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LIVE REPORT

KNOTFEST JAPAN 2016 -DAY1-

2016.11.05 @幕張メッセ

a crowd of rebellion


前日の、突然のA DAY TO REMEMBER出演キャンセル発表。そしてその穴を埋めるようにオープニング・アクトから急遽本編へと時間枠が移動となったa crowd of rebellion。はっきり言ってこれはバンドのことを考えると"おいしい"。その一方で、本人たちのコントロール外の部分であらぬ批判も招きかねない、諸刃の剣。そんな難しいステージにもかかわらず、ゆるいMCから"両手を上げてくれ"と叫んで始まったのはA DAY TO REMEMBERの代表曲「The Downfall Of Us All」のイントロ。(本来的外れの)批判もすべて呑み込んだうえでのステージを見せる決意表明のようなニクい演出で"俺たちだって観たかったんだーー!"と絶叫し、アウェイの空気を切り崩しにかかる。

横から見ていると、「Black Philosophy Bomb」を皮切りに、曲が始まるとひとり、またひとりと前の盛り上がりに参加していく様子が気持ちいい。"ダーク・カーニバルらしいことしようぜー!"と煽ると、センターで分れてからのウォール・オブ・デスも発生。続く「She'll Never Forgive To Be Insulted.」でも2回目のウォール・オブ・デス発生、と盛り上がりをみせる。"全員の「O.B.M.A」聞かせてくれ!"と宮田大作(Vo)がオーディエンスに問いかけると、いい感じに"ohohohohoh"のシンガロングが揃う。なんだ、知ったうえで来てるオーディエンスもかなりいるじゃないか。

宮田が"(俺たちのこと)嫌いかー!? Twitterでいっぱい見たぞー!"、"ビール瓶とか投げられるのかなって思った"と自虐的なMCをするが、フロアは完全に彼らに好意的な反応を見せる。果たしてネット弁慶が多いのか、彼らは結局ここには来ていないということか。最後に「M1917」をぶちかまし、宮田はオーディエンスにダイブ。小林亮輔(Vo/Gt)のハイトーン・パートが続くからって自由すぎる。けど、見ていて気持ちいい。曲のラストにはリフトされたファンがフロアのあちこちに現れ、ファンのキッズたちと一緒に今日のステージを迎えられたんだな、と感じさせられる光景で締めくくった。(米沢 彰)



ROTTENGRAFFTY


ラウドロック界のパーティー番長ことROTTENGRAFFTYが登場。これまでに数々のロック・フェスに出演してきたバンドだが、いかなる場所でもブレないタフなパフォーマンスで観客を躍らせてきた5人。この日のステージでも、安定のロットン節を轟かせてくれた。
"幕張ー! 盛り上がれー!!"
威勢のいい掛け声とともに「STAY REAL」でライヴがスタートすると、観客は拳を上げて熱狂する。続いては、目下最新曲「So...Start」を投下。ラウドでエネルギッシュなサウンドが会場を支配した。
"今日出てるバンドの中でめちゃめちゃ日本語やねんけど......関係あるかー! 適当にやってくれぇー!!!"なんていうN∀OKI(Vo)のMCには、思わず声を出して笑ってしまった。
続いて人気曲「世界の終わり」と、一瞬も休まず畳み掛ける。カラフルなライトに照らし出された「D.A.N.C.E.」で観客も踊り狂っていた。"日本人のかっこいいとこ見せてやろうぜ!"というNOBUYA(Vo)の言葉を受けて、フロアの熱はさらに増していく。
「This World」では、N∀OKIとNOBUYAがステージを降り、花道から観客に喰らいつくように歌い、"叫んでくれやー!"などと煽りに煽っていく。このアグレッシヴなライヴを引っ張っているのはツイン・ヴォーカルのふたりだが、それでもまったく取っ散らからないのは、楽器隊の抜群の安定感があってこそだろう。場数を踏んできた叩き上げバンドの実力は半端なじゃない。ラスト・ナンバー「金色グラフティー」ではダイバーがノンストップという狂乱ぶりだった。ロットンらしいハチャメチャ感が最高に楽しかった。(MAY-E)



