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LIVE REPORT

Survive Said The Prophet

2021.11.30 @KT Zepp Yokohama

Writer 吉羽 さおり Photo by toya

名古屋からスタートし、全6都市を回ったSurvive Said The Prophetのツアー"something BOLD tour"が、11月30日KT Zepp Yokohamaでファイナルを迎えた。Yosh(Vo)、Ivan(Gt)、Tatsuya(Gt)、Show(Dr)の体制となってのワンマン・ツアーであり、また2020年、2021年はツアーを予定しながらも新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けてキャンセルや変更を余儀なくされてきたが、今回は全行程を完走したツアーにもなった。彼らだけに限らずコロナ禍ではライヴや普段の生活においても、制限されることや、足止めを食ってしまうことも多かったが、そのなかでもサバプロ(Survive Said The Prophet)というバンドが進化や新たな取り組みを止めることなく、ライヴを通して新しい景色を見せるようなツアーだ。

ステージを見たときにまず飛び込んでくるのは、ステージ中央に結構な高さのある壇上に組まれたドラム・セット、その左右もひな壇状になっていて、それぞれの前面には大型のLEDヴィジョンが設置されている。照明とこのLEDで4人の迫力やパフォーマンスがより鮮やかに際立ち、そして高低差のあるステージが、立体感も生み出している。視覚的な躍動がよりダイレクトな、"ライヴ"の醍醐味が味わえるステージとなっていた。"横浜、準備はいいですか"というYoshの言葉を合図に、ヘヴィなギター・リフとダイナミックなドラミングによる「T R A N S l a t e d」でスタートしたライヴは、ステージからより豪速球で音が放たれるのを感じる。心地よい圧が、観客のハンドクラップを誘い、ジャンプさせる。現在、シャウト・パートはドラマー Showが担っているようで、破壊力のあるドラミングにシャウトの勢いも加わっている。"どうした横浜、ライヴの仕方忘れちゃったか。音だけじゃない、身体で楽しむんだよ"とYoshが煽り、"ひとり残らず行くぞ"と観客の手をグッと高く上げさせる。「Network System」、そしてツアー直前に配信限定シングルとしてリリースされた「Win / Lose」が続く。爽快なシンガロングで始まり、目の前の景色を切り拓いていく高揚感、ドライヴ感のある「Win / Lose」はすでにアンセミックなキラー・チューンとしてフロアを掴んでいるようだ。「I don't care」など、新旧の曲を織り交ぜた前半は、サバプロのアグレッシヴで重厚なアンサンブルや、ブライトなメロディで一気に観客を飲み込んでいった。

「FIXED」のSEでムードを切り替えた中盤は、万華鏡的な「Tierra」のダンス・ミュージックから、ミディアムなビートとジェントルな歌、メンバーのコーラスで恍惚感のあるサウンドを作り上げていく「Follow」、また"青春時代の曲を持ってきた"と「Last Dance Lullaby」を柔らかなグルーヴで響かせた。なお、この中盤ではアコースティック・セットもあり、「If You Really Want To」と「Again」で、ジャンプやダンスで盛り上がる会場をリラックスした時間へと変えていった。"ようやくドンチャン騒ぎをやらせてもらってます"と、改めてライヴ、ツアーができた喜びや、バンドを迎えてくれる観客に感謝を述べたYosh。まだ歓声が上げられないぶんを、精一杯大きく長い拍手に変えた観客に、"こんな素敵な人たちがいるんだから、世界一のロック・バンドになりたい"と言う。素直で、感情が溢れるほど日本語の文法が乱れるバイリンガルなYoshのMCからも、ツアーでいい時間を過ごしてきたことがわかる。サウンドこそハイブリッドで切れ味鋭いが、その音楽が生まれる根は泥臭く、人間臭い。だからこそ信じられる。

Ivan、Tatsuyaのふたりも太鼓を叩き再び熱をほとばしらせた「Mukanjyo」で後半がスタート。ここからは演出もより華やかに「found & lost」、「The Happy Song」~「Right and Left」とアルバム『s p a c e [ s ]』(2018年)からのグルーヴィでメロディアスな曲で、フロアのテンションも右肩上がりにしていった。"最高の時間をありがとうございました"という言葉とともにラストに演奏したのは「When I」。手を伸ばしてハンドクラップし、心地よく身体を揺らしてバンドのグルーヴと一体化するフロアに向け、Yoshは"最高かよ、お前ら"と声を掛ける。最後は、全員でピース・サインを掲げて、全19曲を締めくくった。メンバーそれぞれが自身の役割を増やして4人での新たな可能性を見せたツアー。歩みを止めることのないエネルギーと、一段としなやかな思考やチャレンジしていく精神が、バンドのグルーヴをタフに確かにしている。その4人の鼓動感、クリエイティヴィティを提示した"something BOLD tour"となった。

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