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FEATURE

SLIPKNOT

2011.11.01UPDATE

2011年11月号掲載

SLIPKNOT最高傑作として名高い『IOWA』 10年の年月を経て今ここに蘇る…!

Writer KAORU

SLIPKNOTのデビュー。それは00年代に差し掛かろうという時期に、我々が抱えていた漠然とした時代へ突入することへの不安が、おどろおどろしいマスクを纏った総勢9名という大集団が繰り出す爆音によって吹き飛ばされ、全世界に未知なる衝撃が走った瞬間だった。

SLIPKNOTは99年(日本では00年)に1stアルバム『Slipknot』をリリース。エクストリームなメタル要素を基盤に、随所にパーカッションやスクラッチ音が入り、ドラムンベースのリズムまでをも導入するという斬新な手法を取り入れながらも、激しさと聴きやすさの両方を兼ね備えた最新型エクストリーム・サウンドは、ここ日本でもデビューから瞬く間に火が付いた。

当時ロック・シーンにおいてRAGE AGAINST THE MACHINE、KORN、LIMP BIZKIT、NINE INCH NAILSなどが活躍しており、ラウドロック・シーン全盛期と呼べる時期であったのは確かだが、SLIPKNOTほどの激しい音楽がここまで受け入れられたことは初めてだった。これは彼らの実力の証であり、ロック史上初の快挙と言っても過言ではないだろう。

私は当時DJを始めて間もない頃であったが、彼らを初めて耳にした時の興奮は今でも忘れていない。普段はUKロック(今で言うインディロック?)を好むリスナーでさえも、「(sic)」や「Wait And Bleed」で踊り狂ったり、頭を振ったりしていたのだ。それはあまりに爽快な風景だった。SLIPKNOTの登場は、リスナーや後続アーティスト、ひいては音楽シーンに絶大な影響を与えたと共に、その後のロック・シーンの行く先を預言したとも言えるセンセーショナルな事件だったのだ。

そして『Slipknot』から約1年後、2ndアルバム『IOWA』がリリースされる。『IOWA』は、それ以降リリースされたSLIPKNOTの作品の中でも、最も攻撃的で、重く激しく、力強さが漲っている作品だ。この『IOWA』をSLIPKNOTの最高傑作に選ぶファンが非常に多いのは、そういう観点から見ても至極当然の結果なのだろう。

『IOWA』が世に出てからちょうど10年を記念し、11月2日に『IOWA 10th ANNIVERSARY EDITION』がリリースされる。内容としては、DISC-1が『IOWA』全編+ボーナス・トラック1曲(「My Plague(New Abuse Mix)。DISC-2は02年に行われたロンドンでのライヴ音源(映像としては既出だが、音源化は初である)。DISC-3は「GOAT」と名付けられた、当時の映像とメンバーの最新インタビューを織り交ぜた60分のドキュメンタリー作品(尚、この映像は、#6 Clown(Shawn Crahan)自身が監督を務めている。)である。
「GOAT」の一部は既にオフィシャルで公開されており、#5 Craigのマスクの中身を中心に映しながら、「ト・ト・トォォォン!」と、何やらハイテンションなCoreyの声が響いている。今月号の激ロック・マガジンが読者の手に届いている頃には全容が明らかになっているわけだが、個人的にも「GOAT」はとても楽しみである。また、ライヴ音源については、既に映像を観た人にはわかる通り、非常に臨場感のある作品に仕上がっている。

さて、ここで肝心の『IOWA』再発について、2011年現在、『IOWA』の再発は我々にとって何を意味するのか?改めて『IOWA』というアルバムを検証してみよう。

人々の絶叫、悲鳴から始まるオープニング「(515)」。自身を含む全ての人間に対して、“人間はクソだ!”と吐き捨てる=捻くれた愛を感じさせる「People = Shit」。ブラストビートと2バスで畳み掛ける「Disasterpiece」。サビがメロディアスだからこそ重厚なバックが映えており、曲の構成が自問自答している歌詞と見事に調和している「My Plague」。ライヴでは“If You're 555 then I'm 666”という掛け合いで狂乱させる、SLIPKNOTのスーパー・アンセム「The Heretic Anthem」。執拗なほど暗く重苦しい「Gently」。ミディアム・テンポでCoreyの“歌”とギターの“メロディ”がとても冴えている「Left Behind」。再びアドレナリンが全開となる「I Am Hated」。ウィスパー・ヴォイスで語りかけて来たかと思ったら突然絶叫へと変わり、最強のインパクトを放つ「Skin Ticket」。へヴィなサウンドにありったけの憎しみと絶望を詰め込み、アルバムの中で最もCoreyのパーソナルな感情が剥き出しとなっている「Metabolic」。そして、狂気を孕みながら地元アイオワへの愛憎を見事に表現した15分という大曲「Iowa」……。

こうして改めて『IOWA』を聴き返して思ったことは、「Slipknot」で一気にスーパースターへと上り詰めた結果、彼らを襲った様々な皮肉な体験から、初期衝動に更に拍車がかけられたことにより、これほど脅威的にへヴィな作品となったのではないかということ。また、音楽的な部分においては、緻密に計算された整合性に磨きをかけつつも、目の前に立ちはだかる全ての壁をぶち壊す為に必要なパワーを、メンバー9人が一音一音にありったけに注ぎ込んだのだ。そして何より、バンドが“闘争”している姿を、虚飾もなく、一片も隠すことなく、ありのままに表現したことによって、これ以上ないほどのパワーが生まれ、リスナーから絶大な共感と信頼を得た作品であったということだ。『IOWA』が未だ廃れることのない輝きを放ち、オールタイム・ベストに選ばれている理由はそこにあるのではないかと思う。

また、『IOWA』がリリースされてから約半月後には、アメリカ同時多発テロ事件が起こっている。世界があまりにも大きな悲しみを背負い、不安と絶望を抱えている中、『IOWA』がファンをどれほど勇気付けたことか。ファン以外の周囲からは不本意な風当たりも強かっただろうし、本人たちは非常に複雑な心境であっただろうが……。結果的に『IOWA』は、そんな宿命をも背負ったアルバムであったのだということも思い出してしまう。

去年ベーシストの#2 Paul Greyが逝去し、今後の動向が明らかになっていないながらも、SLIPKNOTの最高傑作である『IOWA』の10th ANNIVERSARY EDITIONがリリースされるということは、彼らの中でSLIPKNOTは現在進行形であることの証である。SLIPKNOTには、まだまだラウドロック・シーンの未来が託されているのだ。

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