DISTURBED


個人的に今日一番の期待。いや、期待なんて言葉では収まらないぐらいに待望し熱望していたDISTURBEDが間もなく始まる。何年待ったんだろ。とか思いながら待っていたら「Ten Thousand Fists」で幕開け。イントロから強烈な盛り上がりを見せ、リアルに"1万の拳"が幕張メッセの空に突き上げられる。イントロの最中、David Draiman(Vo)がステージに出てくるなりひと言"ジャパン!"と発するだけで、爆発のような歓声が上がる。なんだよこのカリスマ感。そして、サビではオーディエンスが一体となってジャンプ、ジャンプ。楽しすぎ。みんなでひとつの曲を楽しむだけでこんなにテンションが上がってくるなんて。そのまま「The Vengeful One」、「Stupify」と畳み掛けてくるDISTURBEDの演奏には彼らが時代を超越した存在であることをまざまざと見せつけられているかのよう。

それにしても、音圧が違う。まるでリミッターを外したかのような圧力で迫ってくるDISTURBEDの演奏は、ここまでとは段違いに感じられる。ミッド・テンポ主体のバンドだからこそ、カチッカチッとした正確な演奏とグルーヴ感がこれ以上ないほどに研ぎ澄まされ、正確なカルテットのリズムが音圧となって表れているのだろう。頭ではそうわかりつつも、"もしかしてスピーカーを本当に追加したのかもしれない"、と実際にそう思えてくるほどの音量に感じられた。

"ライトを掲げてくれ"

Davidが呼び掛けると相当な数のスマートフォンの光が掲げられた。ピアノ、ウッド・ベース、アコギ、ティンパニのアコースティック編成での「The Sound Of Silence」。鳥肌が立ちっぱなしの圧巻の演奏。まるで歌劇場でオペラでも見ているかのような壮大な世界観にぐいぐい引き込まれる。非常に言葉にしづらいのだけど、この人たち以外がやったらここまでかっこよくならないはず。ヴォーカル・ラインは独特だけど、それだけが例外で、バンドとしてのサウンドも含めて、実はやっていること自体はものすごくシンプルでオーソドックス。テンポは抑えめで、ギター・リフもリズム隊もあえてあまり難しいことはやっていない。それなのに、圧倒的なサウンドを成立させている。これがDISTURBEDのカリスマ性か。

バンド編成に戻ってからも音に酔いそうなぐらい圧倒的なサウンドを繰り広げ続ける。それにしてもDavidは威厳がありすぎてまるでローマ法王なんじゃないかってぐらい。少なくとも"コンクラーベ"には呼ばれているはず!? ラストは「Indestructible」、「Voices」、「Down With The Sickness」と続け様に放ちステージを締めくくる。初期の曲はリリースから10年以上も経っていることが信じられないぐらいに今も活き活きとしていて、圧倒的なエネルギーを今も内包している。そんな時代を超えた存在感を見せ続けられたような充実のステージだった。(米沢 彰)



