るとすごくあったね。
Ivan:何もなかったもんね。5人で"じゃあ何する?"って感じで。
Show:僕が入ったのは2014年なので、バンド結成から3年くらい経っていて、ある程度それぞれのポジションとかキャラクターとかが確立されていた状況だったんですよね。そこに新しく入るってどうしても不純物が入ってくるような感じじゃないですか。やっぱりひとり知らない奴が入ってくるとバンドの雰囲気が変わると思うんですよ。だから僕は、最初はその雰囲気を崩さないようにしていましたね。可もなく不可もなくというか。良く言えば"潤滑剤になればいいな"って気持ちでやってました。ただそれだと自分のアイデンティティがどうしても見えないまま進んじゃうことに気づいてきたんですよ。やっぱり必要とされることは人生の中でとても大切で、好かれもせず、嫌われもせずって楽なんですけど、自分の人生を生きていくうえでハリがないというか。ずっと彼らはそういうことを知っているなかで生きてきたと思うんですよね。でも僕はそういうことを知らなくて。そういう意味では、本質的な意味での生き方をサバプロに教えてもらったっていう気はします。
-結成10周年というメモリアルなタイミングですので、いろいろやりたい案が上がったと思いますが、その中でもこのベスト・アルバム制作を選んだ経緯、理由を教えてください。
Yosh:"10"という数字がとてもしっくりくる数字だったんですよね。"10"を迎えるに当たって考えたのが、"過去"と"現在"と"未来"の3つの括りのテーマだったんです。ちょうどこのタイミングで僕らのツアーがなくなって、考える時期を無理やり与えられる。僕の中では『Inside Your Head』(2020年1月リリースのアルバム)が終わってからの現在っていうものは、走らせればどうにかなるみたいな人任せな部分がまだ少しあったんですよね。それが、今回向き合うことによって思ったのが、この期間で何もしないのがやっぱり一番良くないなということで。スピーカーも家にあるし、自分らのCDはもちろん持ってるし、みんな聴いてるかなって考えから始まって、宿題のようにみんなに提案したんですよね。10年間振り返ってみてってノートブックとペンを渡して。自分らの角度でいいからサバプロを10年振り返って、自分の人生を10年間振り返ってそこにサバプロがいるのかいないのかを自分の中ではっきりさせたかったんです。
-みんなというのはメンバーですよね? ファンまで含めて?
Yosh:メンバーですね。メンバーが一緒にひとつのアイディアを現実にしていくので、どういった方向を向いているのか確認するタイミングだったんです。みんなにミーティング中にプレゼンしてみて、"To Redefine / To Be Defined"というタイトルを付けてプレゼンしたら結構みんなしっくりきてて、よしやろうっていう。もうひとつ、自分らを振り返る中で大事だったのが、何十曲もある中で自分の考える名曲2曲を選んでみてって。アレンジは通常みんなでやることが多いんですけど、今回は自分ひとりで責任持って自分のやりたいヴィジョンを音にしてみてっていう。僕はそれがどんな形になってもいいと思っていて、それに取り組むみんなの姿や、お互いのパートをさらに理解することが10周年を踏まえて大事なのかなと。バンドを続けていくということは自己中にならないってことで、そこの向き合い方がすごく難しいんだなっていう。どんな人でもたくさん働いてるとそのぶん見返りを求めるというか。その見返りがなければ不安を持つのが普通当たり前のことだと思うんですよ。だから僕ひとりでぎゃーぎゃー言うよりも、みんなで納得して進んでいこうっていう、そういったことを試すアルバムだったんですよね。だからすごくビッグなリスクだったというか。このアルバムを制作することで、本当は今までとやってることは変わらないんだけど、ひとりひとりの責任というものに気づける瞬間だったんで、結果としてすごく良かったなと思ってます。
Show:時期的にコロナじゃないですか。その前まで僕らは、常にライヴしてレコーディングしてというのをずっと繰り返してたんですよ。忙しいことはいいことだと思うんですけど、それを理由に向き合うのを自然と避けてたというか、みんなコロナでライヴがダメになって気づいたと思うんですよね。自分と対峙して考えるって結構怖いことだと思うんですよ。勇気がいるというか。そういう時間がコロナでできたんで、何ができるかってことをすごく考えて。コロナ期間中にできなかったことが多かったんですよ。それがやっぱり悔しいこともあって。そんななか、Yoshがベストの話をしてきて、やっぱりみんな何か思ってることがあるんだなってことを感じましたね。そういう意味ではこのベストはそこを認識できるいい機会でした。
Yosh:間違いない。
-10周年という区切りでのリリースが大前提でありつつ、コロナがリリースを押し進めたということはありますか?
Show:それはありますね。
Yosh:嫌でも向き合わなきゃいけない自分がいて、嘘つけない一発録りという環境でみんなと向き合う、自分と他人というものを概念として僕らがバンドだということを、個人と全員とやったことが僕としてはすごく嬉しいです。
Ivan:言い訳できないよね。与えられた時間があるなかで、ライヴがあるから作曲できなかったとかって理由はきかないし、ある意味一発録りって本当にリスクのあるものだと思うんですよね。周りに"お前ら攻めすぎじゃない、大丈夫なのそれ?"って言われたりして。僕らも作ってる最中に"本当に大丈夫かな"って思った瞬間もあったけど、結局みんな時間を費やして自分なりのものを考えてきて、練習してきてっていう一発録りだったから、すごくいい企画だったと思う。やって良かったですね。
Yosh:すごく必要なセラピーだと思います。目的がその先にあれば、なんだって乗り越えられるんだっていうのが僕らは当たり前に土台にあったんで。そこがまだ残っているっていうのは、はっきり見えましたね。
-先ほどからもちょくちょく話題に出てきていますが、ライヴRECという手法、これも今回のセラピーの中で必要だったということですよね。
Yosh:絶対的に必要だったし、そもそもライヴをやっている人たちはすでにやってるんですよ。そこが人の記憶に残るか残らないかって話なだけであって、僕らにとって残すべき瞬間ができたのが大事だったんですよね。10年間ライヴをしてきたひとつの思い出、こんなに上手くなったなっていう単純なことから、あのときこういう曲だったよなってこととか。未だにすごくひっくり返そうとするアイディアを持ってくるやつらがいるんだなというか。俺もそういう精神あるんですけど、そういうのって大人になればなるほど普通抑えようとするもので。でも、またひっくり返したよ! ってアイディアが出てくるのは楽しいですよね。ハラハラするし、たまにちょっとイライラするけど(笑)。
Ivan:でもライヴREC、ワンテイクって言ってしまえば俺らの一番のリアルだと思うのね。全部バラバラで録ってきれいに整えていくのが今の主流かもしれないけど、でも本当にすべてなくなったときに俺らのリアルって5人集めて音出すってことでしかないから、それをそのまま今回のアルバムに落とした感じになってるのかなっていう。