INTERVIEW
Survive Said The Prophet
2020.01.14UPDATE
2020年01月号掲載
Member:Yosh(Vo) Yudai(Ba) Show(Dr) Tatsuya(Gt) Ivan(Gt)
Interviewer:村岡 俊介(DJ ムラオカ) Photo by toya
-さて、そろそろ5枚目のフル・アルバム『Inside Your Head』に話を移らせていただきます。今作の制作過程はいかがでしたか? 過去作と比較して難産でしたか、それとも順風満帆にできた作品でしょうか?
Yosh:僕らがDIYでやってる頃から今に至るまでに何が一番変わったかと言うと、作ったときから出すまでの"バッファ・タイム"というか。"レコーディングしてからリリースまで"ではなく、"曲ができてからデモになって"、"デモからプリプロになって"、"プリプロから本番RECして"、"それからプロモしてリリース!"みたいな感じでステップがリリースするたびに増えていって。"長いな"っていう感覚を毎回感じてますが、『Inside Your Head』は特に待った気がします。
-今までの流れだったら年内に出せるくらいのスピード感でやってた?
Yosh:そうですね。実は『s p a c e [ s ]』のツアー・ファイナルで出したかったんですよ。アルバムはさすがにスケジュール的に難しかったので、会場限定のCDシングルをリリースして、ライヴハウスまで足を運んでくれる人たちが最初に手に取って聴けるっていう状況を作ったんです。そういうテーマを持って47都道府県を回り始めたので、ツアー中は制作という感じじゃなかったけど、常に細かい調整はしてましたね。
Yudai:ライヴでもやってたしね。大きい制作期間って感じではなくて、ツアーを始める前にある程度はもうできてました。
Yosh:はい、『s p a c e [ s ]』のレコーディングが終わったときにはもう(『Inside Your Head』に収録されている数曲の)デモができてました。
-速い(笑)。
Yosh:"これ次のこと考えないとヤベぇぞ"って考える癖がついちゃいましたね。実は3年ぶりくらいに"次の(リリース用の)ストック"がないので今は変な感じです。通常だったらもう"2020年"っていうフォルダができていて、次のアルバムのテーマと、"こういう感じにしたいんだよね"っていうのを共有してるんですけど......。
-サバプロってバンド結成からの暦が結構長いですよね。普通のバンドって枚数重ねるたびにリリース・スピードが落ちてくるじゃないですか。制作のスピードも落ちてくるし、結成当初の勢いだけじゃやっていけなくなるってところもあると思うんですけど、サバプロは創作意欲が尽きることがないバンドですよね。
Yosh:やりたいことをやれているという意味では本当に嬉しいと思いますね。"やりたくてもできない"という部分をみんな見逃しちゃうというか。僕らもたぶんそうだし、メジャーでちょっと脚光を浴びると"この人たちはどうせ何か後ろにあるんでしょ?"みたいに言われる。でも、本当に素直にやってきたつもりだから、裏表あると思ったなら"じゃあ探しに来てよ!"、"ライヴで観て逆に教えてよ!"って思いますね。
Ivan:制作スピードは、このアルバムまではすごく速かったなって自分で思うし、それが決して悪いことではないと思う。ただ、どっちも見てみたいなっていう気持ちはありますね。
-どっちもというと?
Ivan:スパンを狭めてこのクオリティで出し続けることに対する美学はもう経験したので、次はしっかり時間をかけて作るとどういう形になるのか。今後の展望を言うにはちょっと早いですけどね。
Yosh:すっごく向き合って作った経験がないので、それをやりたいって気持ちはあります。ただ、俺じっとしてられなさそう(笑)。
-Yosh君はワーカホリックだから。
Yosh:パソコンでやっちゃいたくなる。"はい、わかった"ってやりたくなっちゃう癖がついてるんで。"スピード感が逃げ"っていう部分もあるかもしれないですね。
Yudai:ずっと動いてることに慣れてるからね。それがなくなる瞬間怖くなっちゃう。
Yosh: "考えてない"のと同じなんですよ、曲を作ってないって。自分の頭の中を整理してないっていうのと同じなので。"ブレてない"って言ったらそこですかね。曲を作ること、そういう角度から音楽を愛してるっていう。
-今はまだコンスタントに作り続けるタイミングなのかもしれないですね。無理に止めるものでもないですし。ちなみに、今作品のミックス・エンジニアはPANIC! AT THE DISCOやISSUES、I SEE STARSなども手掛けるErik Ronですね。
Yosh:Erikは以前John Feldmannのもとで働いていたんです。THE USEDの名作に携わったときの話も聞けたり、歳も近かったので、LAヴァイブスが生まれて面白かったですね。
-どういうきっかけで彼(Erik)を起用したのでしょうか?
Yosh:きっかけと言えば聴いてて一方的に好きだったっていう。
-それでオファーしたと。
Yosh:はい。僕がLAに遊びにいったときに"会いたいな"って思って、僕からDMを送ったんです。そしたら"今FIRE FROM THE GODSのレコーディングしてるから、遊びにこいよ"って言われたんです。それで会いに行ったらヴァイブスもスタジオも良くて。
-なるほど。アルバムを3作連続でKrisとやってきましたが、不満があったというよりは、新しい風を入れたかった感じですね。
Yosh:そうですね。不満というよりも、"試したことがないこと"を試していかないと本物の不満になるんで。文句になっちゃうというか。
-なるほど。実際にErikと一緒にやってみてどうでした?
