DISC REVIEW
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前作からわずか1年というスパンで届けられたFACTのニュー・アルバム。約9年ぶりにセルフ・プロデュースのもと制作された今作は、これまで以上に攻撃的で、実験的な一面もある作品となった。ジャンルにとらわれないアプローチが近年の彼らの魅力のひとつでもあるが、今作はそれがさらに自由に突き抜けた感じだ。楽曲ごとに、思わず拳を握りしめたくなるようなハードコア・パンク、確かなテクニックに裏打ちされたオルタナティヴ・ロックといった様々な顔を見せ、極悪でスラッシーなリフが炸裂、かと思えばFACTらしいオリエンタルでダンサブルなメロディや、ポップなシンガロング・パートもしっかりとコアの部分で楽曲を支えている。また、曲調だけでなくテンポや音圧にも緩急があり、聴いていると次の展開にワクワクし息つく暇もない。まるで未知の世界を歩いているような、不穏な空気を感じるのに、どこか懐かしい気もする、不思議と心を揺さぶられる作品だ。 山本 真由