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FEATURE

SiM

2016.05.09UPDATE

2016年05月号掲載

未来への布石。SiMワールドを全方位で魅せた、武道館公演をノーカットで映像化

Writer 吉羽 さおり

今年4月に4thアルバム『THE BEAUTiFUL PEOPLE』をリリースし、現在はアルバムを携えて全国を対バン・ツアーで回っているSiM。7月には、今年も2日間、野外での開催が決定した主催フェス"DEAD POP FESTiVAL 2016"が控え、新たなフェーズを突き進んでいる中、彼ら自身が"最初で最後の武道館"と銘打ち、2015年11月4日に行った["THE TOUR 2015FiNAL -ONE MAN SHOW at BUDOKAN-"]の映像作品がリリースされる。"WHO SAYS WE CAN'T"と題された今作には、武道館での、一夜限りのワンマン・ライヴの模様がノーカットで収録されている。あの日を体験した人にも、また未体験の人にも、存分に楽しんでもらえる内容だ。

最初で最後の武道館であり、SiMにしかできないライヴにしたいと、ステージセットから演出にいたるまでこだわり抜いたこの日。アリーナの大半はスタンディング・ゾーンで構成され、会場に入ってまず目に飛び込んでくるのは、死角なしの舞台だ。フロアのど真ん中に組んだ、モッシュピットで囲まれた全方位型のステージに、まずオーディエンスは興奮し、ライヴへの期待を一気に高めていった。開場し、モッシュピットやスタンド席までみるみる人で埋め尽くされていく瞬間から、SEがスタートして場内の温度が跳ね上がる瞬間までもが、今作には余すことなく収められている。カメラの台数も多く、ステージ真上から押さえた俯瞰の映像や会場の全景を押さえた映像もあれば、ステージから客席を押さえた映像、モッシュピット内からの(オーディエンスのジャンプやモッシュに合わせて揺れているような)躍動的な映像、また4人それぞれの表情をクローズ・アップした映像もある。多角的な視点で浮かび上がらせた映像は、スリリングで、臨場感たっぷりだ。

こだわり抜いた映像や照明はもちろん、炎などの特効や、ドラム・ソロでGODRi(Dr)が宙づりになるというド派手な演出があったり、アコースティック・コーナーでは、この武道館という会場を"ロックの殿堂"にしたTHE BEATLESへのリスペクトを込めて、「Come Together」のカバーを披露したり、スペシャルな演出や構成もこの日ならではだった。多くのバンドが武道館公演を行うようになった近年。彼らがこの武道館でのライヴを行うにあたっては、"SiMにしかできないことをやる"というのが第一にあった。それができるのが"今"だという、バンドとしての自負も意気込みもあった。"観ていて面白い"、"すごい"という以上に、この大きな舞台装置と徹底的に作り込んだ空間を使って、バンドの思いをどれだけ純度の高いまま響かせることができるかが4人の勝負だったと思う。最初で最後の記念にしてはいけないという、心地よい緊張感を背中に背負っている4人の姿は、この映像にもしっかりと収められている。今もなお、全国のライヴハウスを主戦場に多くのライヴ・バンドたちとしのぎを削り、ラウド/パンク勢だけでなく異種格闘技的にジャンルをクロスオーバーし、ロック・シーンを活気づけるべく旗を振る覚悟を決めたSiMだからこそ、この武道館で作り出した光景を、ファンにも、同じ土俵で活動する盟友たちにも見せたかったのだと思う。今回の映像を振り返って、改めて思ったのはそんなことだった。