INTERVIEW
fox capture plan × Yosh (Survive Said The Prophet)
2020.05.13UPDATE
2020年06月号掲載
fox capture plan:岸本 亮(Pf) カワイヒデヒロ(Ba) 井上 司(Dr)
Survive Said The Prophet:Yosh(Vo)
インタビュアー:TAISHI IWAMI
インストゥルメンタル・ジャズの編成でロックにアプローチしてきたfox capture planが、ネクスト・ビッグ・シングの呼び声高いロック・バンド、Survive Said The Prophetのヴォーカル Yoshを招き、今回のための新曲「Curtain Call」と、Survive Said The Prophetの代表曲である「Right and Left」のカバーをコラボレーションした。ジャンルの特性は、人々の心を掴んでやまない大きな要素だ。しかし、それらは本来自由を求め生まれたもので、保守的思想から固定概念に変換されてしまっては本末転倒だと言わんばかりに枠を超えて、その音楽性を磨き上げ続けるお互いの姿勢が、見事に溶け合い爆発したパフォーマンスに注目してもらいたい。
-まずはfox capture planとSurvive Said The Prophetの出会いと、今回のコラボレーションに至った経緯を教えてもらえますか?
井上:ちゃんと対面したのは4年前、2016年ですね。サバプロ(Survive Said The Prophet)の自主企画"MAGIC HOUR"に呼んでもらってツーマンをやったときです。
Yosh:僕らはもともとラウドロックのシーンで活動していたんです。でも、このジャンルで真正面からいっても、オーディエンスに理解されないんじゃないかってジレンマがあって、2015年にオリジナル・メンバーのひとりが脱退したことで、いよいよこれから先のことについてより具体的に考えるようになったんです。みんな同じ音楽だし、"他ジャンル"という言い方は語弊があるかもしれないけど、特に僕とメンバーのIvan(Gt)の間では、そういう今までにアプローチしてなかったシーンにも目を向けていきたいって、話し合うことが増えたタイミングで、フォックス(fox capture plan)のことを知って、自主企画に誘いました。
-ラウドロックというシーンとサバプロの音楽性の間に違和感を感じていたんですか?
Yosh:気を使って言葉を選んでも変な誤解しか生まれないと思うんで、ストレートに言うと、当時のトレンドしか追わないような風潮が窮屈だったんですよね。もうちょっとディグろうよ、想像しようよって思ってました。どのジャンルにもあることだと思うんですけど、ある一線みたいなものを超えたら、"これはラウドじゃない、メタルじゃない、ハードコアじゃない"みたいな。そうなると、僕らはラウドロックは大好きで憧れもあってバンドをやってたんですけど、ラウドと聞いて多くの人がイメージするようなシャウトしまくる音楽性でもないし、ライフスタイルもオラオラじゃないし、"ちょっとうるさいですよ"くらいの温度感だったから、もうラウドにこだわってカッコつけても仕方ないんじゃないかって。
-そこでfox capture planに声を掛けたのはなぜですか?
Yosh:インストのムーヴメントみたいなものが、結構推されていたようなイメージが僕にはあったんです。ヴィレッジヴァンガードに行くと、いろんなインスト・バンドがしっかり宣伝されていて、その前に立っていたフォックスにすごく興味が湧きました。で、そこから彼らのことを掘れば掘るほどミステリアスで面白いんですよ。サウンドだけじゃなくて、ジャケットやアートワークを見ていても、僕の中の"知りたい"というドライヴが発動する。さらにドラムはヘヴィ・メタルとかも嫌いじゃないらしいときたら、これはもうオファーするしかないって感じでしたね。
井上:嫌いじゃないどころかすごく好きで。僕らも、他のジャンルや自分たちがいるシーンの以外のバンドと、どんどん一緒にやっていきたいよねって話していた時期で、すごくいいタイミングで呼んでもらいました。
-純粋にサウンドやマインドだけを抽出すれば、fox capture planはジャズの編成でロックにアプローチしたオルタナティヴなバンドですし、Survive Said The Prophetはおっしゃったようにラウドロックを出自としながらも、そのイメージを拡張してきたとも、枠を取っ払ったとも言えるバンドなので、コラボしたり対バンしたりすることに違和感はないように思いますが、活動ベースやファン・ベースは異なるという意味では異色ですよね。
井上:サバプロの作品を聴けば、いろんな音楽性が入っていることも、フォックスのことを好きだと言ってくれる理由もわかります。歌もキャッチーで耳に残るし、その視野の広さは当時も今も、すごく興味がありますね。
岸本:ラウドロックをベーシックにしている部分も感じるんですけど、曲調やサウンドメイキングが面白いし、ライヴを観ていても、ひとつのジャンルに縛られていないことは伝わってくるんです。そこに僕らとの共通点を感じました。
ロックを強く意識しながらも、あえてギターレスのジャズ編成で挑んだことで生まれた、化学反応とは
-約4年の付き合いがあって、お互いのことを理解しているからこそなのか、すごく自然体且つ巨大なパワーが生まれたコラボレーションになったと思います。まずは1曲目「Curtain Call」について、話を聞かせていただけますか?
