俗に言うニューメタル全盛期において、スキンヘッドのルックスがインパクト大なDavid Draimanによる、スタッカートを効かせた、リズミックで呪術的な唯一無二のヴォーカルを軸に、うねるようなヘヴィ・グルーヴと不穏なエレクトロ・サウンドも自在に操り、陰鬱でありながらもキャッチーさを兼ね備えたヘヴィネスを提示したデビュー作『The Sickness』（2000年）が大ヒット。一躍トップ・バンドとして世に踊り出た。全米チャート1位を奪取した名作『Believe』（2002年）以降は、飽和状態にあったニューメタル・ブームとは一線を画す、王道のヘヴィ・メタル・サウンドを取り入れ、時代の波に乗ることもなく、リリースした作品すべてが商業的にも成功を収め続けてきたが、それは、DISTURBED流儀のヘヴィ・ロックが、ブームとは無縁のものであったことを端的に示す証左にほかならない。近年、ニューメタルに影響を受けたポスト・ハードコア世代のバンドが続々とデビューするなかで、オリジネーターたる彼らが"進化"を意味するタイトルを冠したアルバムを作り上げた。通算で7枚目となる最新作『Evolution』である。
　
"準備はいいか？"と挑発的に宣言するオープニング・ナンバー「Are You Ready」は、得意とするエレクトロ・ビートとダイナミックなヘヴィ・ロック・サウンドが融合し、熱い熱いギター・ソロも惜しみなく披露された、文句なしのDISTURBED節と言える楽曲。シャッフルのビートとソリッドなギター・リフで魅せるTrack.2「No More」、叙情的なイントロから、いかにもDISTURBEDといった具合の正確無比なリフが刻まれ、サビで美しいメロディが炸裂するTrack.4「In Another Time」、ミディアム・テンポでヘヴィ且つメロディックに迫りくるTrack.5「Stronger On Your Own」――と、旧来のファンも納得のヘヴィ・ナンバーが目白押しである。だが、本作において特筆すべきは、アコースティック・ギターを基調とした非ヘヴィな楽曲であろう。Track.3「A Reason To Fight」の、一音一音を噛み締めるように歌うDavidの歌唱の素晴らしさたるや。優しい音色のギターがシンプルながらも今までにない雰囲気を演出し、押し引きを弁えたベースとドラムスがしっかりと土台を支え、ドラマチックなストリングスも嫌味にならないアンサンブルが印象的なTrack.6「Hold On To Memories」、軽やかなアコギと、美麗なファルセットを駆使するDavidの歌唱も見事なTrack.8「Watch You Burn」、哀愁漂うアメリカン・バラードのTrack.10「Already Gone」の堂々たる出来映えは、まさに貫禄のひと言。ベテランならではの説得力があり、ぽっと出のバンドには絶対に成しえない完成度を誇っているのだ。アルバム全体を通して、メタリックな刺々しさは減退し、より大陸的な、スケールの大きい音作りとなっている。本作に関して、彼らが若いころに聴いていたクラシック・ロックからの影響を公言しているのも、なるほど、と思わせるものがある。それゆえ、本作の評価が賛否両論であることも致し方ないことではあるが、確固たる信念のもと新たな進化を選んだバンドが作り上げた音は、流行り廃りとは無縁の力強い作品となった。それは、DISTURBEDが常に選んできた道のりと重なる結果であろう。

　
なお、本作は12月12日にリリースが決定しており、ボーナス・トラックとして収められた、SIMON & GARFUNKELのカバー曲「The Sound Of Silence」のライヴ音源における、Myles Kennedy（Vo/Gt／ALTER BRIDGE）との豪華共演も聴きどころである。

▼リリース情報
DISTURBED
ニュー・アルバム
『Evolution』

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WPCR-18152／￥2,200（税別）
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※国内盤のみオリジナル・ステッカー封入
　
1. Are You Ready
2. No More
3. A Reason To Fight
4. In Another Time
5. Stronger On Your Own
6. Hold On To Memories
7. Saviour Of Nothing
8. Watch You Burn
9. The Best Ones Lie
10. Already Gone
11. The Sound Of Silence (Live)(Feat. Myles Kennedy)
12. This Venom
13. Are You Ready(Sam De Jong Remix)
14. Uninvited Guest

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