INTERVIEW
Survive Said The Prophet
2020.01.14UPDATE
2020年01月号掲載
Member:Yosh(Vo) Yudai(Ba) Show(Dr) Tatsuya(Gt) Ivan(Gt)
Interviewer:村岡 俊介(DJ ムラオカ) Photo by toya
Survive Said The Prophetが、ニュー・アルバム『Inside Your Head』を完成させた。アニメのタイアップに加え、HondaのCMソングへの起用など、着実に表舞台に姿を現してきた彼ら。今作は、ミックス・エンジニアにPANIC! AT THE DISCOやISSUES、I SEE STARSなども手掛けるErik Ronを迎え、確かな軸を持ちつつも自在に変化を見せるサバプロの真骨頂が、さらにアップデートされた模様だ。前作以降バンドに起きた変化や、本アルバムの制作について、メンバー全員に訊いた。
-まず、前作『s p a c e [ s ]』(2018年リリースの4thアルバム)リリース以降の躍進についていくつか聞かせてください。『s p a c e [ s ]』はバンドにとって大きなターニング・ポイントになった作品だと思うのですが、今振り返ってみて『s p a c e [ s ]』とはどんな作品でしたでしょうか?
Yosh:ひと言ではやっぱりまとめられないですよね。けど、"何かを理解し始めてた感覚"はすごくあると思うんですよ。(過去に)アルバムを海外で2枚録っていて、3枚目だったので、すごく自信もあったし。"こんな曲を僕らは作ってきたんだ"という過去がはっきりしてるんで、"こういう曲をもっと作っていこう"っていう段階を踏んだうえで、"『s p a c e [ s ]』こそが我々なんだ!"って自信に満ち溢れていました。そのときは可能性しかなかったですね。
Show:『WABI SABI』(2017年リリースの3rdアルバム)の段階で"激しい曲もやれば静かな曲もやる"っていう"ジャンルレス"なサウンドを自信持ってやっていたんですけど、"あと少し何かが足りない"って感覚があったので。『s p a c e [ s ]』でやっと(自分たちのサウンドを)確立できた作品ですね。
-最後のピースとして"自信"が入ったと。「Right and Left」(『s p a c e [ s ]』収録曲)がHondaのCMで起用されたのも大きかったですね。楽曲の魅力とCMの力の相互作用でバズったと感じました。みなさんは実際に起用されてみてどうですか?
Ivan:間違いなく"はじめましてのオーディエンス"がライヴに増えたと思うんですよね。フェスとかでも"ちょっと覗いてみようかな?"って人が増えたのは印象としてあります。
Yudai:"HondaのCMやってます"って言ったら"あ、知ってる! 好きで聴いてました!"って人と出会うことが多くなりましたね。あとは"外国人かと思った"とか(笑)。
-YouTubeのコメント欄にも"あれ!? 日本人なんだ?"みたいな書き込みを見ますね。
Yosh:僕らのシーンの外の世界に初めて触れられたっていう、その力を思い知った感じですね。
Show: CMを見て、サバプロ(Survive Said The Prophet)を認識はしてないにしても、この曲を覚えていてくれてて。それでフェスでたまたま見かけたらその曲をやっていて、それきっかけに観にきてくれるようになった人が増えてるっていうのは、やっぱり効果がすごいんだなって思いますね。ライヴに来る層じゃない、うちらのバンド名も知らない、でも、その曲だけは知っているまだ出会えてない人もたぶんいっぱいいると思うんですよ。それが第1段階だとしたら、テレビの層の人たちに届くように次は何かしらできたらいいなと考えてます。
Yosh:CMがきっかけで僕の後輩同士がサバプロを紹介し合って(笑)、ひとりが"それYoshのバンドだよ"って言って"嘘だ~"みたいになったらしいんですよ。"カッコいいバンド見つけたんだよね"って後輩たちが紹介してるバンドの中のひとつが、サバプロだったって思ってもみなかったというか。"ギミック"っていうワードは使いたくないですけど、俺らが全面的に顔を出して"これだよ! 見て!"っていう感じじゃなくて、音楽が流れて"これなんだ?"って惹かれる部分がすごく自然にある感じがして。そこで知ってくれた人たちがたくさんいるのであれば、間違っていることはやってないのかなっていう確信になったと思います。
-サバプロのすごいところのひとつが、「When I」や「Listening」(共に『WABI SABI』収録曲)、「Tierra」、「Follow」(共に2016年リリースの2ndアルバム『FIXED』収録曲)など、初期の頃からラウドロック・ファンだけにとらわれない、広い音楽リスナーに刺さり得る曲を作り続けてきたことだと思うんですよね。もし今回のタイミングで「Right and Left」がCMに起用されなかったとしても、こういった曲を作り続けていればいずれ同じようなお話は来たんじゃないかと思います。
一同:ありがとうございます!
