INTERVIEW
アイリフドーパ
2025.05.29UPDATE
2025年06月号掲載
Member:Eyegargoyle(Vo)
Interviewer:サイトウ マサヒロ
ドーパをコミックバンドか何かだと思って舐めてるやつらに提示したいです
-「SU・MO・PO」はファンシーな幕開けからインパクト抜群ですね。
新しいアプローチですね。実は「NEVES」もそんな欲望を詰め込んだ曲だったので自信作だったんですけど、イマイチ世間のウケが悪かったから、そのアンチテーゼとして作ったのが「Tā Hell Anatomia」なんです。"渾身のNEVESがスベってムカついているのでほぼ展開しないワンワードゴリ押し鬼加速曲を作っています"ってポストもしちゃいましたから。
-「NEVES」は比較的シリアスなムードがありますしね。そして、「That's a 脳脳 -PARTY MIX-」は原曲と打って変わって全編エレクトロ全開で驚きました。
これは、Xでリミックスを一般公募したんですよ。締切ギリギリに、昔からドーパ(アイリフドーパ)を聴いてくれていたファンの子が送ってきてくれたのがこれでした。最後にボカロを入れてくれっていうのは僕がお願いしたんですけど、気に入ってますね。「That's a 脳脳」は"脳みそがくたびれてもうやってらんねぇ。何も生み出せねぇ"って自分を否定している曲なんですけど、その脳がクラウドサーバーにアップされて、俺の思考を代わりに歌ってくれてるのがこのボカロなんです。
-すでにアイガゴ(Eyegargoyle)さんがこの世にいない世界で。
そうそう。肉体を捨てて脳だけになった僕の情報が、ボカロに落とし込まれて歌われています。
-「That's a 脳脳 -PARTY MIX-」も含めて、今作はバンド外の音がこれまで以上に柔軟に取り入れられてる印象があります。
特にこれまでと作り方が変わったというわけではないんですけど、エンジニアは困ってましたね。せっかくバンド・サウンドでいい感じのミックスをしたのに、その上にEDMを交ぜなきゃいけないから。「SU・MO・PO」なんて満遍なく同期の音が入ってるし。俺等のやってる足し算の音楽をいいバランスにしてもらって、めっちゃ感謝してます。
-マインドとして、"もうどんな音でもカッコ良ければいいだろ"みたいな、リミッターが外れた感覚はあったりするんですか?
そうですね。限度があるとは思うけど、合うんだったらなんでも良くね? っていう気持ちはあります。あと、「SU・MO・PO」では、トラックメーカーのTokiさんに上物のアレンジをお願いしたんですけど、送り返されてきて"こんなアプローチもあるんだ"っていう驚きがありました。終盤のブレイクにNintendo Switchの起動音みたいなのが入ってて、"洒落てるー!"みたいな。自分では全く思い付かなかった。他にもピアノやストリングス、ラッパが入ってる曲もありますし、サポート・ミュージシャンには結構参加してもらってたので、仲間と共に作った感覚です。人を巻き込むと面白いものができますね。
-そしてアルバムを締めくくるのが「DEATHTINY CHILD」。これは名曲ですね。壮大なサウンドとコーラスが印象的で。
いいですよね。しかも、あれだけ真面目にやっといて最後は"ありがとSon"で締めるっていう(笑)。闇盤の1曲目「My right hand thumb is a Kraken」でも最後に"ありがとTHUMB"って言ってたけど、それに対するアンサーみたいな。またチョケることで、冒頭に戻ってくる。最後に相応しい曲ですね。ヴォーカル面では、最近めっちゃ聴いてるSPIRITBOXに影響を受けて、1回の発声でどれだけのメロディと抑揚を付けられるか実験しました。今までにないくらいシリアスなアプローチで、音もヘヴィだから、ドーパをコミックバンドか何かだと思って舐めてるやつらに提示したいですね。メタルコア好きな人はこれだけ聴いてくれたらいいです(笑)。
-SPIRITBOXの名前が上がりましたが、アイガゴさんが最近お気に入りのアーティストってどのあたりなんですか? どのような音楽をインプットしているのか気になります。
新譜で言うとKILLSWITCH ENGAGEも良かったし、THROWNも割れの先に行っちゃってるような異常な音で良かったです。他にはBLACK MIDIとか、HIGH FADEっていうファンクのバンドとか。あと、やっとTALKING HEADSにハマってる。ハードコア界隈だとDREGG。DEATH'S DYNAMIC SHROUD.WMV、NANORAY、XTC DOLLみたいなブレイクコア系もめっちゃ好きです。
-改めて、『DINOCHRIST』はアイリフドーパにとってどんな作品になりましたか?
今までの自分たちが積み上げてきたものを今一度見つめ直して、それをライヴでどう提示するかを見据えつつ作ったアルバムでした。今までは手探りだったところもあったんですけど、今回は敵を視認した上で撃ち抜くつもりで。かといって相手のことばっかり考えて音楽をやってもしょうがないから、そこのバランスも取れました。相手を喜ばせつつ、自分も気持ち良くなる。ポリネシアン・セックスみたいな(笑)。
-じっくり時間をかけて(笑)。
みんなが楽しめるものになりましたね。今までのアルバムで出し切れなかったものを全部出せたかな。それこそ、ペーパーでケツを吹いて気持ち良くなれるくらいいいクソが出せたなって感じですよ。
-自らができることもそれを届ける相手も、より明確になった上で完成した作品だったということですね。
今まで8ビットぐらい粗かった解像度が、64ビットぐらいにはなったかな。第三の眼が開いた感じで、作ってて楽しかったです。だから今は本当に虚無(笑)。まだまだ作りたい曲はありますけど、一旦お疲れモードに入ってるので、今日もこうしてビールを飲みながら取材を受けました。
-アルバム・リリースを記念して、6月3日にかけて、Music Bar ROCKAHOLIC -Shinjuku-でのコラボ・ウィークも開催されます。
俺も何が起こるかよく分からないんですけど(笑)。とりあえずみんなで爆音の中MVを観ましょう。で、1曲ごとに俺がショットを飲んで死んでいく。命日になってもいいつもりで遊びます。
-そして、いただいた資料によれば現在バンド史上最大最長のツアーの計画中だそうですね。
頑張りたいですね。まずは8月10日にレコ発の3マン("アイリフドーパ 6th Album「DINOCHRIST」 Release Party「GYAKUDOPANOHI」")があるんですけど、メンツはバックドロップシンデレラとSABLE HILLSと俺等で。
-おぉ、面白い組み合わせ。
クロスオーバーで面白いですよね。ワチャ系ともメタル系とも絡んでる俺等だからこそ組めるビッグ・マッチで。2019年にはHER NAME IN BLOODとバックドロップシンデレラを呼んだんですよ("Ailiph Doepa超限定入手型スペシャルアルバム「We made this」リリースイベント「CD強制付与GIG」")。それよりさらに熱くできればと思います。