INTERVIEW
Survive Said The Prophet × Newspeak
2019.03.26UPDATE
Survive Said The Prophetの47都道府県ツアー"Now more than ever Tour"がスタートした。今ツアーの大きな特徴は、全公演にNewspeakがゲストで登場する完全ツーマン・スタイルであるということ。なぜ彼らはそこまで強く引き合い、手を組んで共に歩もうとするのか。"ジャンルの壁"、"新しいスタイル不毛の時代"、"生楽器だからこそのエネルギー"、"仲間との結束が生むカルチャー"といったネガティヴなこともポジティヴなことも含めてのロック・バンドを巡るテーマは、もはや話し尽くされた感もある。しかし今回はそこに汎用性など一切なし。新しいカルチャーの夜明け目前。どちらかのファンならずとも必読の、オリジナルで現代的な感覚を持った答えがあった。
Survive Said The Prophet:Yosh(Vo)
Newspeak:Rei(Vo/Key)
インタビュアー:TAISHI IWAMI Photo by 上溝恭香
-まずはSurvive Said The ProphetとNewspeakの出会いから話を聞かせてもらえますか?
Rei:俺とSteven(Newspeak/Dr)はバンドを組む前から友達で、よく遊んでたんです。でも俺が海外に行くことになっちゃって離れ離れになって。その間にYoshとStevenがめちゃくちゃ仲良くなってて、帰ってきて"誰この子?"みたいな感じで浮気された気分になりました(笑)。で、よく3人でも集まって話すようになって、ある日バンドがやりたくてドラマーを探してることを話したら、YoshがStevenに"お前がやるしかねぇだろ"って言ってくれたんです。StevenはYoshの言うことだったら聞くから、"じゃあやる"って。
-StevenさんはYoshさんの言うことなら聞く? どういうことですか?
Rei:付き合ってるんですよ(笑)。もはやそれくらい仲がいい。
Yosh:ほぼ付き合ってる(笑)。
-YoshさんはNewspeak結成のキー・パーソンなんですね。
Rei:Yoshがいなかったら今のNewspeakはないと思って湧いてくる感情は、感謝なのか怒りなのか。
Yosh:なんで怒りなんだよ。
Rei:StevenというモンスターがNewspeakに入ってしまったから(笑)。
Yosh:たしかに(笑)。俺はもともと外国人向けの声優とかシンガーを抱える会社に関わっていて、Stevenはその界隈では有名なシンガーだったんです。ドラムも叩けるしトラックメイカーとしてのスキルも優秀。2011年から何年間かは"ウイニングイレブン"の曲を作ってたし、みんながテレビとかでよく耳にする声や曲も実はStevenが関わってたりするんです。
-おぉ!
Yosh:俺はStevenのことをすごく尊敬していて、彼がいるスタジオに通い詰めるようになったんです。彼も昔バンドをやってたんですけど、そのころは"もうステージはいいよ~"って諦めたようなことを言いつつ、そのわりにはサバプロ(Survive Said The Prophet)のライヴを観るたびに"いいな~"とか言ってて。そこにReiが作ったデモがあって、"ヤバい。これはくるに決まってっからやれよ。お前のプロデューサーとしてのマインドセットとドラムのキャラクターが入れば間違いない"って後押ししたんですけど、まだStevenはちょっと迷ってた。だから、"やるかやらないか。ステージに立つならここで決めた方がいいし、もうステージには立たないなら立たないで、今後のキャリアも考えていかなきゃいけない"ってさらに話して。
Rei:裏でそんなことがあったのは知らなかった。
Yosh:で、Stevenのスイッチがオンしたんだよね。"これが最後と思ってやってみたい!"って。......って、ほぼStevenの話になってる(笑)。
Rei:ほんとだ(笑)。
Yosh:Stevenだけじゃなくて、Reiも、Newspeakの他のメンバー、Ryoya(Gt)もYohey(Ba)も、それぞれバンドの経験があったうえで、1回は音楽に背中向けたけど、"やっぱりやりてぇ"って戻ってきたメンバーでしょ? それはサバプロも似てるところがあって。
-そのYoshさん、Reiさん、Stevenさんの個人的な関係から、Survive Said The ProphetとNewspeakのバンドとしての交流も始まって、今回"Now more than ever Tour"で47都道府県を共に回るようになった経緯について聞かせてもらえますか?