岸本:まさにそうだと思います。作曲はカワイ君で、構成やメロディはサバプロっぽいと思うんですけど、演奏やサウンド感は僕らが普段やっていることと大きく離れてはいなくて、すごく自然に馴染んだ感触はありますね。
-基本はピアノとコントラバスとドラムだけ、ギターレスの編成でロックに接近してきたフォックスと、ギターがトレードマークでありながら、そのアレンジも全体的な音楽性もすごく柔軟なサバプロの接点が、爆発したような曲になっていると思いました。
岸本:ここまでロックな曲調でギターレスって面白いですよね。
Yosh:ギターがいないことをたまに忘れちゃうんですよね。それって結構すごい。
井上:"あれ? ギターがいないぞ"みたいな。
カワイ:僕らなりの解釈でギターを入れるのもひとつだと思ったんですけど、そこはフォックスでYosh君に歌ってもらうんだから、あえて入れないでおこうと。作曲に関しては、あまりサバプロっぽさに寄せるのもなんだし、僕らの感じにYosh君のヴォーカルを乗せただけになっても面白くないしとか、いろいろ難しく考えてたんですけど、いざ作り出したらすんなりできましたね。
-ギターにあたる部分を担うのは岸本さんのピアノになりますが、アレンジするにあたってそこは意識したのか、もしくは切り離したのか、どちらでしょう。
岸本:まともに対峙するとギターの轟音によって生まれる迫力には勝てないと思ってました。そこはカワイ君がストリングスを入れてくれたことが大きかったと思います。
カワイ:ピアノとストリングスのふたつが、サバプロのツイン・ギターの役割を果たしてくれるようなサウンドになったんで、良かったんじゃないかと。でも、それは結果的なことで、特にギターの迫力に勝つことや寄せることを意識したわけではなく、僕が単純にストリングスの上で歌うYosh君の声を聴きたかっただけなんです。
-ベースは、コントラバスなんですか?
カワイ:ミュージック・ビデオはコントラバスなんですけど、実際に弾いているのはエレキです。ビデオでは、あえてフォックスらしい見栄えを意識しました。今回のような8ビートのロックな曲は、エレキ・ベースでいかにうねりを出すかが醍醐味だと思っていて、そこを楽しみました。
-ドラムはフォックスらしさを担保する重要な要素になっていると感じました。
井上:僕はもともとロック畑で、フォックスもドラム・スタイルはロックが基本になっているんで、やってることは普段とあまり変わらないんですけど、気持ち的にはいつもよりロック・バンドにいるような意識で叩きました。ミックスの段階でも、ロックとジャズのバランスを、大きくロックにシフトして、いつもよりドラムの音を大きめにしましたね。フォックスらしくもあり、Yosh君が入ってくれたおかげで、自分の原点的な魅力も出すことができたんじゃないかと思います。
-ヴォーカルのメロディはすべてカワイさんが作ったんですか?
カワイ:はい。そこはYosh君の伸びやかな声とか、いろんな魅力を脳内で再生しながら、ちょうどいい帯域やメロディ・ラインを探っていきました。
Yosh:そんなことしてくれてたんだ。ありがとうございます。