LIVE REPORT
UNDER THE INFLUENCE
2011.04.29 @恵比寿LIQUIDROOM
Writer 石井 理紗子
THE GHOST SPARDAC

CALX

彼らがライヴ活動を重ねてきたライヴハウスの3倍のキャパシティのLIQUIDROOM。いつもよりずっと大きなステージだが"CALXです。殆どの方は初めまして。僕たちはインスト・バンドです"と、なんとも普通の自己紹介から始まった。だが、始まった音楽はそんな自己紹介とは裏腹に、全く普通ではなかった。まず、バス・ドラムとベースの圧倒的な音圧が身体を震わせる。そしてどこか昭和の香りの残る親しみやすいシンセとギターに合わせて左右に身体を揺らさずにはいられない。また特筆すべきは予測不可能な曲展開である。曲がどこで始まり、どこで終わったのかが分からない。まるで螺旋階段を上って行くような途切れない音の繋がりが30分間CALXという空間を創り出していた、そう思わずにはいられない印象的な演奏だった。
Crossfaith

CROSSFAITHがステージに姿を現した瞬間、それまでどこかまったりしていた会場の空気が一気に熱くなる。40分弱の短いステージであったが、準備運動をしている暇はないとばかりに1曲目の「If You Want To Wake Up?」からフロアは激しくモッシュやダイヴをするファンで溢れかえる。音響のいいLIQUIDROOMでも音が割れるかと思うほどの轟音と共にヴォーカルのKoieが叫び、Program担当のTeruがヘドバンで煽る。1stアルバム、2ndアルバムの曲を交互に織り交ぜながら、ショーの後半にはTHE PRODIGYのカヴァーである「Omen」を披露。CROSSFAITHのライヴはKoieの言うように"ライヴを観に来た者だけが本物を知ることができる"というCDというパッケージだけには納まりきれない圧倒的なパワーを見せ付けるものであった。
FACT

そんな期待に満ちた空気の中、歓声に迎えられながら姿を現したFACTは「Paradox」、「Los angels」、「A fact of life」とお決まりの冒頭3曲を立て続けに放つ。フロアが音の濁流にあっという間に呑み込まれていく。ヴォーカルのピッチが多少不安定だったのが残念だが、オーディエンスも待っていましたとばかりに飛び跳ね、うねる。ミニ・アルバムをリリースした直後なのでセットリストが変わるのではという憶測もあったのだが、今までと変わらない彼らのスタイルがFACTの音に枯渇したファンの欲求にぴったりと合っていたのではないかと思う。
最初のMCの開口一番"3月25日から1ヶ月も待たせてごめんなさい"という言葉だった。彼らの地元茨城県は被災し、"家の50メートル先まで津波がきて高台に逃げた"という。"つらいことだけど絶対に忘れちゃいけない"と自分に言い聞かせるようにつぶやいたHiroだが、そんなしんみりとした空気を吹き飛ばすかのようにショウは続く。始まったのは新しいミニ・アルバムから「The shadow of envy」だ。FACTらしい前のめりなドラムと攻撃的なギター・リフの持ち味はそのまま健在。メロディが耳に残るキャッチーなナンバーに合わせてファンが一斉に"オー!オー!オー!"と叫ぶ。そして、「Dec2」では変幻自在でテクニカルなドラムを魅せてくれた。
"オエオエって言ったらオエオエって言えよ!"とHiroが叫んで始まったのは「Part of it all」。何が起こるのかと待っていたら、途中GREEN DAYの「Know Your Enemy」とマッシュアップされていた。こんな遊び心に溢れた演出も心憎い。更に「This is the end」、「Error」、「Fog」と存分にオーディエンスを遊ばせた後、大合唱して始まった「Purple eyes」。FACTというバンドは本当に観ている人を全員巻き込んで楽しませてくれるなぁと嬉しくなった。そして、ソリッドなギター・サウンドが響く「Attack me if you dare」。最後は「Slip of the lip」のコーラスを響かせて一度は去ったが、勿論アンコール無しで終わるはずがない。「Purple eyes」を歌いながら待つファンに呼ばれ、2曲をプレゼントして幕を閉じた。
"今、ライヴができている幸せ"を噛みしめながら演奏するメンバーと"今、ライヴが観ることができる幸せ"を噛みしめるファン。そんな二者の思いがぶつかり合った熱気がショウの終わった会場を満たしていた。人知を超えた困難を乗り越え、ますますタフになったFACTのこれからの活躍に期待したい。
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