SiM


9月24、25日にカリフォルニアで行われた"Ozzfest Meets Knotfest"に出演し、バンドとして初めてのアメリカ公演を行ったSiM。その際の興味深いドキュメンタリー映像が公開されており、そのなかで語られているとおり、彼らはひとつひとつ夢を叶え、日本武道館、横浜アリーナの公演を成功させ着実に日本を代表するロック・バンドとして確たる地位を築いている。ステージには"SILENCE iz MINE"の大きなフラッグが掲げられ、サイレンのSEが流れるなかメンバーが勢いよく走ってステージに登場し、1曲目を「THE KiNG」でスタートし、腰に響く低音とスピーディなプレイに合わせてオーディエンスも加熱していく。「MAKE ME DEAD!」ではシャッフルのリズムに乗ってMAH(Vo)が腰をくねらせながら歌い、"飛んでこい!"と煽りダイバーが続出する。「Fallen Idols」ではMAHの独特の歌い回しと、パフォーマンスの見せ方が格段に上手くなったように感じその姿がとても印象に残った。「Faster Than The Clock」が始まるとそこかしこにサークル・モッシュが生まれ、GODRi(Dr)のハイハットのオープン/クローズの音が気持ちよく響き、SIN(Ba)も大きな動きで飛び跳ねまくり、SHOW-HATEも叩きつけるようにギターを弾く。"3つ好きなバンドを挙げろと言われたら必ずこう答えてきました。RANCID、THE SPECIALS、そしてDEFTONES。今日一緒にステージに立てて幸せです。好きすぎて歌詞のなかにDEFTONESの曲名を入れてしまいました"というMCのあと、「The Problem」がプレイされる。「Rum」ではオーディエンスの携帯に光を点らせ、美しい光景が広がるなか情感たっぷりに楽曲がプレイされた。「KiLLiNG ME」ではお馴染みの1、2、3カウントからのジャンプ、ラストの「f.a.i.t.h」ではウォール・オブ・デスが繰り広げられた。フェスを大いに盛り上げつつ、SiMの個性をふんだんに見せつけ爪痕を残していった。(KAORU)



DEFTONES


DEFTONESコールが大きく響き渡る開演前。彼らのライヴへの期待の高さが窺える一幕だ。DEFTONESとDISTURBEDというアメリカでは絶大な支持を誇る二大バンドが揃って出演するためだろう、洋楽志向のフェスの中でもこの日はとりわけ外国人客が多かったように思うが、DEFTONESのライヴ中、フロアを率先していたのもやはり彼らだった。
最新アルバム『Gore』の大きなバックドロップを背景に、柔らかな音と光が一体となっていく、幻想的なオープニング。メンバーが登場すると、会場は再び歓声に包まれた。
"ハロー、トーキョー!!"
手短なChino Moreno(Vo)の挨拶から、1曲目は「Diamond Eyes」。極上のヘヴィネスに幕張メッセがみるみる染まっていく。ズシンとくる重低音に緻密に音が重なって、それが身体をズブズブと侵食していく感覚がたまらない。「Digital Bath」は高音域をファルセットで歌い上げるなど特に繊細さが際立っていたが、「KimDracula」でのChinoははつらつとしている印象で、続く「Gore」ではフロアに降り、しばらく観衆にもみくちゃにされるという一興も見られた。"アイ・ラヴ・ユー・ジャパン!!"と笑顔で放ったひと言にも大きな歓声が飛んでいた。
「Rocket Skates」はリズム隊が凄まじくて開いた口が塞がらず、「Tempest」のドゥーミーなグルーヴを経て、「Swerve City」のキャッチーさが気持ちよく身体を貫く。そして日本語でのカウント"イチ・ニ・サン!"でプレイした名曲「Be Quiet And Drive(Far Away)」はひと際エモーショナルに染み渡った。もう最高だ。
直球のヘヴィネス・ナンバー「Headup」から始まった後半戦でフロアは狂乱の渦に。余韻を持たせて十分に観客を煽り、ギターのハウリングから人気曲「My Own Summer」へと流れる。続く「Change(In The House Of Flies)」では左右に手を振る観客がオレンジ色の照明に照らされ、ひと際美しい光景を作り上げていた。ラストは初期ナンバー「Engine No. 9」。Chinoはアンプの上から飛び降りたりマイクを投げつけたりと、荒々しいパフォーマンスで観衆を圧倒して終演した。
他の追随を許さない圧倒的な音作りと世界観......何度観ても惚れる。(MAY-E)