-BRING ME THE HORIZONは結成当初のデスコア・サウンドを変化させていき、今や日本のテレビCMで起用されるまでになりました。BMTH(BRING ME THE HORIZON)の変貌ほどではないにしろ、ONE OK ROCKも初期の音楽性を変化させ大衆性を帯びていき、CMに起用されるようになりました。それらのバンドと比べると、サバプロはインディー時代の1stアルバム(2015年リリースの『Course Of Action』)から今作に至るまで音楽性にブレがなく、一貫しているように感じるんですよね。そこが他のラウドロック・バンドとの大きな違いなんじゃないかなって思います。根幹が変わってないというか。
Show:変わってないと思いますね。年取って、成長して、価値観とかは変わってくるじゃないですか。でも、根本にあるものは変わんないんで。楽曲は変わりますし、精度も変わりますけど、根本の部分は"変わって"ない。
-芯がしっかりしてる感じがしますよね。今回インタビューするにあたって、改めて初期の曲から今に至るまで順に曲を聴いていくと"サバプロの根幹って、いい意味で不変だな"と思いました。あと、日本の音楽シーンがようやくサバプロに追いついてきたというか、ようやくサバプロを理解し始めてきたというか。
Yosh:正直言うと僕は、"自分たちは変わったな"って感じるところもあって。若ければ若いほど見えるものは狭いと思ってて、それは悪いことではない。こだわるってことは悪いことじゃない。けど、そのあとですよね。自分しか見えてないところの"あと"を見たときにどう思うかっていうアクションが、すごく重要だと思うんですよ。簡単な例で言うと"日本語詞でやってみる"ってことやタイアップもそうですけど、"これをやることでオーディエンスに聴いてもらえるんだ"っていう考え方に、完全に変わりましたね。"こういうふうに聴いてほしい"って気持ちに変わったんじゃないかなって。"ポップ"っていう概念に対する考え方も変わってきましたね。そういった意味では"変わった"ってことを恐れずに言えるようになったことも含めて、変わったと思います。それが結果としてすごくいいものになってるのは、聴いてくれている人数が結果として出てるんじゃないかなって。
-なるほど。根幹はしっかり保ちつつ、"俺たちはこれをやってからお前ら聴け!"じゃなくて、リスナーに手を差し伸べるというか。言い方が変わってきてるんじゃないのかな。
Yosh:まさにそうですね。ロック・バンドとしてはそこが重要だったんじゃないかなって考えてたんですよ。バカでもいいんですけど、知識を得ようとするパッションがないのに、ただギャーギャー叫んでるのは少し違うなと思うんです。そういう意味では今ロックのケツを叩かないといけないなって感じてます。ロックのメンタリティをノスタルジアに残すんじゃなくて、今でも学ぶべきものに戻したいなっていう意味合いでも"ロックというアート"、"ロックという僕らのライフスタイル"を大勢の人たちに提示できるってことは、すごくラッキーなことですよね。
-アニメ"BANANA FISH"2クール連続起用などのタイアップも、大きなトピックとしてありつつ、11月のAS IT ISとのUKツアーや、過去最大キャパの新木場STUDIO COASTのワンマン("Made In Asia Tour Final")など、ライヴ関連の話題も事欠きませんでしたが、みなさん自身が印象に残っていることを教えてください。
Yudai:今年はいろんなところをずーっとツアーし続けていたってイメージが本当に強くて......。
-初めて尽くしみたいな。
Yudai:ですね。47都道府県でも知らない土地もあるじゃないですか。日本だけど、行ったことがない場所に初めて行ったり、アジアを回ったり。初めてその場所の色みたいなのを見て回る1年だったかな。UKも年内に2回行ってるし。"こういうところに行ったらこういうお客さんがいるんだな"とか、"こういう街だからこういう雰囲気なんだな"っていうのをすごく感じた1年でしたね。
-他のみなさんはどうですか? 感動したこととか。
Yosh:感動する時間がなかった(笑)。感動する時間がなかったことに感動したかもしれないです。いろんな人たちに"海外行くんだ!"とか"ロックで世界回るぜ!"ってデカい口叩いておいて、ハンバーガー食いながら明日のライヴの話をするっていう。"現実ってこんなもんか"みたいな(笑)ショックはちょっとありますよね。やっぱ石橋叩くんだなというか、日本人なんだなっていう(笑)。"おっしゃあ、ロックだオラァ!"とかじゃなくて、"よし、話し合おう"って。
-堅実な(笑)。
Yosh:そうですね。もちろん楽しかったですけど......結局ハンバーガー何連チャンしたっけ?
Yudai:イギリスでは5連チャンくらいした。
-え、そんなに?
Yosh:僕らがライヴ終わって移動した時間で食えるところってそこくらいしかなくて。お昼の時間とかもライヴハウスの近くで食べるか、テイクアウトで買ってくるか。ファーストフードばっかだったな(笑)。スコットランドのライスは美味かった。なんだっけあれ? ラムのやつ。すっごくおいしかった。ツアーの中で唯一ライヴハウスが飯を用意してくれて。
Yudai:バー・カウンターで一緒に出してるというか、ラウンジみたいなのがあって、そこがレストランにもなってるっていう。
Yosh:初スコットランドの初スコットランド飯。それが一番美味くて、一番温かくて。
Yudai:あれは最高だった。