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LIVE REPORT

a crowd of rebellion

2021.02.17 @渋谷CLUB QUATTRO

Writer 山口 智男 Photo by Kato Shumpei

"コロナのせいにするな。どうにかしようぜ、自分らで!"
この日、宮田大作(Vo)はこれまでとは若干見え方が違うフロアに向かって、そう叫んだ。終盤、「MEI」を演奏している最中のことだった。それは自分らに向けた叱咤激励でもあったには違いないが、「MEI」まで10曲を演奏してきて、"どうにかできる!"と確信できたからこそ出てきた言葉だったと信じたい。それでこそ、"(ライヴ)をやるかやらないか悩みに悩んで、いろいろなことがあってやることにした"と宮田が告白したとおり、悩んだ甲斐があったというものだろう。
2月6日に開催した新潟公演を皮切りに名古屋、東京、大阪と回った4thアルバム『Zealot City』のリリース・ツアー。本来であれば、昨年3月に予定していたにもかかわらず、コロナ禍の影響で中止せざるをえなかった、メジャー5周年の記念ツアーのリベンジになるはずだったが、バンドは2度目の緊急事態宣言という危機に直面――いや、危機という意味では、14年間活動を共にしてきた高井佑典(Ba)が、このツアーを最後に音楽活動から引退することを決めたことのほうが、バンドにとっては大きかったんじゃないか。

前掲の宮田のMCの中の"いろいろなこと"が何を意味するのか、そこまではわからないが、ともあれ新潟出身の5人組、a crowd of rebellion(以下:acor)は目の前の危機を回避することを選ばずに、果敢に正面突破しようと決めたということだ。今回のツアーのセットリストに、19年発表のミニ・アルバム『:12_White』から「Utopia」を選んだのは、正面突破に挑むバンドの思いを伝えるのに相応しい曲だったから。「Utopia」を演奏する前に宮田は言った。"(今の状況を)ディストピアにするのか、ユートピアにするのかは自分次第。自分でユートピアにできるはずだ!"
この日、バンドの熱演と、そこに込めたメッセージがどれだけ観客の気持ちを鼓舞したことか。そして、日々の窮屈さからどれだけ解き放ってくれたことか。
言うまでもなく、宮田のスクリームおよびグロウルと小林亮輔(Vo/Gt)のクリーン・ヴォーカルが交錯する、いわゆるスクリーモのスタイルをベースに、デスコアからEDMまで様々なジャンルの要素が入り混じるユニークさが、acorの音楽の大きな魅力だが、それがライヴになってもノりにくい、ノれないとならず、むしろプログレ的とも言えるその複雑さがすべて、ヘドバンから2ステップ、ワイパーまで観客のフィジカルな反応に結びつくんだから面白い。そこにクセになるacorのライヴの醍醐味がある。
この日、バンドが披露したのは、『Zealot City』からの8曲を軸にした新旧の全14曲。中盤のブロックでは前述の「Utopia」に加え、「Calling」、「coelacanth」の3曲をじっくりと聴かせ、acorが持っている歌モノの魅力もアピールした。そしてラスト・スパートは、"俺はバンドをやめるけど、みんなで4人を見守っていきましょう"と語った高井の選曲による、「Satellitear」、「Black Philosophy Bomb」、「Ill」で一気に駆け抜ける! アルバムのツアーであることを無視した選曲を許したのは、メンバーからの高井へのはなむけだったのだろう。「Ill」の演奏が終わったとき、ステージに座り込んだ高井の姿が印象づけたのは完全燃焼だった。

鳴りやまない拍手に応え、"みんなの(心の中の)声はちゃんと届いています"(宮田)とステージに戻ってきたバンドは、"もうちょっと高井の全力を見てもらいたい"(宮田)と最後の最後に「M1917」を披露。
メランコリックな曲調とは裏腹に、宮田と小林がハイトーン・ヴォイスを繋げながら歌い上げた不屈の闘志ほど、大団円に相応しいものはなかっただろう。そして、大きな拍手の中、宮田は観客に誓ったのだった。"また(東京に)戻ってきます!"と。


[Setlist]
SE. Interlude-(NOT FOUND)
1. Meteor
2. 無罪者
3. Under The Split Tree
4. SLANDER.
5. °OD。
6. Utopia
7. Calling
8. coelacanth
9. Keep The Day
10. MEI
11. Satellitear
12. Black Philosophy Bomb
13. Ill
En. M1917

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