COLUMN
NoGoD 団長のあなたの知らない激ロックな名盤紹介 第40回
「このアーティストにしか出せない音がある」なんて言葉を昔はよく耳にしたように思う。
音楽というツールを使って何を表現したいのか。
ある程度カテゴライズされたものをなぞるのは、そのジャンルのファンにアプローチしやすいし一定の支持を得るには近道であることは間違いない。
だがしかし、"今は"楽しめるかもしれないその「音」は、果たして後世にまで感動と共に語り継がれるのだろうか。
今回は昨今のフェスのラインナップを見て「どこも同じで代り映えしないな」と刺激に飢えている方に、ほんの少しの毒を処方したいと思う。
Genealogie der Mora/deadman
deadmanは2000年に名古屋で結成されたオルタナティヴ・ロックバンドである。
彼らはV系(ヴィジュアル系)というフィールドの出自ではあるが、サウンドは皆が思うそれでは決してない。
布袋寅泰や浅井健一の様なキレの良いクランチサウンドを、哀愁や物悲しさを持つ独特のコードセンスでロックンロールと融合させるギタリストのaie。
狂気的かつ文学的。一瞬で空間を支配するパフォーマンスとファッションセンスで絶対的な存在感を放つヴォーカリストの眞呼。
強い個性同士はぶつかり合ってしまうこともしばしばだが、彼らの場合は違う。
異なる色が重なり合い混ざり合い、見たことのない美しいマーブル模様が広がっていくかの如し。
それは決して他には真似できない、deadmanというサウンド、いやジャンルを確立しているということである。
そんな彼らも2006年には一度活動休止をし、2019年より活動を再開している。
正直な所、長いブランクを経て再結成や再始動をしたバンドが、全盛期を上回る作品を作り上げるのは相当難しいことだと思う。
しかし今回彼らがリリースした、実に19年ぶりのオリジナルアルバム『Genealogie der Moral』は違った。
数々のバンドやプロジェクトでaieと共に活動しているベーシストのkazuと、lynch.のドラマーである晁直をサポートに迎え、過去を大きく超えてきたのだ。
サウンドもメッセージもヴィジュアルも、全ての熱量が活動休止前のそれらの比ではない。
結成24年にして、まるで新人バンドの様な強い攻めの姿勢を感じる。
20年前、「化粧をするならV系の箱に行ってくれ」とジャパメタシーンを追い出され、V系の箱からは「あんたらV系を何だと思ってるんだ」と蔑まれた私は、当時V系シーンで頭角を現していたdeadman、MUCC、メリー、cali≠gari等が、ジャンルやシーンに縛られない「自分たちにしか出せない音」を、衣装や化粧といった見た目の演出も含め追及していた姿に感銘を受けた。
「このアーティストにしか出せない音がある」
この言葉はまさに今ここで使うためにある。
我々も時代や数字に迎合することなく、自分たちの音を貫いていきたいものである。
- 1