Show:実はドラムのレコーディングはKrisなんですよ(笑)。
-そこは残したんですね。
Show:RECの音に関してはやっぱり生音なんで、狭いスタジオでやるのも怖いし。今までのドラムのクオリティがすごく良かったので、"Krisのままでやりたい"っていう僕のわがままでやったんですけど。
Yosh:でも、たぶんみんなそう感じてたと思いますよ。ドラムの音は相当すごかったです。
Show:で、Erikにやってもらったんですが、初めてだったので、意思疎通がうまくいかないってことが結構あって。"送ってもらっては戻して"を何度も繰り返しましたね。当然なんですけど、違う人がやれば違う音になるんで。さっきYoshも言いましたけど、それを試さずに"NO"はなしだなと。Krisの音はすごくいいけど、それは僕たちがそう思っているだけで、Erikのほうがいいって人もいるんじゃないかなって。僕たちの"こう思っている"っていう先入観から、ひとつ抜けた何かを見てみたいっていうところがすごく強かったので、それが叶って良かったなって思いますね。
-他の方も試して比較してみないとKrisの良さもわからないですよね。
Ivan:結局のところお互いの理解、コミュニケーションなのかなって思うところもありますね。一緒に時間をどれだけ過ごせるか。実は、Erikが日本に来て1曲だけ一緒にアレンジしなおしたんですよね。そういった新しいやり方も良かったなって思います。
-ちなみに、来日した際に一緒に作業した曲はどれですか?
Yosh:「Last Dance Lullaby」です。これは僕が10年くらい前に書いた曲なんですが、これがラップ調というか。以前僕がやっていたバンドで、曲を書いて僕がサビを歌ってたんですけど、ヴァースは必ず違うラッパーを入れてたんですよね。昔からすごく好きな曲だったので、"正式に自分でリリースしたことないな"って思って、メンバーの前で流してたら"これ良くね?"ってYudaiが言ってくれたんです。だったら自分も"ラップまではいかないけど、俺もできるよ"っていうのを見せようかなって。"ラップ今キテるよね"みたいな感じの人たちに"いや、そういう感覚でいくより、自分で噛み砕いて自分のものにしたほうがいいよ"っていうのを、見せられたんじゃないかって思ってます。これめっちゃ難しいですけどね(笑)。めちゃくちゃレコーディングつらかったです。これ以上にないスピードで歌ってるんで。
-なるほど。話は戻りますが、アルバム・タイトルの"Inside Your Head"は、直近の"WABI SABI"、"s p a c e [ s ]"と比べるとパッと見ストレートなタイトルだと思ったのですが、Track.1、2の曲タイトルを繋げるとアルバム・タイトルになるという仕掛けも含め、いろいろと意味があるんだろうなと思いました。
Yosh:『s p a c e [ s ]』が終わって僕がすぐに考えたときはウォッカが一番例えやすかったんで、ウォッカで説明したんですけど、ウォッカのボトルを提示されて飲むとき、半分入ってるものを渡されたら、"半分足りない"のか"半分も入ってる"かどうかって、人それぞれの考え方次第じゃないですか。ある本を読んでいるときに、"5つの感情があって、この5つの感情が刺激し合って人の決断力に影響を与える"って書いてあって、面白いなって、"5"という数字が僕らにとって重要なんじゃないかなと思いテーマにしました。そういう考え方についてツアー中Ivanと話してたんですけど、"考え方は人それぞれだよね"っていうところまで辿りついたら、(Ivanが)"それ全部お前の頭の中の話じゃね?"みたいな(笑)。要するに、"考えすぎなんだよ"ってよく言われるんですよね。
Ivan:単純にわかりやすくしたかったんですよね。自分の頭の中でいろいろあるかもしれないけど、それを単純にポイントとして掴みやすいように、"Inside Your Head"がいいんじゃないかなって。ストーリーが"全部含めて自分の頭の中じゃない?"っていう形に辿りついたんだろうね。あとは、自分の見方次第ですべて変わるってところです。
-「Inside」と「Your Head」の2曲が先に完成していたのではなく、アルバムのタイトルがあって、そこからこの2曲ができたんですか?
Yosh:この2曲が最後にできたんですよ。Erikがスタジオまで来てくれたときに、先輩的なアドバイスを期待して"こんな感じなんだよね"ってアルバムを聴かせたら、さっきまで結構ハッピーに話してたのに、 急に"これが日本では受けるのか?"、"アメリカとは違うんだね"って結構厳しい言葉を言われて。他のたくさんの褒め言葉も全部忘れるくらいそれがすごく頭に残っちゃったんです。彼が帰ったあとツアーに戻ったんだけど、それを言われたことが引っ掛かっていて、移動日を削って"俺いったん東京帰るわ"って東京に帰って、2日間で(この2曲を)書いたんですよ。
-なるほど。アルバム・タイトルが決まったのは冒頭2曲ができたあとですか?
Yosh:いや、そのときにはすでに決まってました。