SLIPKNOT


開催直前にリーダーであるClown(Per)が家族に不幸があったこという理由で出演がキャンセルとなり、プロモーション来日のインタビューの際に彼がどれほどKNOTFEST JAPANを楽しみにしていたかを思うと、とても心が痛かった。しかし一番つらいのはClown本人だろう。
ライヴ直前に、明らかにメンバーの意図であると感じられるDavid Bowieの「Fashion」が丸ごと流れた。今年1月10日に逝去したBowieへの追悼が込められていたのだろう。
大歓声で迎えられ、暗いステージのなかでメンバーがそれぞれの配置につき「The Negative One」でスタートし、" トーキョー! テヲアゲロー!!"という迫力のあるCorey Taylor(Vo)の声に応じオーディエンスから高々と拳が上げられた。前回のKNOTFEST同様に上手と下手のパーカッション台がクレーンのように上昇と下降を繰り返し、ボンテージ風のラバーの衣装に身を包んだSid Wilson(DJ)が奇怪な動きで踊りまくる。ブラストビートの速さが凄まじく、のっけから感情に任せているかのような生々しい演奏に呆気にとられてしまった。「Disasterpiece」ではChris Fehn(Per)が上手に移動しClownのパーカッションを叩くなど下手側と交互に立ち位置を変えていき、Clown不在を補うがごとく渾身のパフォーマンスを見せてくれた。グロテスクな映像とソリッドな音が相乗効果を生んでいる。「Eyeless」はジャングル感を足したアレンジになっており、走り気味な演奏と"Motherfucker!"という力のこもりまくったシャウトに、2014年のKNOTFESTのライヴのときとは明らかに違うものを感じた。ミドルなロックンロール・ナンバー「Before I Forget」は原曲より少し速いテンポだったが、演奏のバランスを取り戻し、Jim Root(Gt)とMick Thomson(Gt)もテンション高めにステージを歩き回ってSidのヘンテコダンスもキレッキレだ。「The Shape」では不穏な旋律と強いリズムによる轟音、高速のフロウと鬼気迫るスクリーム、目を覆いたくなるほどグロテスクな、手術室で血が飛び散る映像など、何もかもに圧倒されてしまった。「Killpop」ではスクリーンに星空と桜が映され、速くなっていく展開のリズム、バス・ドラムの迫力が凄まじく、「Dead Memories」ではMickの情感たっぷりのギター・ソロに魅了される。「The Heretic Anthem」から再びアドレナリン全開のプレイとなり、ラウドロック・アンセムに狂喜したオーディエンスはここぞとばかりに暴れまくる。「Left Behind」はもともとグルーヴィな曲だが、今日は荒っぽい演奏で畳み掛け、全身でシャウトするCoreyの表情は少し苦しそうだ。特に「Skin Ticket」で見せたマスク越しに覗かせた表情は痛々しくもあり、"Keeping myself"という歌詞にいっそうの説得力を感じてしまう。尽き果てたようにしゃがみ込むという場面もあり、正直少し心配にもなってしまったのだが、「Wait And Bleed」で、まとまりなんて知るか! と言わんばかりのそれぞれのメンバーのヤケクソさを感じるステージングと演奏がやたらかっこよく、「(Sic)」は今日一番の凄まじい盛り上がりとなった。
途中に挟まれたMCでは、Coreyが"ドウモアリガトー! コンニチハトーキョー! コンバンワッ! ハイッ!"などとお馴染みのファン・サービスで和ませ、"また戻ってくることができて、日本で再びKNOTFESTを開催できたことがすごく嬉しいよ"、"Clownは今日いない。彼の家族に不幸が起きてしまったから。でも彼に拍手してほしい"と言うとClownのマスクが掲げられ、大歓声が沸き起こるという場面も。
アンコール1曲目の「Surfacing」で"ナカユビタテロー!"と煽られて会場中がFUCKサインで埋まり、「Duality」ではChrisが金属バットでパーカッションを叩き、耳がキーンとなる爽快な打撃音が今も頭にこびりついている。ラストはオーディエンスを全員座らせて一斉にジャンプさせる「Spit It Out」を迫力満点にプレイし、定刻を大幅に過ぎた時間に1日目のライヴを終了させた。SLIPKNOTは"痛み"、"悲しみ"、"怒り"、"憎しみ"という負の感情をすべて音に落とし込んできたバンドだ。しかし、今日ほど生々しく"感情"が全面に出たプレイを聴いたのは初めてだったと思う。これこそSLIPKNOTの真髄であり、彼らが表現してきた音楽の原動力となるものを垣間見たような、とても貴重なライヴだった。(KAORU)