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INTERVIEW

アイリフドーパ

2025.05.29UPDATE

2025年06月号掲載

アイリフドーパ

Member:Eyegargoyle(Vo)

Interviewer:サイトウ マサヒロ

-個人的な印象としては、闇盤/光盤を経たことで、ダークサイドとポップサイドをおいしいとこ取りした本作に至ることができたんじゃないかと思いました。

まさにその通りで、1回遠心分離機に掛けたことで、上手く抽出できました。CDの帯にも同じようなことが書いてあります。ChatGPTに考えてもらったんですけど(笑)"異世界音楽の極北"って書いてある。"極北"なんて言葉、使ったことねぇ。

-ある意味では、"聴くテーマパーク"というアイリフドーパの核に回帰したような。

原点回帰しつつ、進化しつつ、いい塩梅で。2016年頃のアイリフドーパを欲してる人には申しわけないですけど、俺の好きな音楽も変わっていくから、どうしてもあの頃そのままにはもう戻れなくて先に進み続けるしかないんで。今回はトラックメーカーを加えてEDM要素を取り入れたり、ニュー・スタイル・ガバみたいな音を鳴らしたりして、俺の今の趣味をガッツリぶち込みました。ひたすら、4分の4で。

-やっぱり踊れる音楽がいいと。

踊らせたいですね。血湧き肉躍る昂りを作りたい。

-そして、本作は"キャリア最後のCDリリース"というトピックも目を惹きます。なぜこのような決断に至ったのでしょう?

いやぁ、もうCDは終わりですから。時代の終焉を感じたので。少なくとも俺は聴かないし、自分が使わないものを人に売るのっておかしいよなって。ビジネスとして割り切るなら今後も作ったほうがいいんでしょうけど、だとしても、カセット・テープやLPみたいにオシャレなインテリアになるほうがいいんじゃねぇかと。今後、フィジカル・リリースを完全に無くすかはまだ分からないんですけど、CDをポコポコ出すのはもう終わりにしました。今回は受注生産で販売してみて、アイリフドーパにしては売れてるんですけど、それでも"こんなもんだよな"っていうレベルです。2億枚くらい売れたら考え直そうかと思いましたけど(笑)。

-業界に対する問題提起のような意味合いもあるんですか?

いやいや、アンチテーゼでもなんでもないですよ。みんな上手いことやってくれと思ってます。ただ純粋に、俺がいらないものは作りたくない。

-自分が買わないものを胸を張って売るのは難しいですもんね。

そうですね。こんなふうに"最後"とか言わないと売れないですもん。まぁ、こんなの嘘かもしれないですけどね。SLAYERみたいに、解散しておいてしれっと復活するバンドもいるから。閉店セール詐欺的な感じで、毎回"最後"って言いながら売り続けるかもしれない。それだけは言っておきます(笑)。

-言わないほうがいいと思います(笑)。

でも、このアルバムも10年後には"ポケモンカード"みたいに高騰してるかもしれないですよね。100枚ぐらい買っておいて、いつかメルカリにぶっ放せばいい。公式が転売推奨するって最悪ですけど(笑)。

-"DINOCHRIST"というタイトルにはどんな意味が込められているんですか?

1曲目の「Dinosauria」が、恐竜と人間のハーフとして恐竜たちを導く、"ディノサウロイド"をフィーチャーした曲なんですよ。だんだんその導き方を誤って、恐竜風俗店を経営して大乱交させたことでHIVならぬDIVが流行って、地下世界の恐竜パラダイスが終わるっていう曲で。僕、文明が何度も繰り返されているとか、そういうミステリアスな都市伝説が好きなんです。関 暁夫さんがニヤッとしそうな感じの。だから、恐竜時代に古代宇宙飛行士みたいな頭のいい存在がいるっていう物語を考えて。ジャケにはUFOが写っていて、隕石が降るなかで滅亡直前にサンプルを回収してたり。曲順もそのストーリーになってるんですよね。前半チョケの後半シリアスなんですけど。

