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激ロック | ラウドロック ポータルサイト

LIVE REPORT

UNDER THE INFLUENCE

2011.04.29 @恵比寿LIQUIDROOM

Writer 石井 理紗子

THE GHOST SPARDAC

THE GHOST SPARDACはハーフ・アメリカンのヴォーカル&ベースのBoxyとギタリストのChuck、ドラマーのFiverによる3ピース・バンド。先日『TGS ep』を日本でリリースしたばかりだ。この作品には、ロック・バンドしては 異例となるAfrika Bambaataaのリミックスが収録されており、「THE GHOST SPARDACはアジアのロックスター」と認め絶賛している。今回が初来日となる彼らのステージを見た人たちは、きっと日本と諸外国、はたまた中国やアジアの国々とのボーダレス時代を感じたことだろう。この日のイベントでもそんな彼らの本質が存分に発揮されるものであった。 今回のイベントではオープニング・アクトとして出演した彼らは、ステージに登場するや否や東北地方太平洋沖地震で被災された方々に数秒の黙祷を捧げ、1曲目の「Episode One」からステージをスタートさせる。3ピースとは思えないような厚く激しい音を響かせ、ヴォーカル&ベースのBoxyによるメロディクなヴォーカル・ライン、ギターのChuckがかき鳴らすテクニカルなギターの調べ、最初は様子をみていた日本のオーディエンスも徐々に温まり、ステージから届く彼ら3人の熱気と音に体を揺らしていく。ステージは進み4曲目の「Super Me」ではオーディエンスを煽り会場全体が国を超えて一体になったと感じた。オープニング・アクトでの出演だった為、短い演奏時間ではあったが中国は北京からやってきた3人の奏でるエモーショナルなサウンドに日本のオーディエンスは驚き、THE GHOST SPARDACというバンド名と共に偏見抜きに現行の中国ロックを脳裏に焼き付けていたに違いない。

CALX

『Death Note』のサウンド・トラック制作のために、2006年にタニウチヒデキを中心にサカタマコト、シミズトシキ、ユウが加わった4人組のCALX。2007年より新宿を中心にライヴを行いながら、タニウチヒデキは『Death Note』以外にも『御伽草子』、『RD 潜脳調査室』などの人気アニメのサウンド・トラック制作を数多く手掛け、CALX自体も『逆境無頼カイジ』のアニメに楽曲提供し、精力的に活動しているが、今回彼らのショーを初めて見たという人が殆どだったのではないだろうか。

彼らがライヴ活動を重ねてきたライヴハウスの3倍のキャパシティのLIQUIDROOM。いつもよりずっと大きなステージだが"CALXです。殆どの方は初めまして。僕たちはインスト・バンドです"と、なんとも普通の自己紹介から始まった。だが、始まった音楽はそんな自己紹介とは裏腹に、全く普通ではなかった。まず、バス・ドラムとベースの圧倒的な音圧が身体を震わせる。そしてどこか昭和の香りの残る親しみやすいシンセとギターに合わせて左右に身体を揺らさずにはいられない。また特筆すべきは予測不可能な曲展開である。曲がどこで始まり、どこで終わったのかが分からない。まるで螺旋階段を上って行くような途切れない音の繋がりが30分間CALXという空間を創り出していた、そう思わずにはいられない印象的な演奏だった。

Crossfaith


前作『The Artificial Theory For The Dramatic Beauty』がリリースされてから2年、待望の2ndアルバム『The Dream,The Space』を4月27日にリリースしたばかりのCROSSFAITH。1stアルバムが異例のロングヒットを記録し、新人ながらその年のLOUDPARK09出演、更に翌年には欧米デビューを果たし、常に注目を集め続けてきた。『The Dream,The Space』では全米デビューも決まっており、フロアは2ndアルバム発売後初の彼らのショーを心待ちにしたファンで溢れていた。

CROSSFAITHがステージに姿を現した瞬間、それまでどこかまったりしていた会場の空気が一気に熱くなる。40分弱の短いステージであったが、準備運動をしている暇はないとばかりに1曲目の「If You Want To Wake Up?」からフロアは激しくモッシュやダイヴをするファンで溢れかえる。音響のいいLIQUIDROOMでも音が割れるかと思うほどの轟音と共にヴォーカルのKoieが叫び、Program担当のTeruがヘドバンで煽る。1stアルバム、2ndアルバムの曲を交互に織り交ぜながら、ショーの後半にはTHE PRODIGYのカヴァーである「Omen」を披露。CROSSFAITHのライヴはKoieの言うように"ライヴを観に来た者だけが本物を知ることができる"というCDというパッケージだけには納まりきれない圧倒的なパワーを見せ付けるものであった。

FACT


実は今回のUnder the Influenceは3月末に予定されていた公演だったが、先日東日本を襲った大震災のために延期となり、1ヶ月遅れでようやく開催に至ったものである。ショウが始まる直前、"やっと観られる"というつぶやきをフロアのあちこちで耳にした。どれだけファンがこのFACTのショウを待ちわびていたのかがよくわかるとても印象深い光景であった。

そんな期待に満ちた空気の中、歓声に迎えられながら姿を現したFACTは「Paradox」、「Los angels」、「A fact of life」とお決まりの冒頭3曲を立て続けに放つ。フロアが音の濁流にあっという間に呑み込まれていく。ヴォーカルのピッチが多少不安定だったのが残念だが、オーディエンスも待っていましたとばかりに飛び跳ね、うねる。ミニ・アルバムをリリースした直後なのでセットリストが変わるのではという憶測もあったのだが、今までと変わらない彼らのスタイルがFACTの音に枯渇したファンの欲求にぴったりと合っていたのではないかと思う。

最初のMCの開口一番"3月25日から1ヶ月も待たせてごめんなさい"という言葉だった。彼らの地元茨城県は被災し、"家の50メートル先まで津波がきて高台に逃げた"という。"つらいことだけど絶対に忘れちゃいけない"と自分に言い聞かせるようにつぶやいたHiroだが、そんなしんみりとした空気を吹き飛ばすかのようにショウは続く。始まったのは新しいミニ・アルバムから「The shadow of envy」だ。FACTらしい前のめりなドラムと攻撃的なギター・リフの持ち味はそのまま健在。メロディが耳に残るキャッチーなナンバーに合わせてファンが一斉に"オー!オー!オー!"と叫ぶ。そして、「Dec2」では変幻自在でテクニカルなドラムを魅せてくれた。

"オエオエって言ったらオエオエって言えよ!"とHiroが叫んで始まったのは「Part of it all」。何が起こるのかと待っていたら、途中GREEN DAYの「Know Your Enemy」とマッシュアップされていた。こんな遊び心に溢れた演出も心憎い。更に「This is the end」、「Error」、「Fog」と存分にオーディエンスを遊ばせた後、大合唱して始まった「Purple eyes」。FACTというバンドは本当に観ている人を全員巻き込んで楽しませてくれるなぁと嬉しくなった。そして、ソリッドなギター・サウンドが響く「Attack me if you dare」。最後は「Slip of the lip」のコーラスを響かせて一度は去ったが、勿論アンコール無しで終わるはずがない。「Purple eyes」を歌いながら待つファンに呼ばれ、2曲をプレゼントして幕を閉じた。

"今、ライヴができている幸せ"を噛みしめながら演奏するメンバーと"今、ライヴが観ることができる幸せ"を噛みしめるファン。そんな二者の思いがぶつかり合った熱気がショウの終わった会場を満たしていた。人知を超えた困難を乗り越え、ますますタフになったFACTのこれからの活躍に期待したい。

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