INTERVIEW
アイリフドーパ
2025.05.29UPDATE
2025年06月号掲載
Member:Eyegargoyle(Vo)
Interviewer:サイトウ マサヒロ
バンドの二面性を極振りした闇盤『Exormantis』/光盤『Plasma~the world~』の同時リリースから早5年弱。アイリフドーパのニュー・アルバム『DINOCHRIST』が満を持して放たれた。そのクレイジーさとストイックさを一語に凝縮したかのようなタイトルの同作は、なんと彼等のキャリア最後のCDリリースになるという。缶ビールを持って取材現場に現れたEyegargoyleによれば、Ailiph Doepaからの改名によってクリアになったのは、バンド名の読み方だけではないようだ。
-フル・アルバムのリリースは、2020年に同時リリースされた闇盤『Exormantis』と光盤『Plasma~the world~』以来、約5年ぶりとなります。まずはこの5年間のことをお伺いしたいのですが。
何よりまずはコロナですよね。闇盤/光盤もコロナで苦戦して、100万円払ってるのにエンジニアが途中で飛んじゃったなんてこともあったんです。だけど、その2枚を出したことによって自分たちがどっちに進むべきかがハッキリと分かりました。やっぱり、ポップでキャッチーなものより、激しくて変態なもののほうが如実に求められてるなって。お客さんが望む方向性の解像度がグッと上がったので、アイリフドーパで提示すべき音楽のヴィジョンがクリアになりましたね。僕の作曲スタイルも、脳内から直接下ろして打ち込んでいたものが、ギターを使ってフレージングするようになったりして、レベルが上がりました。約5年間で表現の幅も広がって、いい期間でしたよ。
-シングルやEPのリリースもありましたし、約5年の間に特に活動が滞ったようなことはなかったと。
とにかく、やりたいことが尽きなかったですね。それで気付いたら約5年が経ってた。でも、アルバムの制作はどうしてもカロリーが高いじゃないですか。だから去年の7月、自分にミッションを課すつもりで先に"アルバム出しますよ!"って宣言して、そこからオープンプロセスで穴を埋めていきました。本当は"トリコ"のフルコースみたく最初に虫食いのトラックリストを全部公開して順番にリリースしたかったんですけど、ちょっとテクニカルすぎてできなかった(笑)。
-2023年5月には、Ailiph Doepaからアイリフドーパへの改名発表もありました。改めて、そのきっかけについて聞かせてください。
一言で言うと、単純に読めないから(笑)。2020年頃から、海外の人たちが「Machu Picchu」(2018年リリースの3rdアルバム『OXYGEN』収録曲)とかのリアクション動画を上げてくれるようになったんですよ。あの人たち、すげぇリアクションするの好きじゃないですか。リアクション以外にやることないんかっていうくらい。で、観てみたら、読めてないんです。"エイリフ......ドエパー?"みたいな。英語なのに外国人が読めないのは致命的だぞと。造語だから日本人も読めないのに。なのでP、H、Eを抜けばまだ読めるんじゃないかということで英語表記をAILIFDOPAに改めました。外国人の友達に聞いてみたら、"言われてみれば読める"そうです(笑)。
-ということは、海外進出の布石でもあるんですか?
そうですね。それを狙ってやってみたものの、海外にはまだ1回も行けてなくて歯痒いところですけども(笑)。
-改名によるポジティヴな影響はありましたか?
カタカナ表記になったことでスペルミスもなくなったし、みんながスッと読めるようになったのはデカいですね。お客さんに浸透しやすくなった。名前で"ん?"ってなることがなくなったので。ヤバい村の前にある、立ち入り禁止の柵をどかしたような感じです。
-今年の3月から4月にかけては、15周年を記念したワンマン・ツアー"アイリフドーパ 15th Anniversary ONE MAN TOUR「MANIHEKE」"が開催されましたが、いかがでしたか?
良かったですけど、15周年だからってジーンと来るものは全くなかったですね。"キリがいいからやるか"くらいの気持ちで、重たいものを背負ってやったわけではなく。ただ、俺等には"巨人が4つに分裂して生まれたバンド"っていう結成当初のコンセプトがあって、ツアー・タイトルの"MANIHEKE"っていうのがその巨人の名前なんですよ。もう誰も知らないのでポカーンって感じでしたけど、そのキーワードは今一度プッシュして、ここで終わりじゃないよということを強調しました。
-集大成としてエモい雰囲気を作るわけではなく。
底に溜まってる泥を引っ掻き回して対流を作るみたいな。懐かしいSEを使ったり、古い曲もいっぱいやったりして。それが刺さったかどうかは分からないですけど、かつてのアイリフドーパの息吹を感じさせつつ、これから新しいところに進みますよという、クロスフェードの境目を表現したかったって感じかな。意味のあるツアーになったと思います。
-そうして今回のニュー・アルバム『DINOCHRIST』に至るわけですが、制作自体はいつ頃から取り掛かってたんですか?
いやマジで、去年の7月に宣言してからです。ストックがあったり、温めてたりっていうわけじゃないので、ヒーヒー言いながら頑張りましたね。シングルでリリースしてた曲もありますけど、「P.H.E」、「That's a 脳脳」はリアレンジやリミックスをして。ほぼほぼこの1年弱で作った曲なので、最新のアイリフドーパが詰まった作品になってます。
-なるほど。少し話は逸れますけれど、アイリフドーパの楽曲ってだいたいどのくらいの時間をかけて完成するんですか?
アイディアだけで言うと、早いときは1日~2日。脳内でガチっとパーツが組み合わさって、そこで1回浮かれちゃうんですよ。それで2〜3週間くらい寝かせて、久々にデモを聴いたら、"全然良くねぇな"みたいな。まぁ、寝かせるのも大事なんですけどね。寝かしすぎも良くないから程良く、お酒というよりはパンみたいな感じ。だから、0から100までできるのは超頑張って半月くらいです。
-どうやって作られているのか、聴いてるだけでは想像もつかなくて。
きっかけはいろいろありますね。ふと見かけた看板の文字にメロディを付けてみたり、シャワーを浴びてるときに降ってきたり。そういう短いパーツをレゴブロックのように組み合わせてできあがっていくんです。俺のスマホのボイスメモには、リフだけの短いものから、仮歌まで入った長いものまである。そうやって胎児が成人まで育っていく過程が収められてて、ぜひ公開したいところなんですけど、ちょっと恥ずかしいので。
-じゃあそれは有料コミュニティで(笑)。
オンラインサロンやっちゃうか。月額5万円くらいかな(笑)。
-『DINOCHRIST』に話を戻しますが、作品を通してのテーマやコンセプトは考えていましたか?
ライヴ映えは意識したかな。最近、アイリフドーパのフロアがアグレッシヴになってきてて、昔よりもダイブやモッシュ、ウォール・オブ・デスが起きるようになってきたんですよ。だから、そういう楽しみ方ができる曲が増えたら楽しそうだなって。これまではコール・アンド・レスポンスができる曲が少なかったので、それも意識しつつ。あとは、変拍子を減らしました。お客さんもノれないし、自分たちも大変だから誰も楽しくねぇってことで(笑)。俺らは別にプログレで売ってるわけじゃないから。展開はするけど、ずっと4分の4(拍子)でノれるようにしました。ジェットコースター感、楽しさがずっと続くイメージです。
-たしかに、コロナ禍を挟んでフロアのムードが変わったような気がします。
人がごっそり入れ替わったんじゃないかなっていうくらい変わりましたね。言うたら、バンギャの人がだいぶ減りました(笑)。