INTERVIEW
G-FREAK FACTORY
2020.07.13UPDATE
Member:茂木 洋晃(Vo)
Interviewer:荒金 良介
G-FREAK FACTORYのニュー・アルバム『VINTAGE』は、今の時代に聴くべき傑作と言いたい。前作『FREAKY』以降、『風林花山』、『カモメトサカナ』、『FLARE/Fire』と3枚の強力シングルをリリースし、アルバムとしては約3年4ヶ月ぶりになる今作は渡部"P×O×N"寛之加入後、初のオリジナル・アルバムとなった。バンドのグルーヴも固まり、ナチュラルに音楽の幅を広げたサウンドは、1枚のパッケージとして聴いた際に凄まじいインパクトを放っている。今作の収録曲は新型コロナウイルス感染症流行以前に書いたものだが、どの曲もリアリティを帯びて迫ってくるものばかりだ。バンドを代表して、茂木洋晃にリモート取材を試みた。
-茂木さんはTwitterでバーベキューしてる写真などをアップしてましたが、この新型コロナウイルス禍はどんなふうに過ごしてました?
ずっと地元にいて、隣の市にも行かなかったです。そしたら地元がめちゃくちゃいいところじゃないかと気づいて。
-えっ、改めて?
うん(笑)。群馬の俺の街に流れている川はその中でも最高なんですよ。そういうことがわかった時間でした。これは今一度、地元を好きになる時間を神様がくれたんだなと。実は利便性のいいところに引っ越そうかと考えたけど、まったくその気がなくなりました。実際キャンプは本能から始めたところもあったから。
-以前は、キャンプをやってなかったんですか?
全然やってなかった。時間もなかったしね。自粛の中でできることはなんだろうと考えてひとりでキャンプしてたら、周りからうらやましいと言われたんですよ。さらに台風19号で詰まっていた川も清掃して......改めてこの土地から貰えるものがあるんだなと思いました。
-そして、今年3月にG-FREAK FACTORYはNHK"The Covers"に初出演し、「ダディ・ダーリン」(2016年リリースの5thシングル表題曲)をアコースティックで披露しました。昔からバンドを知るいちファンとしては感動せずにはいられませんでした。あれはどういう経緯で?
"New Acoustic Camp 2019"でライヴを観たNHKの方が話をくれたんですよ。で、16年に作った「ダディ・ダーリン」のMV(※ガスマスクをした人々が街を歩く内容)が、コロナの情勢をドンピシャに描写しているし、今この曲が取り上げてもらえるのはありがたいことだなと。公共の電波で演奏できたのは良かったですね。
-「ダディ・ダーリン」は今やバンドの代表曲ですが、改めて曲に対する解釈が変わったところもあります?
今聴いてもグッと来るし、もともとお爺ちゃんに向けてひと晩で書いた曲で......どんどん曲の本質よりも、その方法論が大事になっている傾向があるけど、「ダディ・ダーリン」は人にどんなふうに思われても関係ない、フロアにおうかがいを立てない曲なんですよ。振り返れば震災で免疫をつけさせられて、今度はコロナがきて、誰とも触れちゃいけなくなって、今バンドマンは試されていると思っているんです。やり玉にあげられて、現場を奪われて、さぁどうするって。そういう状況の中でこの曲があって良かったと思います。自分も救われたし、この曲がなければNHKで演奏することもなかったから。
-それで今作『VINTAGE』は7月15日にリリースされるわけですが、このタイミングで出すことにためらいはありました?
いやぁ、すげぇ迷いました。結局少しだけ遅らせてもらったんですよ。多くの人のマインドが明らかに変わった今音楽の聴き方も変わったと思ったから。ただ、録ったものを数ヶ月寝かせたら鮮度が落ちるし、全曲コロナ以前に書いたものなので、鮮度のほうを選びました。でも、アルバムの選曲に関してはコロナで自粛し始めた頃なんですよ。前のアルバム(2017年リリースの『FREAKY』)以降に3枚のシングル(『風林花山』、『カモメトサカナ』、『FLARE/Fire』)をリリースしたけど、表題曲は今作に1作品しか入ってなくて。
-それも珍しいパターンですよね(笑)。
ははははは(笑)。リリックでいろんな奇跡が起きてて、こっち(カップリング)の曲のほうがいいなって。
-今の時代性や作品のトータル感も踏まえた選曲になったと。
そうそう。そうなると「風林花山」、「カモメトサカナ」は選曲から自然と漏れたんですよ。
-今作はシングル収録曲で試みた挑戦や遊び心もいいフックをもたらしてて、作品全体のトータル感も素晴らしいですね。
自分でもトータルのバランスはいいと思う。若干暗めかなと思うけど、今の自分たちがそうなんだから、無理して明るめの曲を入れても仕方ないので。いいアルバムができたと思ったから、"VINTAGE"というアルバム名にしたんですよ。今もいつかは懐かしくなるわけで、その中でも光り続けるものはヴィンテージと称されると思うから。今俺らができるベストを出せたなと感じます。昔はこうじゃなきゃダメというものがあったんですよ。それを取っ払うことで一本化できた珍しいパターンかもしれない。作らなきゃといって作った曲はあまりないんですよ。
-昔はNGにしていた項目というと?
レゲエが入ってないとダメとか、そういうふうに思っていたから。でも、レゲエ好きは癖として曲に出るだろうから、それで十分かなと。レゲエという表現手法にこだわると縛られますしね。小手先でレゲエをやっても意味がないし、柔らかいアプローチでも、ちゃんと闘っている声だったり、そういうものを出したかったから。