Yosh:Survive Said The Prophetのいいところは、自分たちがいいと思ったものをどれくらい強く推して守るか、メンバーみんなその意識が強いこと。O.Aという言い方は好きじゃなくて、今回のNewspeakもそういう感覚じゃない。僕らが主催するアクトの中に素晴らしい色が入ることになると信じてる。
-深い交流があってのことですもんね。
Yosh:Newspeakの音源をデモの段階から聴いていて、マインドもシェアできてることは大きなキーですね。メンバーに聴かせながら話したら、みんな"よし、いこう"ってなってくれた。いい音楽があっても、それをちゃんと伝えることは簡単じゃない。今のモダンな世界は音楽の出るスピードが速いから、それにロック・バンドが勝つためには何をしなきゃいけないのか。音源やツアーにおける大事なこと。俺らにはそういうことを教えてくれる先輩がいたかと言うと、そこまでダイレクトに教えてくれた先輩はいなかった。だからと言って俺らは先輩になってNewspeakに諭すような立場じゃなくて、俺らもNewspeakに教えてほしい。
-バンドとしてはSurvive Said The Prophetの方が早く動き出しましたけど、その前からの仲間でお互いの音楽にもシンパシーを感じてる。だからこそのエネルギーがあるんじゃないかと。
Yosh:Newspeakとの関係性の中で俺らができるのはそこにスポットライトを当てること。正直みんないい音楽を見つけたらここまでフックアップすべきだと思います。それが一緒にやる意味。俺が大好きなBLINK-182もそうで、JIMMY EAT WORLDやTAKING BACK SUNDAYといった、あとに出てきた若いバンドに対して自分たちができることを考えて、ツアーに同行させた。アメリカのそのツアーのやり方。ブラザーフッドというか、ファミリー感。あれをもっともっと日本に広めたい。まぁ、シンプルに"Newspeakカッコいい!"ってことなんですけど。
Rei:そうですね。まずお互いがカッコいいって思ってること。僕らはインディー・サイドでサバプロはそうじゃない。音楽性が違うって言われることは多いんですけど、最終的に見てるところは同じ。サバプロもいろんなジャンルを採り入れてどんどん大きくなって、いろんな人を巻き込んでいこうとしてる。Yoshも言ったけど、優秀なトラックメイカーがバンバン出てきてる今のモダンな音楽業界で、ロック・バンドがやる意味を考えると、この2バンドが47都道府県を回ることで根っこからシーンを作っていけると思うんです。長いししんどいし正直反響に対する怖さもあるけど、楽しみの方が断然大きいからやることにしました。
-大雑把にロックのジャンルで言うとNewspeakはインディー、Survive Said The Prophetはラウドですよね。
Yosh:インディーって言葉は難しいですよね。もったいないところもある。お互いに言えるのはポップってことかなと。インディー・サイドから見るとTHE KILLERSとかはそうだと思うんです。
-ラウドとインディーってバンド同士もファンも相容れない部分が少なくない。ヘヴィ・メタルやハード・ロックと、インディペンデントなパンクやポスト・パンクの間にある不穏な空気ですよね。おふたりの青春時代、00年代も両者の隔たりが結構大きくて、スタイルはまったく違えど、ハード・ロックルーツの"ラウド"という言葉で括られるLINKIN PARKやMY CHEMICAL ROMANCEは、ファン・ベースも重なる部分が大きくて、THE STROKESやおっしゃったTHE KILLERSのようなオーセンティックなロックから、NYのパンクやポスト・パンクの流れにある、インディー・バンドを嫌う人が多い。逆も然り。そういう縦割りの仕切りにある空気的なものって大切でもありもったいなくもある。
Yosh:あぁ、なるほど。たしかにそういう感じありますよね。でも全然考えてなかった。
Rei:ライヴを観たら近いところもあるし。
-ジャンルの嚙み合わせ的にもあまりないタイプのツーマン。それを47都道府県にわたって繰り広げるとなると今までになかったことなんじゃないかと。そこで、この2バンドに共通する圧倒的な説得力がある。それは、個人がそれぞれバラバラの趣味や考え方を持っているからこその化学反応だと思うんです。どのバンドにも言えることですけど、この2バンドにおいては、本人たちも予想だにしなかったレベルの大きなパワーが生まれています。それはジャンル云々じゃない。
Yosh:そう思ってるし、嬉しいです。あとはReiが英語を話せて俺らは英語で歌ってるってことも大きい。
Rei:Yoshは日本人だけど、インターナショナル・スクール出身だし、Stevenはカナダ人だし、僕は日本人なんですけど、よくわからない変なところにいる感じ。みんな周りとちょっと違うしそれを感じて生活してきたから。
Yosh:そこで英語を使ってなんでも言い合える。"ぶっちゃけどうよ?"って。