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FEATURE

coldrain

2018.09.25UPDATE

2018年09月号掲載

coldrainと日本武道館の凄まじいケミストリー。バンド史上最強にしてさらなる未来を予感させるパフォーマンスを観よ

Writer TAISHI IWAMI

"「そんなに叫んでたら売れないよ」、「英語の歌詞だけじゃ売れないよ」。そんなことを言う奴らを見返したくて、何年も何年もやってきました。けど、今日は違います。何年も何年もcoldrainというバンドを信じて、coldrainの音楽を信じてくれた奴らのためにライヴさせてもらいます"。

序盤にMasato(Vo)が語った言葉どおり、これは音楽だけで食べていくことを夢見るバンドマンがひとつの夢を叶えた、単なるサクセス・ストーリーの1ページではない。ヘヴィ・メタルやハード・ロック、ハードコアにパンク、オルタナティヴ・ロックやニューメタルといった、自分たちがバンドを結成するきっかけになったカルチャーへの恩返しであり、それらを信じ続けることで約10年もの間サヴァイヴできたからこそ体現できる、自分たちを信じてついてきてくれたファンへのリスペクトでもある。そして、そこに充満するエネルギーは、この場を体感した観客や、駆けつけたい想いを実現させることができなかったファンだけでなく、coldrainやラウドロックという音楽に馴染みがなくとも、自身と周囲との趣味や考え方の違いに居心地の悪さを感じているすべての人々に捧げたい、とまで言いたくなるほど、音楽性云々を超えたレベルにまで到達している。

大雑把に言えば、1950年代にElvis PresleyやChuck Berry、Jerry Lee Lewisらが世に出てきたことでロックンロールはショー・ビジネスとして花開いた。そして1960年代~1970年代に入り、ヘヴィでエモーショナルなサウンドに特化した、LED ZEPPELINやBLACK SABBATH、AC/DCのようなバンドが現れたことが、ヘヴィ・メタルの大きな源流のひとつとなり、それはやがてパンクやハードコアなどと合流。さらにはヒップホップやエレクトロといった、バンド音楽以外の分野とも混ざり合っていく。そういった変化や派生や進化を繰り返す過程で、いつしか日本国内では"ラウドロック"という言葉が生まれた。ラウドロックは、ある種のエクストリームな音楽としてその魅力を発揮し続けているが、その中にはジャンルの枠を超え市民権を獲得し、より多くの人々に希望を与えたバンドも多く存在する。最も近いルーツとなるとMETALLICAやPANTERA、その象徴となるとLIMP BIZKITやLINKIN PARKのような存在になりたい。であるならば、先人たちの魂を受け継ぎつつ、圧倒的にオリジナル且つ世に伝わる何かを生み出さなければならない。それがcoldrainの目指したことだったのだろう。


自分たちを信じて集まってくれた仲間の気持ちに応えるために。まさにライヴ・バンドたる進化の極みがここに


要するに、coldrainの"売れたい"という想いは、自分たちの"好き"という感情に素直であることと直結している。だからこそ、"ラウドロック"に追い風が吹こうが、向かい風であろうが、無風であろうが、貫くことが絶対であり、ポップなフックは持とうとも、現状の追い風に乗るという意味でポップに接近することはまっぴら御免というわけだ。そうなると、"それじゃあ売れない"という人たちの意見に悔しさを覚えて当然。それを対ファンというベクトルで考えると、自分たちを信じてついてきてくれている仲間を裏切りたくはないし、狭い世界で囲うようなこともしたくない。共に刺激し合い成長していきたいということだ。

そこで特筆すべきは、愚直にロックの進化を鳴らし続けてきたcoldrainと、日々の厳しい修業を乗り越えてきた武道家のみが戦うことを許される日本武道館との、相性の良さ。世界照準のロックに内燃する、日本人の侍たるアイデンティティが出音一発で大爆発し、細胞という細胞が開いていくのがわかるような感覚になる。その場所、そのとき、その瞬間という、ライヴの真骨頂が極まったと言ってもいいだろう。バンドのエモーションを背負ったフロントマン/ヴォーカリストたるMasatoの振る舞い、衝動的でもありcoldrainの音楽性の高さを担うY.K.Cのテクニカルなギター・プレイ、パフォーマンスのギアとなるSugiが弾く、パワフルで時にしなやかなギター・リフやコード感、ライヴを屋台骨で支えるRxYxOのベーシストたるプレイとメロディに華を添える声、バンドのエンジンそのものと言っていいKatsumaのヘヴィなドラミングといった、彼らの特徴をカメラが間近でばっちり捉えた迫力ある映像。その緊張感のなかでの5人の表情もたまらない。ストイックに突っ込んだパフォーマンスを繰り広げつつ、まるで子供が公園で遊んでいるかのように、よく笑う。バンドを結成してから約10年の間に、おそらく様々な感情が何度も何度もループして手に入れた笑顔なのではないかと、そこにあった紆余曲折のドラマを想像して、とてもポジティヴな気持ちになれた。

また、映像や照明/レーザーといったテクノロジーと、バンド・サウンドとのハイブリッドも大きな見どころとなっている。coldrainのアーカイヴに、例えばレーザーを多用するようなダンス・ミュージックやクラブ・カルチャーがあっても、なんら不思議なことではないが、そのサウンドはエレクトロニックではなく、あくまで5人の人力による原始的なもの。ある意味相反するものの、絶妙な親和性の高さ。それが日本武道館という古風な場所で繰り広げられていることがさらに興奮を煽る。これはまさに新感覚。進化を止めないことを、この場でも証明した彼らが、この先どんな景色を見せてくれるのか。未来に大きな期待を残す仕掛けでもあった。

そして、このライヴのリアルを示す最後の決定打は、観客の動きや表情だ。素晴らしいライヴは観客ひとりひとりの作る景色があってこそ。音楽で世界が変えられるかどうかなんてわからないが、少なくともここにいる人たちはcoldrainの音楽を信じることで元気が出た、日々が楽しくなった、救われたといった何かしら熱いプラスの感情を持っているだろうし、coldrainもファンを信じることで同様の想いを抱いているに違いない。自分の意志で物事を取捨選択し信じることの大切さを、訴え続けてきたことで集まった仲間たち。その気持ちにとことん付き合っていこうという覚悟。そこにある強い結束もしっかりとフォーカスされていることが、先述した"ファンならずとも"お薦めしたい本作の、最も大きな価値だ。



▼リリース情報
coldrain
LIVE Blu-ray / DVD
『20180206 LIVE AT BUDOKAN』
coldrain_jk.jpg
[WARNER MUSIC JAPAN]
2018.09.26 ON SALE!!

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CONTENTS
・メンバーによるスペシャル副音声
・English Subtitles for Japanese words
(日本語MC英語字幕切り替えあり)

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