-たしかに。

「Dinosauria」が古代で、「Kamchatka Jalapeño」、「Tā Hell Anatomia」、「DEATH BABOON」あたりで原始人が出てくる。「P.H.E -HAPPY END-」、「SU・MO・PO」でエントロピーが増大してきて。「NEVES」は、この世界が高度な知的生命体によってシミュレーションされているんじゃないかという、シミュレーション仮説についての歌。その生命体によって人類が滅ぼされて冬が訪れたのが「White Sun」。そして、肉体も物体もなくなった世界で、統合思念体がクラウド上に浮かんでるのが「That's a 脳脳 -PARTY MIX-」。で、最終的には「DEATHTINY CHILED」で新しい命が生まれて、また「Dinosauria」に戻ってくる。

-そんな裏設定があったんですね。

そうなってるなって、最近気付きました(笑)。スーパー後付けですけど、そういうことにします。

-オープニング・トラック「Dinosauria」はアルバム・タイトルの由来でもありますし、MVも制作されておりリード・トラック的な立ち位置の楽曲かと思いますが、なぜこの楽曲をフィーチャーすることに?

僕は「SU・MO・PO」が一番推しではあるんですけど、単純に「Dinosauria」は1曲目に相応しいかなと。カウントダウンからいきなりアルバム名を叫ぶし。ノリやすくて、導入で身体を温めるのにちょうどいい。理由はそのぐらいですね。シンプルすぎるかなと思うぐらいシンプルな曲なので、これからどうライヴで育って化けるのか、成長を見守っているところです。あと、32小節くらいもはや誰も演奏してないパートがあるんですけど、あそこでのメンバーの何をしたら全く分からないという表情も最高ですね(笑)。

-先程も4分の4でいいんじゃないかという話がありましたし、そのシンプルさが現在のモードなのかもしれませんね。この楽曲は、史上初のジャンル"恐竜パーティコア"とのことですが。

言いたいだけですね(笑)。恐竜とパーティーってワードは親和性が高いので。

-続く「Kamchatka Jalapeño」はいかがですか?

すごく下品なんですけど、下痢の歌です。歌詞は脳みそのリソース0で作りました。

-"Raise up! & アピんな 全世界にshowびらか 盛大にアピりゃ SNSバズ狙え大 便で"という歌詞は面白すぎると思います(笑)。

舐めてますよね、マジで(笑)。カムチャツカ半島のクリュチェフスカヤ山に立ったときの、尻の穴にメントスを入れたような爽快感を、排便の気持ち良さに重ねまして。"ペィパァでwipe It's done"って、"ペーパー"を"ペィパァ"って表記してるのも自分でやかましいわと思いながら(笑)。"おいコニ◯キ 何トンの便吐き出してたお前はone at the time? リスペクト!"って、何をリスペクトしてんだ(爆笑)。「Machu Picchu」と同じようにくだらなさを狙った曲なので、思考0で楽しんでほしいです。

-スペイン語を思わせる歌唱もユニークですよね。日本語を英語っぽく歌うことはあれど、スペイン語に寄せるのは珍しいような。

そうそう、めっちゃ巻き舌で。そこは意識してたので、伝わって嬉しいです。

-「Tā Hell Anatomia」についてはどうですか?

4分の5で変拍子ではあるんですけどノれる曲。タンゴから急に部族の踊りになって。

-中盤のガバ風パートがカッコいいです。

そこ、推しポイントですね。歌詞では"杉田玄白振れサイリウム"って歌ってます。ちょうど昨日お客さんを入れて撮影したんですけど、MVで杉田玄白がサイリウムを振ってる映像を入れたら面白いかなと思って、絶賛制作中です。

-個人的にはこの「Kamchatka Jalapeño」、「Tā Hell Anatomia」の2曲にガツンとやられました。

どちらもライヴ映えしそうな曲だし、やっぱりシンプルですよね。僕、シンプルな曲を作ってると恥ずかしくなってきちゃうので、我慢しながら作りました。

-なるほど、カオティックな展開は照れ隠しだったんですね(笑)。

それもあるし、多動症みたいなところがあって、我慢できない(笑)。いろいろぶち込みすぎちゃう癖があって、それが完全に反映されてるのが「SU・MO・PO」。僕の欲望が叶えられて、大満足です。