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LIVE REPORT

Crossfaith

2017.10.25 @渋谷CYCLONE

Writer 村岡 俊介(DJ ムラオカ)

Crossfaithが、10月から開始した"10th ANNIVERSARY TOUR ONE MAN SHOWS - FAITH LASTS FOREVER -"の追加公演として10月25日――彼らにとってゆかりの地であるshibuya CYCLONEの記念すべき20th ANNIVERSARY初日に、旧友SiMを迎えてのツーマンが実現した。
幕張メッセを経験したCrossfaithに、武道館公演をやり遂げたSiMと、この組み合わせでのツーマンがキャパ300人のライヴハウスで観れるということで、チケット入手困難極めるプレミアム公演となった。

身動きが取れないほどに超満員のフロアのボルテージが高まるなか、SEと共にSiMのメンバーが登場。「GET iT OUT」での共演や、お互いのツアーにゲスト出演し合ったりと、SiMとCrossfaithの親和性が高いのはファンにとっても周知の事実。会場全体が大歓声でもってメンバーを迎える。「KiLLiNG ME」、「Blah Blah Blah」などの代表曲を織り交ぜながらも「TxHxC」、「paint sky blue」など初期の楽曲中心で攻めてきたのが印象的。2012年のライヴハウス15周年企画のトリを飾ったり、ヴォーカル、MAHに至っては10代のころから出演したりとCYCLONEは思い入れ深い場所である。両者と縁深いSiMがこの記念すべき公演のゲスト・アクトとして最も適任だったのは間違いない。

メンバーのセレクトかライヴハウスの計らいかは定かではないが、転換中の会場にはSILVERSTEINやSAOSINの初期の名曲が流れている。個人的にもテンションが上昇していくなか、会場が暗転し、映画"2001年宇宙の旅"のテーマをアレンジしたSEからヴォーカル、Kenta Koieの"レッツゴー!"のシャウトを皮切りに「Monolith」が鳴らされる。Koieがサークル・ピットを作るよう煽るが、統率だったサークルを作る余裕もないほどにフロアはすし詰めでカオスな状態だ。それでも戦闘力の高い猛者たちがモッシュ・ピットをこじ開けウインドミルを試みる。彼らのスケールの大きなサウンドはメッセやフェスなどの大規模な会場との相性もすこぶる良いが、根本はエクストリームなメタルコア・バンド。狭い会場だとより獰猛さや極悪さが前面に現れるのだが、それがまたたまらない。「Countdown To Hell」では身動きが取れないフロアを強引に左右に分けウォール・オブ・デスを炸裂、そのまま間髪入れず最新シングル「Freedom(ft. Rou Reynolds from ENTER SHIKARI)」をプレイ。この極めて完成度の高い最新型のCrossfaithサウンドが、Rou(Vo)のラップ・パート含めライヴでどう表現されるのか楽しみにしていたが、なんとKoie自身がRouに代わってラップも披露。安定感のあるクリーン・ヴォーカル含め、今後ツアーを重ねていくことでより強靭なキメ曲となっていくだろう。

SiMのライヴですでに機材がダウンしないか心配するほど会場の温度が上がっていたが、Crossfaithが始まってからもう一段階上がったようで、筆者や横のPAスタッフ全員額や顎から汗が滴れ落ちている。そんな厳しい環境下ではあったが、"Crossfaithのライヴっていっつもこんなんだったよな"と昔を思い出して逆に楽しくなってくる。
"CYCLONEで俺たちが初めてライヴしたのが2009年、1stアルバムを出したてのころでした。そのときここで俺たちが初めて撮ったPVがあります"とKoieが語り、1stアルバム『The Artificial theory for the Dramatic Beauty』収録の「Blue」をプレイ。Koieが"2009年のがヤバかったぞ!"と煽ると負けじと観客もダイバー続出で応える。思い起こせば、1stアルバムがリリースされるより前に、大阪の激ロックDJパーティーで"聴いてください"とメンバーから手渡されたCD-Rに入っていたのがこの「Blue」だった。CDプレーヤーで何の気なしに聴いた瞬間の衝撃は今でも鮮明に覚えている。そんな思い出深い「Blue」を当時と変わらぬ小箱で観て、懐かしい気持ちになると同時に今でも十分に通じる圧倒的なクオリティに改めて脱帽した。彼らはこの「Blue」を世に出した瞬間から、日本のラウド・ミュージック・シーンを背負う存在となる宿命だったといっても過言ではないだろう。

MCを挟んだあと、CYCLONEのT-シャツにキャップを被ったSiMのMAHをステージに呼び込み「Wildfire (feat. Benji Webbe from Skindred)」を披露。もちろんMAHはBenji(Vo)のパート担当だ。MAHに多大な影響を与えたBenjiの代役として彼ほどに相応しいヴォーカリストはいないだろう。KoieとMAHのツイン・ヴォーカルを300キャパの箱で堪能できるとはまさに貴重な体験である。そのまま間髪入れずにアッパーな「Jägerbomb」、極悪な「Diavolos」、ミドル・テンポの「Revolution」が休む間もなく投入され、空気の薄いなか無慈悲にも観客の体力を奪っていく。
荘厳なSEのなか、Koieが10周年のこのタイミングで自分たちが育ってきたライヴハウスでツーマン・ライヴをする理由を真摯に語り、そして最後に観客、CYCLONEに感謝の念を込め、エモーショナルなシンセから始まる1stアルバム収録の「Voices」が本編ラストに演奏される。この曲をライヴで聴くのはいったい何年ぶりだろうか。Terufumi Tamano(Vision-Prog)がスピーカーによじ登りダイブする姿も久しぶりに拝むことができた。

アンコールは2009年ごろのライヴの再現か、1stアルバム1曲目のSE「If you want to wake up?」でステージに登場し、当時のライヴの流れそのままに「Mirror」、そして最後は2ndアルバム『The Dream, The Space』収録の叙情メタルコアの傑作「Stars Faded in Slowmotion」で締めくくられた。「Blue」や「Voices」も同様だが、当時の楽曲を今のアップデートされた彼らの技術で演奏することで新たな魅力を発見できると同時に、結成からわずか数年のころの彼らが、今聴いてもまったく遜色ない楽曲をすでに生み出していた偉大さを再認識させられた。

今ツアーは12月末まで続くが、東京には"ACROSS THE FUTURE 2017 ~10th ANNIVERSARY SPECIAL EDITION~"として新木場STUDIO COASTに再び戻ってくる。海外、国内の猛者が一堂に会するこのイベントだが、今回海外からはI SEE STARS、MISS MAY I、国内からはcoldrain、a crowd of rebellion、Survive Said The Prophetと最強のラインナップがすでに決定している。Crossfaith10周年の宴はまだまだ終わらない。

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