FEATURE
ROTTENGRAFFTY
2016.10.05UPDATE
2016年10月号掲載
ROTTENGRAFFTYが今年8月に行ったツアー"So...Start Listen To New Song Tour 2016"や夏フェスやイベントなどで披露してきた新曲「So...Start」。各会場で初めて同楽曲を耳にしたであろうオーディエンスは、その攻撃的なサウンドと爆発力のあるサビに魅了され、大いに盛り上がった。
しかし、リリース前の新曲をライヴで披露したことについて、不思議に思ったファンも少なからずいただろう。ここ最近のROTTENGRAFFTYは、先に音源を発表し、その後ライヴで新曲を披露するパターンが多かった。しかしなぜ「So...Start」は、音源発表前にフェスで披露され、リリース前ツアーまで行ったのだろうか?
CD収録前の新曲をライヴで披露するのは、ライヴ・バンドとしてはごく普通のことである。そもそも結成して間もないバンドたちのほとんどは、まずオリジナル曲を作り、ライヴを第一の目標とする。その後ライヴの経験を積み、動員が増えてきて初めて彼らはCDリリースを新たな目標に据える。その結果、1stアルバムはバンド結成以来ライヴで手応えを掴んできた新曲たちの集合体となる。
今回、音源発表前に新曲をライヴで披露した理由について、KAZUOMI(Gt/Prog)は"昔、レコード会社とかに所属する前は、曲を作ったらまず披露するのはライヴハウスだった。ライヴハウスで初めてお客さんに聴いてもらって体感してもらって、それを何回か繰り返して曲を深く理解してもらって。それはお客さんだけじゃなくて演奏する僕たちメンバーも同じなんですよね。それをもう一度やりたかったんです"と語る。おそらく彼らは、このタイミングで原点回帰的な心境になっていたのだろう。深読みかもしれないが、バンドを結成した当初の、真っ白な心境に立ち戻っているのかもしれない。曲のタイトルに込められた意味そのままに、新たなスタートを切ろうとしているのかもしれない。
ここから始まる彼らの物語は、どのような景色を見せてくれるのだろうか
「So...Start」の歌詞についてKAZUOMIは"いろんなことがあるけど心の中で「じゃあ始めようか」というニュアンスにしたかった。今まで生きてきたけど、きっとこの先もたぶん考えもつかないような壁がいっぱいあるだろうし、それをすべて呑み込んで「始めようか」という......そういうことを考えて歌詞を書いた"と説明する。"叶わない事ばかり 続くこの道/あの頃の様に 今も 踏み出せたなら"というフレーズや、"散々雨に打たれた/僕はまるでピエロさ"というフレーズなどは"本当に気持ちそのままですね"と言う。同曲の歌詞には、そのような苦悩や悲観など、彼らの苦しい心情が生々しく綴られているのだが、その中で"人間楽園"という言葉が出てきているのが実に興味深い。"叶わない事ばかり続く道"をなぜ彼らは"人間楽園"と歌っているのだろうか?
"覚悟を持って完成させることができたんだなって思います。叶わないこととか失敗とかはたくさんあるし、悲観してるし、でもそんな中でも優しくしてくれる......僕たちの場合はライヴに来てくれるお客さんとか周りの仲間とか......そういう優しさも逆に苦しくなったりとか。本当にそのままの心情を歌ってますけど、そんなことを「人間楽園」と言えているのは、やっぱり覚悟だと思います。どこまで行けるか、その覚悟をどこまで持てるか、もっともっと覚悟を持ってやっていきたい"とKAZUOMIが言うように、「So...Start」はROTTENGRAFFTYの覚悟であり、これからもバンドを続けていくうえでの決意と宣言であり、結成17年にして迎えた何度目かの新たなスタートなのだ。
そしてカップリングには、まったくタイプの違う2曲が選ばれた。ROTTENGRAFFTYらしいキャッチーさと抜けるようなメロディが象徴的な「アウトサイダー」、今までライヴで何度もカバーしてきた「今夜はブギー・バック nice vocal」。
KAZUOMIの言葉を借りるなら、"「アウトサイダー」は昔からROTTENGRAFFTYがやってきたような曲。激しい部分と、そこから花開くような世界......その繰り返し。単純な繰り返しをスパッとやった「今夜はブギー・バック nice vocal」はNOBUYA(Vo)もN∀OKI(Vo)もいい一面が出せた。あれくらいのテンション感で歌える声色っていうのも、ウチのヴォーカルが持っているひとつの色。そういう歌を歌えるんだっていう。だからこれを録ったときは嬉しかった"とのこと。
バンドの心情と覚悟を綴った「So...Start」、ロットン節全開の「アウトサイダー」、彼らの新たな魅力を感じることができる「今夜はブギー・バック nice vocal」。3曲というコンパクトなボリュームながら、繰り返し何度聴いても飽きない、2016年現在のROTTENGRAFFTYが詰まった内容の濃いシングルが完成した。
そして初回限定盤に付属するライヴCD『THE★LIVEEEEE!!!!!』も見逃せない。「世界の終わり」、「P.I.L」、「響く都」、「Error...」、「金色グラフティー」、「マンダーラ」、「Rainy」という定番曲のライヴ音源は、当日会場でライヴを体感したファンはもちろんのこと、その日のライヴを観ることができなかった方にとっても、ROTTENGRAFFTYのライヴの魅力を思う存分味わうことができる作品となっている。聴きながらその日の感動に浸るのもよし、『So...Start』リリース・ツアーを想像するのもよし、12月24日と12月25日に開催される"ポルノ超特急2016"に思いを馳せるのもよし。まだROTTENGRAFFTYのライヴを観たことがない人には、彼らがどのようなテンションでライヴをしているのか、オーディエンスの盛り上がりがどのようなものなのか、想像を膨らませてもらえるだろう。
ひとつひとつ目の前にあることに全力で取り組み、命を削って作品を作り、全身全霊でライヴをしてきたROTTENGRAFFTY。彼らが10月5日にリリースしたシングル『So...Start』は、そんなバンドの"生き様"が刻み込まれたシングルだ。結成17年、不器用なまでに真摯に活動を続けるライヴ・バンドが、2016年に生きた証。ここから始まる彼らの物語は、我々にどのような景色を見せてくれるのだろうか。
▼リリース情報
ROTTENGRAFFTY
『So...Start』
NOW ON SALE!!
[Getting Better]
【初回限定盤】CD+LIVE CD
VIZL-1054 ¥1,800(税別)
amazon | TOWER | HMV
【通常版】CD
VICL-37217 ¥1,200(税別)
amazon | TOWER | HMV
[CD]
1. So...Start
2. アウトサイダー
3. 今夜はブギー・バック nice vocal
[LIVE CD]
『THE★LIVEEEEE!!!!!』
1. 世界の終わり (2015/12/23 ポルノ超特急2015)
2. P.I.L (2015/10/6 Live Is Beautiful Tour2015-2016@京都MUSE)
3. 響く都 (2015/12/23 ポルノ超特急2015)
4. Error... (2014/11/15 15th Anniversary Tour "ROTTENGRAFFTY"@なんばHatch)
5. 金色グラフティー (2015/12/23 ポルノ超特急2015)
6. マンダーラ (2016/3/27 Live Is Beautiful Tour2015-2016 FINAL@京都KBSホール)
7. Rainy (2016/3/27 Live Is Beautiful Tour2015-2016 FINAL@京都KBSホール)
- 1